2015/11/12
佐賀県立博物館

0013 - 佐賀県立博物館
竣工:1970年
設計:高橋てい一+内田祥哉
住所:佐賀県佐賀市城内1-15-23
選定:DOCOMOMOセレクション(100選:No.97)
賞歴:1970年日本建築学会賞
どうも皆様. 今回はこのブログ初の九州建築、佐賀県の中心 佐賀城公園内に立地する佐賀県立博物館です. ブランド総合研究所が公開した「魅力度都道府県ランキング2015」で茨城県に次いでワースト2位という、人気度に関して非常に厳しい状況にある佐賀県ですが、県の中心には昭和モダンな建築が数多く残ります. 今回はその一発目として建築学会賞を受賞したこの博物館をピックアップです.
この博物館を設計したのは、大阪芸大名誉教授の高橋てい一(たかはし ていいち)氏と東京大学名誉教授の内田祥哉(うちだ よしちか)氏です. 高橋氏は設計事務所第一工房を主宰し「大阪芸術大学芸術情報センター 塚本英世記念館」や「群馬県立館林美術館」でも日本芸術院賞・村野藤吾賞を受賞した建築家です. 内田氏は、安田講堂などを始めとする東京大学施設の設計に携わった内田祥三氏の息子であり「九州陶磁文化館」や「実験住宅NEXT21」の設計に携わるだけでなく、隈研吾氏・大江匡氏など後世の建築家育成にも尽力され、建築学会会長も歴任しました.
この説明だけでは両者の関係が読み取れませんが、2人とも『逓信省(ていしんしょう)』に一時期勤務されていたので、その縁ではないかと考えてます. 『逓信省』とは現代のJP(日本郵政)やNTTの前身にあたる国家行政機関の一つで、吉田鉄郎氏や山田守氏、岩本禄氏といったモダニズム建築(wikiには『逓信建築』とあります)の先駆者達が数多く在籍した建築公務員グループ、もっといえば国家公認の組織設計集団です. この集団の建築はあまり見られなくなっていますが、後々お話しできればと思います.




外観は非常に独特で、一番目につくのは中央部から出っ張ったエリアでしょう. 下部分をよく見ると斜めと階段になっているのがわかると思いますが、外部には巨大なキャンティレバー(片持ち梁)となって現れています. ちなみにこの階段スペースは建物の四方にあり、十字形に配置されています. そして博物館の上部分に乗っかる3階を支える柱は意外に細く、張り出した3階部分をわずか数本の柱で支えるという軽々しさ(もといストイックさでしょうか)を強調しているように感じられます.
玄関部から上を見ると、小梁が格子状にビッシリと張り巡らされています. 梁は一辺約2mのプレキャストコンクリート(工場生産)のものを現場で連結させるという、極めてシステマチックな工法で施工されています. 3階を支えるための柱がこの十字梁の間のスペースにあるというのも特徴的で、通常は柱と梁は互いに連結しているものですが、この柱はあえてその間にあることで『柱と梁の分離』というメッセージを唱えているようにみえます.



玄関に入るとすぐそこは先程の四方から伸びている階段のあるエントランスになっており、その上部から三角形に切り抜かれたトップライトから光が差し込んでいました. また展示室に通じる階段は洞窟のような空間に思えるほどに幻想的なものとなっており、70年代というモダニズムの盛況な時代にこのような独創的なデザインのある建築があったことに関心させられました.
しかし一つ気になったのは「エレベーターが見当たらないな」と思っていたら、エントランスの離れにあったことです. しかもこのエレベーターは増築だということで、開館直後はなかったことになります. 展示室だけならマシですが、3階の大展示室へ行くとなると階段の踊り場部分を2カ所も跨ぐという大回りな動線で、車いすの移動が非常にめんどくさいことになってます. バリアフリーが全く浸透していなかったであろう時代ですので仕方がなかったのでしょう.ただし現代でやると大問題ですね…
この博物館を見にでも一度佐賀へ立ち寄ってはいかがでしょうか? それでは今回はここまで~
2016.2.20 写真3枚追加