



美術館の外観をみていきましょう. 美術館の敷地に入ってまず目に飛び込む波打つガラスのカーテンウォール、今にも動きそうな膜のようにも見えます. 夕日でよく見えないかもしれませんが、ライトグリーンのルーバーが横方向に組み込まれています. ガラスを用いてここまで有機的な形態にする必要性はどこにあるのかと疑問に感じる部分も多いですが、そのガラスに反射する六本木の町並みは非常に美しいものでした.
傘置きスペースはまるで宇宙船、風除スペースは円錐型と、所々にガラスをベースとした曲線空間があります. 極めつけは入口の自動ドアまで斜め…この必要性はあったのでしょうか. ちなみに私はこのドアに頭をガンとぶつけてから、このタイプの自動ドアが苦手だったりします…




外観に圧倒されながらも中に入ってみると、逆円錐型のボリュームがドーンとパブリックスペースに突き刺さってるではありませんか! よく目を凝らすとその上はカフェやレストランのスペースになっていて、初めて訪れた身としては「なんだこりゃ」といった印象でした. この調子でいけばさぞ展示室も曲線ワールドでは!?…と思いましたが、展示室の壁部分は非常に長ーい直線壁となっていました. 木材を貼付けてるため落ち着きはありますけどね.
ここで平面について解説すると、このガラスの曲線空間は美術館の南側の公共スペースのみで、残りの展示室空間は巨大は直方体の空間が広がっています. 個人的な印象としては、超巨大なハコに曲線の外皮を一面だけ取り付けた美術館です. 「これではガラス版の看板建築ではないか!」と言ってしまっては身も蓋もないので、一体何故このようなファサードの試みがなされたのか、そのルーツを探るためにはもう少し前の作品を見る必要がありそうです.
そもそもこの美術館は黒川氏が存命中に最後に開館した建築です
(2007年1月開館 黒川氏は同年10月死去). 中銀などを設計した70年代はユニットタイプやハコ型建築が目立ちますが、晩年になると
「福井市美術館」や「福井県立恐竜博物館」「日本看護協会原宿会館」などに曲面のあるのガラスウォールが見られます. 後々見ましたが、アスタナの国際空港にも円形ドームの空間がありますね. やはりこの変化を探るには晩年の書籍を見る必要があるのでしょうか…今後も調査です.
兎にも角にもこのような曲線美の美しい、晩年の黒川ワールドを体感するには絶好の建築だと思うので、六本木に来たら一度訪れてみるのも悪くないと思います. そんなところで今回はここまで〜
2016.2.18. 写真4枚追加
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