奈義町現代美術館 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

奈義町現代美術館

           
0087:奈義町現代美術館 メイン

0087 - 奈義町現代美術館
竣工:1994年
設計:磯崎新
住所:岡山県勝田郡奈義町豊沢441

皆様どうも. 先日、日本建築学会から2016年の大賞・作品賞などの受賞者が発表されていました. 注目は「せんだいメディアテーク」等を手がけたプリツカー賞建築家 伊東豊雄氏の大賞受賞です. 設計者としての大賞受賞は2013年の仙田満氏・原広司氏以来3年ぶり、おめでとうございます. 加えて作品賞には「武蔵野プレイス」など3作品、作品選奨には「竹中大工道具館」など12作品が選定され、新しい受賞建築への欲求は高まる一方. いつかは行ってみたいですね〜

さて前回は岡山県津山市でしたので、それに引き続いて岡山県北からもう一件ご紹介します. 舞台は津山市の東隣にある奈義町(なぎちょう)、北に連なる中国山地を越えれば鳥取県という県境に位置する小さな町にある美術館 奈義町現代美術館(Nagi MOCA)をご紹介していきます. じつは海外からも観光客がくるほどの注目を集める美術館ということで、農山村の町立美術館ということで侮ることなかれ. 早速いってみましょ〜
0087:奈義町現代美術館 バス停付近

0087:奈義町現代美術館 見えてくる美術館

0087:奈義町現代美術館 全体外観

0087:奈義町現代美術館 丘の上の置かれた円筒のボリューム

0087:奈義町現代美術館 丘の上から中庭を望む

0087:奈義町現代美術館 円弧状の展示室

美術館のある奈義町へは、JR津山駅から出ている中鉄バスで向かい「奈義町現代美術館前」で下車です(所要時間45分:片道運賃810円). 約6000人が暮らす岡山北東端の町 奈義町の大半は雄大な中国山地を北に望む高原地帯. 町の北にはこの奈義町の名前の由来でもありシンボルである那岐山(なぎさん)がそびえ、自然観光の名所となっています. 美術館は町の中心である奈義町役場の西隣一帯を指すカルチャーゾーンの中心として機能しています.

バス停近くの交差点を北へ進むと美術館が見えてきます. 中でも目につくのが芝の敷かれた小高い丘の上に建つ円筒の建物. 無造作に転がった空き缶のような外観に加え、その大きさは写真に映る子供と比較するとわかるように超巨大です. 丘の上から建物を見渡すと美術館入り口にもなる平屋建ての建物には中庭があり、敷地西側には銀色の金属板で覆われた弓形の建物があるのがわかります. まるで特徴の全く異なる小さい建物が寄せ集まってできたような印象を受けます.

奈義町の文化的シンボルとして整備されたこちらの現代美術館は建築家 磯崎新(いそざき あらた)氏の設計です. 30代までは丹下健三氏の門下生としてプロジェクトに携わり、32歳に独立後は「アートプラザ」「北九州市立美術館」など北九州や地元大分に数多くの名建築を残すポストモダン建築の牽引者として知られています. この美術館で取り入れられた展示方法は、後の美術館にも大きく影響してくるのですが、それに関しては内観で後述します.
0087:奈義町現代美術館 受付カウンター

0087:奈義町現代美術館 受付横のカフェと中庭

0087:奈義町現代美術館 展示室「大地」

0087:奈義町現代美術館 展示室「月」
3枚目:展示室「大地」- 宮脇愛子『うつろひ』
4枚目:展示室「月」- 岡崎和郎『HISASHI-補遺するもの』

それでは館内へ. 美術館入口となる受付やカフェは安藤建築に劣らないRC打ち放しの空間で、煉瓦タイルやアルミ化粧板など多様な素材感のあった外壁から考えると意外です. 先述した通り、この現代美術館の特徴はその展示方法. 3組の現代アーティストに展示空間込みで作品を構想してもらい、それを磯崎氏が建築化させています. 要するに展示室内の空間自体が各作家のアート作品. 『空間=作品』とするこのスタンスを取り入れた美術館は、開館当時は先進的なものでした.

近年この展示スタンスを基に開館して世界から注目を集めるのが、瀬戸内海の直島に浮かぶ安藤忠雄氏の代表作「地中美術館」です. じつは「地中美術館」の展示構想のベースとなったのはこの奈義町の美術館. 当時の館長とベネッセの福武氏が仲の良い間柄だったことから「家プロジェクト」に次ぐ新しい美術館のあり方の基盤として参考にしたといわれています(観光案内所職員談).

それでは展示作品です. カフェに隣接していた中庭の先にある展示室「大地」には美術家 宮脇愛子氏の『うつろい』が展示され、RCで囲まれた照明のない長細い空間に、中庭によって照らされる光と奥に向かう闇のグラデーション・移ろいを体感することができます. 弓形の外観が特徴的だった展示室「月」では岡崎和郎氏の作品が展示された安らぎの空間と解説されていますが、足で床を叩けば何重にも音が反響する『音の空間』と化しているのが面白いポイントです.
0087:奈義町現代美術館 展示室「太陽」入口

0087:奈義町現代美術館 展示室「太陽」①

0087:奈義町現代美術館 展示室「太陽」②

0087:奈義町現代美術館 展示室「太陽」③

そして最後に紹介するのが、丘の上に建っていた円筒型の展示室「太陽」です. アーティストは日本を代表する現代美術家 荒川修作(あらかわ しゅうさく)氏と、そのパートナーであるマドリン・ギンズ氏で、『遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体』が展示されています. 傾いた円筒の中にある階段を上った先はベンチ・シーソー、そして横に広がる「龍安寺」の石庭を180度回転コピーさせて鏡合わせにした空間の支配する幻想的な荒川ワールドが広がっています.

丘の上で傾きながら横たわっていた外観からもわかるように、この空間内は水平ではなく自然光の照らす方向に傾斜があり、坂道内を移動するような感じに. 登る際は前屈みになりながら、下る際は反り状態になりながら移動する、平衡感覚がとりづらい中での鑑賞ですが、こんな鑑賞スタイルが体験できるのもここならでは. ちなみに荒川氏らは他にも岐阜県に「養老天命反転地」という野外作品を手がけているので、そっちにも行ってみたいですね.
0087:奈義町現代美術館 観光案内所棟①

0087:奈義町現代美術館 観光案内所棟②

0087:奈義町現代美術館 休憩スペース①

0087:奈義町現代美術館 休憩スペース②

常設展示室は美術館の北側にあるのですが、南側には企画展が開催できる「町民ギャラリー」、2階に上がればトップライトによる気持ちのいい自然光が差し込む「奈義町立図書館」が整備されています. 美術館の敷地南側では旧レストラン棟と再利用した「奈義町観光案内所」で休憩することも可能. こちらも磯崎さん設計で、100円の飲み物で一服しながら帰りのバスを待つのにも最適. 観光情報も提供しているので、町のことが知りたければ色々教えてくれます.

3組の現代アーティストの作品に対して観覧料一般700円と、作品に対する鑑賞単価の高い美術館ですが、空間とセットで現代アートを体験できるという点に関しては全国でも珍しい美術館. 人生においてもこんな芸術鑑賞ができるのは滅多になく、一見の価値は十分にあります. 岡山市内からは約2時間と若干遠めですが、興味のある人は是非. ではでは今回はここまで〜


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