MIHO MUSEUM - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

MIHO MUSEUM

           
0099:MIHOMUSEUM メイン

0099 - MIHO MUSEUM
竣工:1997年
設計:イオ・ミン・ペイ
住所:滋賀県甲賀市信楽町田代300
賞歴:1999年BCS賞

皆様どうも. 100件目直前となる今回も滋賀県からお送りします. 琵琶湖を代表する自然や北陸道・中山道といった旧街道の宿場の町並みが多く残る滋賀県には、近年海外から注目を集めるすごい美術館が南部の山奥に存在します. その名はMIHO MUSEUM(ミホミュージアム). 2015年の海外旅行者ランキングでは「根津美術館」「ホキ美術館」などの有名美術館に混じってトップ10入りを果たす参照サイト高い評価を受けたその美術館に今回行ってきました.
0099:MIHOMUSEUM 石山駅バス停から

0099:MIHOMUSEUM レセプション棟手前

0099:MIHOMUSEUM レセプション棟

0099:MIHOMUSEUM チケットスペース

0099:MIHOMUSEUM レセプション棟の屋根ティティール

美術館へはJR琵琶湖線の石山駅から出発する路線バスに乗りますが、山奥ということもあってバスの所要時間なんと50分! しかし訪問当日、そんな長距離バスの乗り場には長蛇の列(写真1枚目)が. 会話を聞くと殆どが中国語圏や英語圏の外国人ばかりで、当日は途中でバスを増便させるほどの人数でした. ちなみにこの日は平日早朝だったので、休日とか一体どうなるんでしょうか…

車がすれ違うのもギリギリな細い農道・山道を進むこと50分、尻の痛みにも耐えながらようやく美術館に到着です. この美術館はとある団体(これに関しては後述)主導のもとで1997年に開館した私設ミュージアムで、毎年春・夏・秋の一部の時期に限り開館されています. すでにバス以外にも海外客を乗せた団体バスが2・3台ほど到着していたので、チケットの行列ができる前に即購入です.

きれいなカーブを描く大きな庇が特徴的なこの建物は「レセプション棟」と呼ばれる建物で、チケットの販売やカフェが備えられています. 天井一面に広がるルーバーや庇を構成するフレーム(写真5枚目)が非常にカッコよくて、チケット購入後はしばらく屋根を撮り続けていました.
0099:MIHOMUSEUM アプローチ入口

0099:MIHOMUSEUM 電動自動車

0099:MIHOMUSEUM トンネル入口

0099:MIHOMUSEUM トンネル①

作品のある「展示棟」へは、レセプション棟の近くの門から続く桜並木のアプローチを歩きます. 足の弱い方は施設内を走る電気自動車(写真2枚目)を利用できます. 春間近の時期ということで、沿道の枝垂れ桜は見事な桃色の花を咲かせており、この素晴らしい光景がカーブ先のトンネルまで延々と続きます. この美術館のコンセプトは『桃源郷(シャングリラ)』. 四季折々によってその表情を劇的に変化させるこの桜並木は、その先の楽園(展示棟)へと至る神秘の道というわけです.

続いて桜並木のアプローチの奥に続く円形にくり抜かれたトンネルが、その先の桃源郷への道しるべとなります. 表面を湾曲させて隙間なくビッシリとはめられた金属パネルは、外から入ってくる自然の光を幻想的に映し込ませています. こんなトンネルは恐らく全国を探してもここしかないでしょう. トンネル全体をわざと左にカーブさせて奥を見させないのも、憎いですが実に見事な演出です.
0099:MIHOMUSEUM トンネル②

0099:MIHOMUSEUM ブリッジ

0099:MIHOMUSEUM 外観①

0099:MIHOMUSEUM 外観②

トンネルのカーブを曲がると、ガラスの屋根に覆われた展示棟が姿を現します. トンネルと展示棟の間に架けられた橋梁は、片方のトンネル側からケーブルで吊り上げる吊り橋の構造. ケーブルを支える主塔がアーチ状になっているため、ここが桃源郷へと至る最後の門、日本の神社でいう鳥居のような別世界への入口を象徴しているようです. 展示棟の入口は日本の茅葺き屋根をガラスで仕上げたような屋根で、日本の伝統建築とガラスの現代素材を美しくマッチさせています.

