神奈川県立近代美術館 鎌倉館 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

神奈川県立近代美術館 鎌倉館

           
0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 メイン

0050 - 神奈川県立近代美術館 鎌倉館
竣工:1951年(旧館) / 1966年(新館・別棟)
設計:坂倉準三
住所:神奈川県鎌倉市雪ノ下2-1-53
選定:DOCOMOMOセレクション(20選:No.10)
特記:2016年1月 閉館

皆様どうも. 今回でこのブログ50事例目の建築紹介となります. 10月末から初めて3ヶ月と、途中更新が途絶える時期もありますが、なんとか続いています. そんな節目にご紹介する建築があるのは大仏でも有名な神奈川県鎌倉市、鶴岡八幡宮の敷地内にある神奈川県立近代美術館 鎌倉館です.

実は今回紹介するこの鎌倉館は今月で閉館します! 閉館しました.

しかし全部は取り壊さず、一部の建物を鶴岡八幡宮に譲渡・保存の方向で調整中のようです. 「鎌倉近美」「カマキン」として親しまれるこの美術館の勇姿を見るため、早朝から鎌倉へとすっ飛んでまいりました.
0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 鶴岡八幡宮(左に美術館)

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 平家池から本館を見る

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 本館東側に建つ新館

最寄はJR鎌倉駅、東京から横須賀線・湘南新宿ラインで1時間で行くことができます. 関西生まれの私からすると、鎌倉ってもっと遠いイメージだったのですが、案外スッといけるのが意外でした. 鎌倉館は戦後間もない1951年に鶴岡八幡宮の借地提供を受け、パリ・ニューヨークに続く世界3番目ともなる日本初の公立近代美術館として開館しました. 当時の神奈川県知事であった内山岩太郎(うちやま いわたろう)氏は「戦後の荒廃したまちに、人のよりどころとなる文化を」という思いで、わざわざ境内に美術館を建てるいう豪快な人物でした.

鎌倉館は八幡宮境内の西端の『平家池』の北側に、半ば池から突き出した状態で建てられています. 八幡宮参道からも遠目に確認でき、宙に浮いたホワイトキューブのような建物が旧館(以下、本館)で、その右隣にあるガラス・鉄などの近代素材で構成された建物が、66年に竣工した新館です. 真っ白に輝く外壁の割には静閑とした佇まいをしていたのが意外でした.
0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 八幡宮参道からの入口

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 閉館した新館

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 学芸員棟①

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 学芸員棟②

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 左に学芸員棟 右に本館 奥に新館

参道から美術館の入口へと進むところで設計者についてご紹介. 手掛けたのは建築家 坂倉準三(さかくら じゅんぞう)氏です. 前川國男・吉阪隆正と並んで、近代建築の巨匠として知られる建築家ル・コルビュジエに師事した弟子の一人として有名な建築家です. 1969年に死去するまでに「国際文化会館」「羽島市庁舎」などの歴史的な近代建築を手掛けており、戦後最初の作品であるこの鎌倉館も、日本を代表する近代建築としてDOCOMOMO20選に選定されています.

近代美術館の指名設計コンペ(審査委員長:吉田五十八)では坂倉氏・前川氏ほか3名による競技の結果、鉄骨とアスベストボードで提案された坂倉氏の案が採用されました. その後1966年に本館に続いて2つの建物も設計しています. 一つは先程も説明した新館ですが、こちらの新館は耐震問題から2007年以降は未使用状態になっています. もう一つは敷地北側にある別棟で、こちらはゴミ保管庫や学芸員棟として使用されています.

参道から本館入口までは、この3つの建物の間を通ることになりますが、説明なしでは全ての建物が坂倉氏の設計とは思えないほど似ていません. 本館はコルビュジエの「国立西洋美術館」を思わせるような近代建築であれば、新館はガラス・鉄骨を全面に推したデザイン、果てに別棟は低層かつアーチ状の扉等どこかポストモダン的で、異なる素材・バラバラの造形性が3つも隣接しているというのはある意味衝撃的な体験でした.
0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 西側入口

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 西側から平家池越しに見る

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 本館入口となる階段

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 第一展示室入口

道を抜けて、西側の本館入口へとやってきました. 2階ボリュームに大穴が開けられ、そこに取り付けられた階段を進むアプローチは非常に絵になります. 西側広場から横に逸れると、先程の平家池からの眺めを西側からみれます. 2階外壁に使用されているのが、先程コンペ案で説明したアスベストボードをアルミジョイナーで固定したもので、あえて継ぎ目を埋めずデザインにしている感じがとてもイイです.階段の窓の奥は中庭に続いているのですが、そこは曇りガラス?で仕切られててよく見えませんでした.

