国立新美術館 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

国立新美術館

           
0009:国立新美術館 メイン

0009 - 国立新美術館
竣工:2007年
設計:黒川紀章
住所:東京都港区六本木7-22-2
賞歴:2008年度BCS賞

今回は東京六本木、六本木ヒルズやミッドタウンから歩いて数分の場所にある国立新美術館です. 元々は「東京都美術館(設計:前川國男)」で行われていた公募展(日展などの公募型美術団体)が、年々増える作品出展数に対して展示できる面積が狭いということで新美術館の構想がうまれ、東京大学生産技術研究所の跡地であるこの場所に建てられました. なのでこの美術館には収蔵品がないため、コレクション展(常設展示)が存在しない珍しい美術館でもあります.

設計したのは前回の村野藤吾氏と同世代の建築家にして、メタボリズム(新陳代謝論)グループの筆頭でもあった黒川紀章(くろかわ きしょう)氏です. 「中銀カプセルタワービル」や「国立民族学博物館」などの著名な建築作品に留まらず、カザフスタン アスタナの都市計画を担当した建築家・都市計画家でもあります. また一方で、2007年の都知事選や参院選に出馬経験のある政治活動家としても広く知られています.
0009:国立新美術館 外観①

0009:国立新美術館 外観②

0009:国立新美術館 傾斜する入口ドア

0009:国立新美術館 風除スペースの照明

美術館の外観をみていきましょう. 美術館の敷地に入ってまず目に飛び込む波打つガラスのカーテンウォール、今にも動きそうな膜のようにも見えます. 夕日でよく見えないかもしれませんが、ライトグリーンのルーバーが横方向に組み込まれています. ガラスを用いてここまで有機的な形態にする必要性はどこにあるのかと疑問に感じる部分も多いですが、そのガラスに反射する六本木の町並みは非常に美しいものでした.

傘置きスペースはまるで宇宙船、風除スペースは円錐型と、所々にガラスをベースとした曲線空間があります. 極めつけは入口の自動ドアまで斜め…この必要性はあったのでしょうか. ちなみに私はこのドアに頭をガンとぶつけてから、このタイプの自動ドアが苦手だったりします…
0009:国立新美術館 内観①

0009:国立新美術館 内観②

0009:国立新美術館 内観③

0009:国立新美術館 3階レストラン

外観に圧倒されながらも中に入ってみると、逆円錐型のボリュームがドーンとパブリックスペースに突き刺さってるではありませんか! よく目を凝らすとその上はカフェやレストランのスペースになっていて、初めて訪れた身としては「なんだこりゃ」といった印象でした. この調子でいけばさぞ展示室も曲線ワールドでは!?…と思いましたが、展示室の壁部分は非常に長ーい直線壁となっていました. 木材を貼付けてるため落ち着きはありますけどね.

ここで平面について解説すると、このガラスの曲線空間は美術館の南側の公共スペースのみで、残りの展示室空間は巨大は直方体の空間が広がっています. 個人的な印象としては、超巨大なハコに曲線の外皮を一面だけ取り付けた美術館です. 「これではガラス版の看板建築ではないか!」と言ってしまっては身も蓋もないので、一体何故このようなファサードの試みがなされたのか、そのルーツを探るためにはもう少し前の作品を見る必要がありそうです.

そもそもこの美術館は黒川氏が存命中に最後に開館した建築です(2007年1月開館 黒川氏は同年10月死去). 中銀などを設計した70年代はユニットタイプやハコ型建築が目立ちますが、晩年になると「福井市美術館」や「福井県立恐竜博物館」「日本看護協会原宿会館」などに曲面のあるのガラスウォールが見られます. 後々見ましたが、アスタナの国際空港にも円形ドームの空間がありますね. やはりこの変化を探るには晩年の書籍を見る必要があるのでしょうか…今後も調査です.

兎にも角にもこのような曲線美の美しい、晩年の黒川ワールドを体感するには絶好の建築だと思うので、六本木に来たら一度訪れてみるのも悪くないと思います. そんなところで今回はここまで〜

2016.2.18. 写真4枚追加


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