展示棟までたどり着いたところで、この桃源郷を設計した方のご説明を. 設計を手掛けたのは中国系アメリカ人建築家 イオ・ミン・ペイ. 名前よりも、ルーブル美術館の「ガラスのピラミッド」を手掛けたといえばピンとくる人も多いかもしれません. 先述のピラミッドのような洗練された幾何学形態のガラス建築を特徴としたことから『幾何学の魔術師』と呼ばれ、1983年に建築界のノーベル賞であるプリツカー賞を受賞しています.
0099:MIHOMUSEUM エントランス①

0099:MIHOMUSEUM エントランス②

0099:MIHOMUSEUM エントランス③

0099:MIHOMUSEUM スペースフレーム①

0099:MIHOMUSEUM スペースフレーム②

0099:MIHOMUSEUM スペースフレーム③

こちらは入館してすぐ目の前の「エントランス」です. 先程のガラス屋根を立体的に構成した鉄骨フレーム(スペースフレーム)が空間全体を覆い、手前のガラスからは三本松の奥に甲賀の山々が広がる日本借景のような見事な眺めを演出しています. 屋根にはレセプション棟と同じ木ルーバーがはめられ、太陽光を緩やかに落とし込んでいます. スタッフに聞くとこのルーバーは木に似せたアルミ製だということですが、あまりに精巧なため言われなければ判りませんでした

しかしなぜ滋賀の山奥に世界的建築家の美術館が建つのか、答えは美術館を建てた団体『神慈秀明会(しんじしゅうめいかい)』の力が大きく関係しています. 神慈秀明会はここ滋賀県甲賀市に本部を置く宗教法人で、この美術館ではその開祖である小山美秀子(こやま みほこ)氏が生前に収集したコレクションを展示しています. 宗教の本部建築とか見てるとつくづく思いますが、宗教パワーって時にすごい建築を生み出すものですね〜
0099:MIHOMUSEUM 北館への道

0099:MIHOMUSEUM 神慈秀明会

0099:MIHOMUSEUM 北館①

0099:MIHOMUSEUM 北館②

美術館は北館と南館にわかれるため、まずは北館へ向かいます. 通路のガラスから見える山奥の建物は神慈秀明会の本部施設で、特に塔状の建物である「カリヨン塔」はこれまたペイ氏の設計. 加えてお隣の「神苑」はあの世界貿易センターを設計したミノル・ヤマサキ氏が手がけているということで、美術館のみならず本部施設も世界的建築家作品の宝庫となっています. しかしながら本部施設は信者以外入館不可、内部も徹底して非公開ということです.

北館は訪問当時は特別展のエリアで、中央に配置された日本庭園をロの字に囲むように配置された展示室をグルッと回るものになっていました. 神慈秀明会教祖である岡田茂吉(おかだ もきち)氏の「自然との共生」という信念に則り、建物の8割を地面に埋め込んで自然の極力の破壊を防いでいます. 日本庭園や茅葺き屋根は、日本の伝統文化を尊重したいとするペイ氏の思いによるものです.

余談ですが、神慈秀明会は世界救世教の分離教派であるため、岡田氏は世界救世教の教祖でもあります. そして救世教が別で管理する建物として静岡県の熱海に「MOA美術館」があるのですが、こちらもその教祖様の信念のもとで竹中工務店と鹿島建設が設計した自然共生型の美術館だということで、熱海に行った際には是非訪れたいです.
0099:MIHOMUSEUM 南館

0099:MIHOMUSEUM レストランフロア

0099:MIHOMUSEUM 1階入口①

0099:MIHOMUSEUM 1階入口②

こちらは南館で、主にコレクション展を扱っています. 建築も素晴らしいこの美術館ですが、それ以上に驚かされるのはコレクション品の質の高さ. 展示されるのは世界的な博物館に展示されていてもおかしくない世界各国の美術品ばかりで、中には紀元前の石碑など稀少なものも全て間近で鑑賞できます. 建築が世界的建築家ならば美術品は世界レベル、海外客が他の美術館を差し置いてわざわざここに来る理由が何となくわかった気がした瞬間でした.

南館奥にはレストランが完備され、農薬や有機肥料を使用しない自然農法の食材を頂くことができます. 写真はないのですが、レストランのガラス下にも日本庭園が広がっていました. 1階にあるガラスの扉をでると、天井に四角形のトップライトが開けられた広い外部空間に出ます. こちらは車椅子の人や玄関の階段が登れない人用に設けられた1階入口なのですが、あまりのホール空間の見事さに要人専用の入口かと思いました.

『宗教法人の美術館』と言ってしまうと忌避される方もいる思いますが、個人的には宗教施設という概念はここでは取っ払って訪問したほうが絶対いいと思います. 自然との共生と日本の文化・伝統を尊重した、世界的建築家の目指した『日本の桃源郷』が間違いなくここにはある. 美術館までの道は非常に長いものですが私は行って後悔はなかったです. 滋賀に来た際は是非この世界観を感じてみることをおすすめします. では今回はここまで〜


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『ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)』は関西の建築好きが日本全国にある建築スポットを実際に探訪し、感想を交えながら紹介するブログです. 西日本多めです. 今までにご紹介した建築記事の一覧を見たい方はこちらへ→「全国建築マップ

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・『近代建築2017年5月号』にて写真提供をさせていただきました.

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