大原美術館 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

大原美術館

           
0063:大原美術館 メイン

0063 - 大原美術館
竣工:1930年(本館)/ 1961年(分館)
設計:薬師寺主計(本館)/ 浦辺鎮太郎(分館)
住所:岡山県倉敷市中央1-1-15
選定:DOCOMOMOセレクション(100選:No.66)

皆様どうも. 今回も引き続いて倉敷市内から、西洋建築&近代建築が楽しめる文化施設 大原美術館のご紹介です. 美術館の名称である『大原』は、ここ倉敷の大地主である『大原家』が設立したことが由来で、近年では美術館特集でも多々注目されるアートスポットとしても有名です.
0063:大原美術館 美観地区の右手にある美術館

0063:大原美術館 美術館の看板 奥には西洋風の本館

0063:大原美術館 おとぎ話にでてきそうな本館玄関門

美術館は倉敷川の流れる美観地区の中心部にあり、木々の生い茂ったモジャモジャな建物(ミュージアムショップ)が目印となります. 奥手に見える西洋建築の本館は、美観地区の町並みからはかなり浮いた外観ですが、道路から少しセットバックさせて間に高さ3mほどの石垣を挟むことで存在感をうまく隠している印象です. そしてその石垣の間に設けられた入口は、石垣に這った蔦や苔などの植物も相まってジ◯リさながらのファンタジー感のある幻想的なものに感じます.

創設した大原家は地主だけでなく、数々の大企業の設立に携わった実業家の名家としても名高く「倉敷アイビースクエア」で紹介した倉敷紡績や倉敷絹織(クラレの前身)、倉敷銀行(後の中国銀行)に中国電力の設立等々…倉敷はもとより岡山の経済・産業の発展に貢献しました. それと同時に倉敷の文化貢献の一環として開館したのがこの美術館です. 開館は1930年と日本の美術館の中でも最古参で、日本で初めて西洋・近代美術を展示したといわれるほど歴史のある美術館でもあります.
0063:大原美術館 本館外観①

0063:大原美術館 本館外観②

0063:大原美術館 本館左側に敷設したガラス空間

0063:大原美術館 格式高そうな本館入口扉

それでは入場してチケットを買います. 大原美術館は施設数で述べると4つ存在し、それぞれ「本館」「分館」「工芸・東洋館」とアイビースクエア内にある「児島虎次郎記念館」があります. 美術館では一枚のチケットを購入するだけでこの4館を一度に回ることができます. ただし私設美術館なので大人1300円と若干お高めです. 今回は先の3館を順にご紹介しましょう.

一見すると神殿のような西洋建築の佇まいを有するこちらが美術館の本館です. 中央部分に立つ2本のイオニア式のオーダーに、頭頂部には三角形のペディメントが取り付けられています. 本館左側は浦辺設計の増築によるガラスの展示室が確認でき、外部から一部の展示品を眺めることができます. 敷地の広さに対して間口の狭い細い外観ですが、ペディメントも含めて美観地区の特徴でもある蔵造りのシルエットに準えたのかもしれないなどと…そんな想像もしたりしました.

本館の設計を手掛けたのは岡山県出身の建築家 薬師寺主計(やくしじ かずえ)氏です. 東京帝国大学卒業後、陸軍省の技師として欧米に派遣される傍ら、倉敷紡績の社長だった大原孫三郎氏の依頼で「第一合同銀行倉敷支店」を設計以降、数々の大原氏が主導する関連施設の設計に携わった大原家お抱えの建築家です. 本館は当時の米国公共建築で一般的だった『ボザール様式』で設えられていますが、これは陸軍省以前に師事していた河合浩蔵氏(J.コンドルに師事)や欧米派遣で身につけたものだと思います.
0063:大原美術館 分館外観

0063:大原美術館 分館手前に配置された彫刻作品

0063:大原美術館 分館左手にある波型屋根

0063:大原美術館 造形性溢れる分館入口まわり

0063:大原美術館 城塀のような分館側の敷地境界塀①

0063:大原美術館 城塀のような分館側の敷地境界塀②

本館を見終わって敷地の南側へと足を運ぶと、本館と比較すると圧倒的に建物高の低い分館が現れます. 1961年竣工で、屋根はフラットかつ水平力のあるモダニズム建築な要素もありながら、城壁のような外壁仕上げや波型屋根などの造形が目立ちます. 入口まわりの写真を見ると曲線が強調された柱・梁?・窓台など、当時のRCでもここまで出来たのかと感心させられるほどの感銘を受けました.

この独特な近代建築の様相を示す分館を手掛けたのは建築家 浦辺鎮太郎氏です. 「アイビースクエア」に引き続いての浦辺建築ですが、こちらはそれよりも10年以上前に手掛けた作品で. 時期でいうと「日本工芸館」と同時期となる初期の作品になります. 加えてこの時期は大原氏が社長を務め、倉敷紡績から名称を変更した『倉敷レイヨン(クラレ)』の営繕部長を務めた時期に手掛けたもので、浦辺建築は大原家とも強い縁があったことが伺えます. ちなみにこの分館も建築界から高い評価を受け、DOCOMOMO100選に選定されています.

受付含め内部は撮影禁止ということで残念. 外観から気になった波型屋根の天井仕上げは白色で、同じ波型でも仕上げが黒だった「神奈川近美 鎌倉別館」と比較すると温かみのある展示空間になってました. この館だけに地下展示室もあります. 個人的に面白かったのは分館のある美術館南側の道路を隔てる境界塀で、地面に降りるにつれてカーブしながら壁面には玉石が埋め込まれるこのデザインは、まるで石垣のある城塀のようです. 「日本工芸館」でも同様の城郭デザインが見られたことから、浦辺建築の重要所じゃないかと思います. あくまで個人的にです
0063:大原美術館 工芸館・東洋館入口

0063:大原美術館 工芸館・東洋館外観

0063:大原美術館 妻入りの蔵造りが印象的な工芸館・東洋館出口

最後は工芸・東洋館です. こちらはどちらかといえば倉敷の美観地区の特徴に則った木造蔵造りの建物をモチーフにしているように思えます. 建築的な特徴でいうと、こちらの内装は染色工芸家の芹沢銈介氏が手がけており、木の素材を活かした落ち着きある展示空間が広がっていました. この施設で一番に目立つのは写真にもある赤い土蔵でしょうか、この土蔵がどの展示室だったか忘れたのですが、気になるのでこれだけなぜ赤いのかを誰かご教授願いたいです.

というわけで今回はここまでです. 本館の西洋美術だけでなく、分館の現代アートや工芸・東洋館の工芸美術など、様々なジャンルの鑑賞を一度に楽しめる美術館というのは、全国探しても数少ないでしょう. 町並みだけでなくアートも楽しめる倉敷の美術館に、興味があれば一度足を運んでみてはいかがでしょうか. ではでは今回はここまで〜


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