それでは展示室へと向かいましょう、ただし展示室撮影禁止なので館内は文面のみの解説です. 本館は1辺約30mの正方形型の平面をしており、その中に約10m平方の中庭が入った『ロの字型』の平面構成をしています. 展示室は開館当初は天井面にあったトップライトからの自然採光でしたが、69年の大改修で人工照明に切り替えられました. 展示ケースは、鑑賞者自身が映り込むことを防ぐために、斜めに設置された珍しいものでした.
0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 休憩スペースから中庭をみる

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 2階休憩スペース

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 中3階への階段

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 学芸員室の中

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 坂倉氏設計の組立式製図台

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 学芸員室からの外の眺め

第一展示室を抜けると、半屋外の休憩スペースに到着しました. ここから階段を伝って1階へと降りることができます. 当日は、今回初にして最後の一般公開となる中3階『学芸員室』も撮影できました. 1969年まで学芸員室として使用されていました. 室内は天井高の低いヴォールト天井となっており、小さいアトリエのような空間に感じます.

更に室内には、坂倉氏が設計した組立式の製図台が展示されており、部材・構造のシンプルさに驚かされました. 窓からは平家池・鶴岡八幡宮の鳥居、そして鎌倉の中心市街地を一望できるビュースポットとなっており、そういう部分からもこの学芸員室には只ならぬ特別な雰囲気を感じました.
0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 中庭の様子

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 コルビュジェと坂倉氏が映された写真

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 栃木県産の大谷石①

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 栃木県産の大谷石②

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 新館へ続く通路①

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 新館へ続く通路②

そして階段を降りて1階の中庭へとやってきました. 1階はガラスの壁で仕切ることのできる半屋外の構造で、中庭中央に鎮座するイサム・ノグチの『こけし』を中心とした彫刻作品が展示されています. 中庭に沿って仕切られた石造りの壁は、栃木県産の軽石凝灰岩『大谷石』で構成されています. 一部の壁には写真のようにガラスブロックがはめ込まれていて、子供がおもしろがって覗いているのが印象的でした.

そして中庭の端っこには、1955年当時に訪問したコルビュジエと坂倉氏の写真が展示されており、実際に2人が建っている部分に白い足跡がマーキングされていました. 約半世紀前はこの2人もこの場所に立っていたと思うと感慨深いものがあります.

そして1階の東側には未公開となっている新館へ続くブリッジがあるのですが、これがやけに近未来的です. ガラス壁面を斜め配置しているところが、当時のかっこよさを象徴しているようにも見えます. 私個人からみると今もこれはこれで通用できるデザインだと思います. しかし今回で新館は取り壊しになるのに、最後くらい内部観覧させても良かったのではないかと、締め切りの扉を見て思いました.
0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 ピロティ①

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 ピロティ②

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 自然石で挟み込まれた鉄骨柱

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 2階へと続く階段

0050:神奈川県立近代美術館鎌倉館 出口扉のデザイン

そして最後は、1階から平家池をみるピロティとなったテラススペースです. ちなみにピロティはコルビュジエが『近代建築の五原則』で提示した一つの要素で、これは坂倉氏がコルビュジエの影響を強く受け継いでいる表れともいえる場所です. 南側からの太陽の光が水面に反射し、天井部分に波模様と鉄骨の影が投影されるシーンは幻想的です.

このテラスペースは坂倉氏が桂離宮の古書院の月見台を参考にしたといわれています. 確かに西洋の列柱よりも軽やかでシンプルな木材を使い、水平力を強調した日本建築の様相を映し出しているようにもみえます. 2階を支える鉄骨の基礎部分は石材で、どのように施工しているのか最初はビックリしましたが. よく見ると石を両側から挟んで固定していました. しかしこのテラス席は本当に眺めていて飽きません. 保存にしろ改修にしろこの空間は残して欲しいと強く願っています. ではでは今回はここまで〜


【追記】2016年1月31日をもって閉館しましたが、同年11月には神奈川県指定重要文化財に指定され、譲渡予定の鶴岡八幡宮側も社会貢献を視野に入れた活用を検討しているようです.


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