松柏美術館 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

松柏美術館

           
0156:松柏美術館 メイン

0156 - 松柏美術館
竣工:1994年
設計:村野・森建築事務所
住所:奈良県奈良市登美ヶ丘2-1-4

皆様どうも. 台風も一通り過ぎ去って、秋の訪れのような肌寒い感じの季節になってきました. 季節の変わり目は体調の管理に気をつけたいものです. それでは今回は奈良市近鉄学園前エリアから建築スポットをもうひとつ. 前回の「大和文華館」と同様に近畿日本鉄道(近鉄)グループが経営する日本画専門の美術館 松柏美術館をお送りします.
0156:松柏美術館 駅前からの道のり

0156:松柏美術館 湖畔から美術館を見る①

0156:松柏美術館 湖畔から美術館を見る②

0156:松柏美術館 湖畔から美術館を見る③

0156:松柏美術館 橋からの眺め

まず初めは近鉄学園前駅前からの道のりを. 「大和文華館」が駅の南口を出てすぐだった一方で、こちらは駅の北口から少し遠い場所に建っています. バス路線も設定されているため、それを利用すれば5分弱で到着するそうですが、今回は徒歩で向かいました. 美術館へと至る主要道路(写真1枚目)は、丘陵地という土地柄もあって少し緩やかな坂道が連続しますが、そこまで急なものではない感じです.

20分ほど歩いた先にある交差点を曲がってしばらく進むと、『大渕池』とよばれる大きなため池にたどり着き、その奥の湖畔に佇むクリーム色の建物が目的の美術館です. 雄大な湖畔の自然が支配する中にひっそりと建つその佇まいは、見ていて非常にロマンチックです. 建物単体で見ると非常に小さい施設にみえますが、実は写真3枚目に写る美術館右側の緑全てが美術館の敷地内と非常に広い. なぜ建物に対して庭がここまでデカイのか、この点に関しては後述します.
0156:松柏美術館 正門

0156:松柏美術館 正門からの外観①

0156:松柏美術館 正門からの外観②

0156:松柏美術館 レンガ調の外壁

0156:松柏美術館 藤棚となっている駐車場アーケード

0156:松柏美術館 ユニークか開口と列柱

大型の看板などが付いていないためか、正面からの見た目は非常にサッパリとした印象. 手前が駐車場ということもあってその様相はどこかの施設の裏口のようで、美術館という雰囲気には感じなかったというのが正直なところです.

こちらは明治・大正期の京都画壇をリードした、日本初の女性文化勲章受章者として知られる日本画家 上村松園(しょうえん)氏、その息子の松篁(しょうよう)氏、さらにその息子の淳之(あつし)氏という『上村家三代』としても有名な日本画の名門一族の画業を展示する目的で、近鉄が主体となって1994年に完成しました. 設計は村野藤吾氏が死没した後の村野・森建築事務所(現:MURANO design)が担当. 数ヶ月前まではてっきり村野建築と勘違いしていました.

村野氏の直接の作品ではありませんが、クリーム色の表面が粗い煉瓦タイルを、大きめのモルタル目地で強調するように仕上げた外壁(写真4枚目)は、大阪にある「旧村野・森建築事務所」を彷彿とさせます. 他にも外付けされたような感じもある真っ白な階段室(写真2枚目)や1/4円断面のトップライト(写真3枚目)など、遠目ではわからなかったユニークな仕掛けが散見されます. 駐車場の屋根上に広がる緑は藤棚(写真5枚絵)で、春〜夏頃にかけて紫の美しい見事な藤を鑑賞できます.
0156:松柏美術館 入口へのアプローチ

0156:松柏美術館 アプローチの庭園

0156:松柏美術館 白の階段室

0156:松柏美術館 手すりが印象的なバルコニー

0156:松柏美術館 松庭へ続く道と旧佐伯邸

0156:松柏美術館 百数十本の松

駐車場からは建物への玄関らしきものは見当たらず、玄関へは建物北側にある小道(写真1枚目)を歩いて裏側へとまわる必要があります. 四季折々の花々が植えられた花壇を歩く、庭園のようなアプローチ(写真2枚目)は非常に美しいです. こういうアプローチのまわし方をする美術館いうのも珍しい気がします. 建物をみると先ほどもあった白い階段室(写真3枚目)や、菱形を組み合わせたバルコニーの手摺デザイン(写真4枚目)を見ることもできます.

するとアプローチの途中で左右に分岐する場所があります. 美術館へはここから左に進むのですが、右に進むと垣根の奥に見える立派な日本家屋(写真5枚目)と、その北側には湖畔に広がる数百十本の松(写真6枚目)を鑑賞することができます. 実はこの美術館は、近鉄グループの総帥も務めた佐伯勇(さえき いさむ)氏の旧邸敷地内に建設されたもので、元々旧邸の庭だった部分がそのまま美術館の庭として公開されているため、敷地が広大なものとなっているのです.

ちなみに先ほどの日本家屋は今なおも現存する「旧佐伯邸」で、こちらは村野氏が1965年に手掛けた立派な数寄屋建築. 訪問当日は庭のお手入れのため邸宅エリア内には入れませんでしたが、土日祝の昼ごろには前庭を茶屋として開放することもあるそうなので、ぜひその時間を狙って行ってみるのもありでしょう.
0156:松柏美術館 ガラスの入口①

0156:松柏美術館 ガラスの入口②

0156:松柏美術館 文字標

0156:松柏美術館 エントランス

0156:松柏美術館 平面案内図

アプローチを抜けてようやく美術館の玄関(写真1・2枚目)に到着です. 玄関は上がドーム状の屋根となった全面ガラス張り. 周辺の緑が映りこむ幻想的なガラス空間ですが、夏場は熱負荷が大変そうな玄関です. 館内は展示室以外撮影OKということで写真付きでご解説. 美術館は地下を含めた3フロア構成で、中庭空間を周回するように展示室を巡る構成. クリーム色の重厚さもあるレンガ外壁から打って変わり、館内は白を基調とした明るい空間(写真4枚目)になっています.
0156:松柏美術館 中庭①

0156:松柏美術館 中庭②

0156:松柏美術館 廊下空間

0156:松柏美術館 地下フロアの開口

0156:松柏美術館 地下フロアの手摺

0156:松柏美術館 ショップ内の椅子・机

中庭は地下に掘り下げられているためエントランスから非常に見通しが良く、ガラス張りになったショップスペースまで視線が通る(写真1枚目)のがいい感じ. 中庭の池には大量の鯉が泳いでいます. エントランスからショップへと繋がる廊下(写真3枚目)は、ボールペンのように先が細くなった列柱と湾曲した天井が特長的で、村野ワールドの系譜がしっかり継がれているような独創性豊かなものです.

ショップのある地下フロアに降りるとPの字にくり貫かれた開口(写真4枚目)や曲面の美しい手摺(写真5枚目)などデザイン的な見所満載. とりわけ気になったのがショップに備え付けられている、アール・ヌーヴォー調のデザインが施されたオシャレな椅子と机(写真6枚目). 設計は不明らしいですが開館当初からある家具だそうで、個人的には村野事務所オリジナルのものだと思っていますが、実際はどうなのか気になるところです.

日本画を展示するため、展示室内は照明が落とされた落ち着きのある空間になっていますが、外観で見た1/4円のトップライトから差し込む光が天井脇をボウっと照らしているのが印象的でした. ぜひ実際に確かめてみてください. 湖畔の雄大な緑に囲まれて建つ村野デザイン満載なミュージアムへ、気になった方は是非一度. ではでは今回はここまで〜


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