奈良国立博物館 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

奈良国立博物館

           
0113:奈良国立博物館 メイン

0113 - 奈良国立博物館
竣工:1894年(本館)/ 1972年(新館)
設計:片山東熊(本館)/ 吉村順三(新館)
   栗生明(なら仏像館改修)
住所:奈良県奈良市登大路町50
賞歴:1975年日本芸術院賞(新館)
   1974年BCS賞(新館)

皆様どうも. 2016年6月上半期の奈良建築シリーズ5件目となる今回は、ここ奈良を語る上では外せないミュージアムスポット 奈良国立博物館をご紹介しましょう. こちらは東京・京都と並ぶ『三大国立博物館』のひとつで、毎年秋に開催される奈良の一大イベント『正倉院展』の会場として全国的に知られており、毎年20万人以上の人々がこの展覧会を求めて博物館を訪れます.

こちらの博物館で名建築と謳われる施設は2つ. 博物館開館当初から現存する近代建築「旧本館」(メイン写真 右奥)と、後年に増築されたモダニズム建築「新館」(メイン写真 左)です. とりわけ旧本館は『なら仏像館』という仏像展示館として最近リニューアルしたばかりということで、奈良市内の新しい古美術ミュージアムとして注目されています.
0113:奈良国立博物館 旧本館正面①

0113:奈良国立博物館 旧本館正面②

0113:奈良国立博物館 旧本館正面③

0113:奈良国立博物館 旧本館表札

0113:奈良国立博物館 旧本館改修前

まずは敷地西側にある「なら仏像館(旧本館)」です. 『帝国奈良博物館』として1895年に開館した当館は、県内初の木骨煉瓦造りで建てられた近代建築. ネオゴシック風に設えられた繊細な装飾や、濃いベージュ調の落ち着いた色合いのモルタル外装をみるに豪華絢爛な様相は鳴りを潜め、博物館という用途に合わせた落ち着きのある外観に仕上げています. リニューアル時の受付棟の外装は黒(写真1・4枚目)ですが、改修前(写真5枚目)は外壁と同じ色合いのものが用いられていました.

手掛けたのは赤坂離宮にある国宝「迎賓館」を手掛けた明治の建築家 片山東熊(かたやま とうくま)氏. 日本初の建築教育機関『工部大学校造家学科』の1期生で、卒業後は政府官庁の建築技師として県庁や博物館、宮内省施設など30以上もの作品を手がけました. 博物館に限定すれば「京都国立博物館 明治古都館」や「東京国立博物館 表慶館」など、三大国立博物館全ての場所で何らかの施設の設計を担当しており、その建物全てが重要文化財に指定されています.
0113:奈良国立博物館 旧本館裏面①

0113:奈良国立博物館 旧本館裏面②

0113:奈良国立博物館 旧本館裏面③

0113:奈良国立博物館 旧本館裏面④

こちらは仏像館の裏にあたる西側外観です. 今は締切の状態ですが、かつてはこちらがメインの入口として機能していました. 入口両脇にはコリント式の双柱が並び、軒上には細やかな装飾が施された櫛形破風が取り付けられ、東側とは異なった絢爛な様相を呈しています. 外壁に並ぶ絵画の額縁のような装飾(写真3枚目 中央など)は、同年に完成した「京都国立博物館 明治古都館」でも確認できます. 屋根中央部の採光窓だけ外装が白い(写真4枚目)ですが、ここだけ増築でしょうか. 気になるポイントです.

館内は国宝・重要文化財を含めた100体あまりの仏像が展示されています. 展示室の改修は「平等院鳳翔館」などを代表作にもつ建築家・栗生明氏が担当. 既存空間に新しく真っ白い展示空間を新設させ、天井に展開するルーバー越しに旧館の装飾が見える構成になっています. 説明だけではピンとこないと思うので、内部は公式サイトリンクや現地でご確認を. 西側玄関ホールは休憩室としてほぼ完全な状態で残っているので、近代建築目的で訪れる方はそちらもチェックです.
0113:奈良国立博物館 新館外観①

0113:奈良国立博物館 新館外観②

0113:奈良国立博物館 新館外観③

0113:奈良国立博物館 新館外観⑤

0113:奈良国立博物館 新館外観④

そしてこちらは敷地東側に建てられた「新館」です. 地上階が独特なデザインをした列柱に持ち上げられピロティ化(写真3・4枚目)させている当館は、東大寺を代表する国宝倉庫『正倉院』のイメージを反映させた和寄りの外観となっています. 当館手前には池を造成し、建物自体が水に浮いているような演出がなされながらも、周囲の芝生や木々のランドスケープと見事に融合した完成度の高い水辺の空間を作り出しているのに感銘を受けました.

新館を手掛けたのは昭和期に活躍した建築家 吉村順三(よしむら じゅんぞう)氏. 前川國男氏らと同じモダニズム建築のピーク期を中心に活躍した建築家で、「軽井沢の山荘」に代表される数多くの住宅作品を手がけた建築家として名を馳せ、宮脇檀氏や中村好文氏など多くの住宅建築家を世に送り出しました. 新館でいえば『正倉院』という和の伝統とモダニズム建築の融合を図った建築家としても知られ、その代表作である当館では日本芸術院賞を受賞しています.
0113:奈良国立博物館 地下回廊へのスロープ①

0113:奈良国立博物館 地下回廊へのスロープ②

0113:奈良国立博物館 地下回廊①

0113:奈良国立博物館 地下回廊②

訪問当日は新館は展覧会準備中のため館内には入れませんでしたが、展示館の要素以外の場所として是非行っておきたいのが、1997年に完成した「地下回廊」です. こちらは手前の池の西側にあるスロープ(写真1・2枚目)から降りることができ、先ほどの旧本館や新館の地下階と連絡する東西150mもの長い地下空間を形成しています. スロープも石垣を設えた気持ちによいものでしたが、すぐ隣が池なので何かの拍子に溢れてこないか非常に心配でした.

地下回廊とはいうものの、地下フロアはミュージアムショップやカフェなどが併設された広々としたスペースになっていました. こちらは博物館の入場チケット関係なく入れるので、奈良公園を満喫した後の休憩スポットとしても利用できそうです. 装飾の冴える近代建築あり、和と融合したモダニズム建築ありな奈良を代表するミュージアム建築. 奈良公園に来た際は是非寄ってみてください. ではでは今回はここまで〜

2017.1.10. 新建築2017年1月号の改修記事により一部文章変更


※ Googlemapでは「新館」を表示しています
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コメント

宮脇さんについて

いつも大変楽しくブログを拝見してます。

宮脇さんについてですが、宮脇さんは吉村順三さんの事務所で勤務してません。
宮脇さんは東京芸大で、教授の吉村さんから設計を教わりました。

少し気になったので、コメントしました。

失礼しました。

Re: 宮脇さんについて

> 松川洋輔さん
コメントありがとうございます. 宮脇氏が吉村氏に「師事していた」というのは解っていたのですが、具体的な関係に関しては把握しておりませんでした. 私自身も勉強しながら書いていますので、このような正しい知識のある方の意見は大変ありがたいです. 貴重なご指摘を本当にありがとうございました.
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