大阪府立中之島図書館 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

大阪府立中之島図書館

           
0199:府立中之島図書館 メイン

0199 - 大阪府立中之島図書館
竣工:1904年(本館) / 1922年(左右翼増築)
設計:野口孫市(本館) / 日高胖(左右翼増築)
住所:大阪府大阪市北区中之島1-2-10

皆様どうも. 11月7日から今月末まで駆け足でお送りしてきた大阪の生きた建築特集も、今回で一応の最終回を迎えます. 番外編も含めて計28回の長編シリーズになったわけですが、これでもまだ削りに削ってしまった方でして、またしばらくしてから地区別特集という名目で紹介していこうと思います. 最終回では「大阪市中央公会堂」のすぐ西隣に建つ大阪府立中之島図書館をお送りしていきます. では早速まいりましょう.
0199:府立中之島図書館 正面外観①

0199:府立中之島図書館 正面外観②

0199:府立中之島図書館 正面外観③

0199:府立中之島図書館 玄関部の照明

0199:府立中之島図書館 図書館入口

0199:府立中之島図書館 両翼の増築部

最初は図書館正面から. コリント式のジャイアントオーダーが4本並び、その上に巨大かつ見事な三角ペディメントが載せられた玄関部は、ギリシャの神殿を彷彿とさせる見事な新古典主義建築です. 天気が晴天だったこともあり、この日の図書館はまさに白亜の神殿という表現が相応しい佇まいに. 赤い色合いに染まる扉や半円アーチの窓が、この純白カラーの中においてアクセントとなっています. 階段脇に設けられたブロンズ照明の装飾(写真4枚目)も見事です.

図書館は住友財閥創業家である住友家15代目 住友友純(すみとも もといと)氏が資金等を寄贈し『大阪図書館』(写真3枚目 下部分に右読みで表記)として開館させたのが始まりです. つまりは初めから公共機関が建てたわけではなく、住友財閥という私企業が社会貢献として、大阪になかった図書館を創り上げたわけです. 当時の大阪の民間パワーは凄いですね.

1904年に完成したのは玄関部にあたる中央棟のみで、1900年に住友本店が設立した『住友本店臨時建築部』が設計を手掛けました. 日本トップクラスの組織設計である『日建設計』の起源となる設計集団で、当時技師長の座にいた野口孫市(のぐち まごいち)氏が中心となって中央棟が完成します. その後1922年に左右両翼部(写真6枚目)が増築されるのですが、こちらは1915年に早世した野口の後を継いだ日高胖(ひだか ゆたか)氏が中心となって手掛けられたものです.
0199:府立中之島図書館 中央棟のファサード

0199:府立中之島図書館 増築部壁面のファサード①

0199:府立中之島図書館 増築部壁面のファサード②

0199:府立中之島図書館 増築部壁面のファサード③

こちらは窓のファサードに焦点をあてて撮影したもの. 写真1枚目は野口氏が手掛けた中央棟、2枚目以降は日高氏が手掛けた増築部です. 上部のコーニスや窓まわりの装飾、化粧煉瓦の割付に至るまで中央棟のものと同じになるよう、増築部が精巧に創り上げられていることが伺えます. 私もちゃんと調べるまでは、中央棟と両翼の建物は同時にできたものだと勘違いしていました. 1974年にこの中央棟と左右両翼棟は、国の重要文化財に指定されています.

住友友純(春翠)氏の発起によって結成された臨時建築部は、後に手がける住友本店設計のために集められた臨時組織で、中之島図書館等の設計は組織としての名を高めるためのものでもありました. 後に住友企業の発展に伴い建築の需要が増加したことから、1911年に『住友総本店営繕課(住友営繕)』という常設組織に改組. そして1926年には『住友合資会社工作部(住友工作部)』という名で、当初の目的であった本店ビル「住友ビルディング」を完成させます.
0199:府立中之島図書館 図書館裏手の様子①

0199:府立中之島図書館 図書館裏手の様子②

0199:府立中之島図書館 図書館裏の増築棟①

0199:府立中之島図書館 図書館裏の増築棟②

こちらは正面玄関の反対側となる東側の様子です. 東側には図書館増築に伴って建てられた4棟の建物が並んでいます. 南側から撮影した写真1枚目の写真をもとに説明すると、手前から「事務棟(1960年)」「3号書庫(1927年)」「2号書庫(1916年)」「別館(1956年)」です. 特に中央の2棟は大正期に増築された近代建築で、この2棟の隙間(写真2枚目)をみると、2号書庫の外壁に施されたメダリオンらしき装飾が残っているのが確認できます. 戦後モダニズムの最中に建てられた事務棟の窓には、綺麗なガラスブロック(写真3・4枚目)が埋め込まれていました.
0199:府立中之島図書館 中央ホール①

0199:府立中之島図書館 中央ホール②

0199:府立中之島図書館 中央ホール③

0199:府立中之島図書館 中央ホール④

0199:府立中之島図書館 中央ホール⑤

それでは特別解放された正面玄関を抜けて、館内に入っていきます. 玄関を抜けると見えてくるのが、天井のドームまでが吹き抜けとなった円形の中央ホール. ホール中央には木の装飾が立派な階段が設けられ、上のフロアへを進むことができます. 中央階段奥の壁には住友友純が記したとされる『建館寄付記』の銅板が掲げられ、その両脇には『野生と知性』を表現した半裸の青年像. さらに上部の帯には、ゲーテや菅原道真といった哲学者の名前が8方向に記されています.

野口氏によって手掛けられたこの中央棟は、このホールを中心とした十の字型の平面をしているのが特長です. この平面構成は16世紀に活躍したイタリアの建築家 アンドレア・パラディオの「ヴィラ・ロトンダ」を強く意識したもので、野口氏自身もその作風を『理想の原形』として捉えていたようです. 中央にステンドグラスが配された鉄骨ドームは、そのパラディオが求めたローマの「パンテオン」を彷彿とさせるものです.

これらの西洋的古典建築と比較すると、バロック様式の特長ともいわれる螺旋階段は図書館独特の要素です.「パンテオン」は神殿ですので空間の性質はどちらかといえば静的なもので、「ヴィラ・ロトンダ」にも螺旋階段はありません. 静謐なものと考えられていた吹き抜け円形ドームに、アップダウンという動的な性質を持つ螺旋階段を挿入して、静と動が入り混じる独特な空間を創出しています.
0199:府立中之島図書館 記念室①

0199:府立中之島図書館 記念室②

0199:府立中之島図書館 記念室③

0199:府立中之島図書館 記念室④

最後はイケフェスで特別解放されていた3階の記念室の様子を. 正面玄関の真上にあった半円アーチの窓開口はこの部屋に続いています. 当時は館長室として使用されていたそうです. アーチ部の枠を木で設えているのは非常にエレガントでした. 赤く彩られた天井の模様(写真4枚目)もいいですね. かつては橋下市長時代にこの図書館の廃止論が騒がれ「なんてことを!」と私も思ったものですが、なくならなくて本当によかったとホッとしています.

というわけで大分駆け足ではありましたが、この図書館の紹介をもって大阪の生きた建築は一旦ゴールということにさせていただきます. こういうオープンイベントという形で大阪建築の魅力を発見できるというのは非常に楽しく、大阪の歴史を深く知るきっかけにもなったりすることもあるので、これからもこの活動は続いてほしいものです. ありがとうイケフェス. 次回はいよいよ200件目の建築紹介です. ではでは今回はここまで〜


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