新井ビル - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

新井ビル

           
0184:新井ビル メイン

0184 - 新井ビル(旧報徳銀行大阪支店)
竣工:1922年
設計:河合浩蔵
住所:大阪府大阪市中央区今橋2-1-1

皆様どうも. 堺筋の生きた建築シリーズも残りあとわずかです. 5件目となる今回は新井ビルをご紹介していきます. 現在は1階に人気洋菓子店『五感(GOKAN)』の本店が入居するテナントビルですが、元々は世界恐慌まで実在した『報徳銀行』の大阪支店として1922年に建てられた銀行建築です. 1922年の竣工は、「小西家住宅」などの木造を除いた堺筋のレトロビルとしては、私の知る限り最古の建造物です. 今回は築100年も間近なこの近代建築をピックアップです.
0184:新井ビル 堺筋の北方面から

0184:新井ビル ファサード①

0184:新井ビル 地上階のファサード

0184:新井ビル ファサード②

新井ビルは堺筋沿道の中でも中之島に近い場所に位置しています. 写真1枚目の、当ビルの数件奥にある茶色の建物は「高麗橋野村ビルディング」です. 建物は1階を石、2階から屋上手前までをパープルのタイルとし、最上部中央に立派なメダリオンを取り付けた左右対称の外観になっています. しかし左側入口は1・2階に入居する五感専用、右側入口は3・4階のテナント専用と、入るフロアによって別々という不思議な構成です.

設計を手掛けたのは明治〜大正期に関西で活躍した建築家 河合浩蔵(かわい こうぞう)氏. 工部大学校(後の東大工学部)の4期生としてジョサイア・コンドルより建築を学びます. wikiでは1882年の工部省入省から92年の退官までにドイツ留学をしていると記されており、当時のドイツにはセセッション(分離派)の萌芽はあったことでしょう. 3階の窓上部分のデザインが簡略化されたデザインにあるように、外観の作風はセセッションに影響されたものとなっています.
0184:新井ビル ファサードを下から

0184:新井ビル GOKAN入口の階段手すり

0184:新井ビル GOKAN入口扉

0184:新井ビル GOKAN入口のランプデザイン

こちらは外観を手前の歩道から撮影したものを色々と. 外観はイケフェス後に撮影し直したもので、偶然に五感が休業日だった日の撮影でした. ドアボーイの方に見られてるとなかなかじっくりと見られないのですが、階段手すりのデザイン(写真2枚目)や締切時の扉(写真3枚目)など、この日はじっくりと鑑賞. 扉や脇の照明(写真4枚目)も竣工時のオリジナルでしょうか、レトロな雰囲気のある良いデザインです.

店舗の中に入ると、そこは中央部分が2フロア吹き抜けとなったショップスペースになっています. そこは銀行時代の営業室として機能していた場所で、会議室や事務室があった2階フロアはカフェスペースとして利用されています. 報徳銀行倒産後は、1934年に『新井証券株式会社』がビルを取得し本店フロアに、1976年にはステーキレストランが30年にわたって営業していました. 1997年には登録有形文化財となり、現在の五感が開店したのは2005年のことです.
0184:新井ビル 上階テナント入口

0184:新井ビル 上階テナント入口扉

0184:新井ビル 螺旋階段①

0184:新井ビル 螺旋階段②

0184:新井ビル 螺旋階段③

ここからはイケフェスで特別解放された3・4階フロアの内観へ. 一部を除き撮影フリーという感じでしたが、プライバシーに極力配慮した写真を選定して掲載しています. 入口にはいってすぐに見えてくるのが、この何重にもグルグルと配された螺旋階段. 螺旋といいうとカープしたイメージですが、ここではロの字にカクカクと回りながら上っていきます. 装飾のないシンプルな木製手摺も、近代建築の中では新鮮に感じます. 昔はこの吹き抜けにエレベーターがあったそうな.
0184:新井ビル テナントフロア①

0184:新井ビル テナントフロア②

0184:新井ビル 開口の金具①

0184:新井ビル 開口の金具②

0184:新井ビル 開口の金具③

階段をのぼってテナントフロアにやってきました. 報徳銀行時代はどう利用されていたかはわかりませんが、1934年の新井証券会社取得時から既にテナントフロアになっていたようです. レトロビルだけあって廊下の天井も高い. 廊下は綺麗な一本道ではなく奥でT字になっています. 外壁が綺麗に左右対称で整っているので、この平面構成は意外に感じます.

窓からは多くの車が通る堺筋を見下ろすことができますが、個人的に気になったのがこの開口の金具(写真3枚目以降). この大掛かりだけど精巧に映る感じがまさにレトロ. どういう仕組みになっているのか興味津々でしたが、下手に触って壊すのも嫌なのでいじることはできませんでした. 一見見ただけでは、あの金具がどう動くのかがさっぱりわかりません.
0184:新井ビル 裏側の階段①

0184:新井ビル 裏側の階段②

0184:新井ビル 裏側の階段③

0184:新井ビル 裏側の階段④

こちらは廊下の奥にあるもう一つの階段. 先程の階段とは建物の対角方向、つまり堺筋からは見えない裏手に配置されています. そういう部分からも関係者専用階段のような感じのある階段ですが、こちらの手摺は木をしならせた美しいカーブのある造形的な手摺で、シンプルで角ばってた堺筋側のそれとは対照的. 全体的な色合いも黒く、手摺を支える材も細くといった細かい部分も対比されているのが、階段の表と裏を意図してやっているかのような印象を受けました.
0184:新井ビル 屋上①

0184:新井ビル 屋上②

0184:新井ビル 屋上③

0184:新井ビル 屋上④

裏手の階段を更にのぼって到着したのがビルの屋上. ここまで公開するとはオーナーさんも太っ腹ですね. 地上からは決して気づかないドーム状の塔屋のような空間(写真2枚目)や、メダリオンお裏側にハシゴが付いていたり(写真3枚目)と新たな発見要素満載でした. 写真4枚目は屋上から「大阪証券取引所」を見た様子. フロア高が高く、屋上(5階)であっても現代のビル6階程度の高さがあるので、ちょっと怖かったですね.

というわけで今回はここまでとなります. 現在はスイーツ店の本店ビルということで人気を博すレトロビルですが、1976年には建て替えのピンチに直面した時期もあります. 結果として建て替えはされなかったわけですが、そこまで追い込まれながらも残す道を選ぶという決心は凄まじいものであると感じます. これからも生きた建築として生き続けてほしいものです. では今回はここまで〜


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