2016/06/02





それではまず外観からです. JR奈良駅東側の駅前広場のシンボルとして親しまれる当館は、高架化以前の『2代目JR奈良駅舎』として約70年にわたってその役割を担いました. 外観は西洋風の重厚なファサードの上部に、寺院建築に見られる九輪(くりん)をつけた方形屋根を乗せたもの. 四弁花などの古代文様の装飾も美しく、寺院の多く残る古都奈良らしさを感じさせる見事な和洋折衷のデザインを有する近代建築です.
1907年の国有化に並んで計画された新駅舎の設計を務めたのは大阪鉄道管理局の技師だった柴田四郎氏と増田誠一氏で、今の案内所となる寺院風の駅舎母体が1909年に完成. 後に本屋が増築され、2代目駅舎は1934年に正式な完成を迎えます. 2003年に高架化事業のため営業を終了し、当初は取り壊しの予定でしたが人々は猛反発. 協議の末に保存が決まり、曳家(ひきや)工法によって北東へ18mほど移動され、観光案内所としてリニューアルしました.
先ほど和洋折衷と申しましたが、コンクリート造によるこの重厚さは「名古屋市庁舎」に代表される『帝冠様式』に近い印象を受けます. といっても帝冠様式のピークは1930年代なので、それより20年も先にできたこの駅舎はその初源的なものの一つではないかと考えてますが、真相はどうでしょう. 個人的に気になったポイントは駅舎裏側の一部タイルがピンク色で、大方横一列に揃っています(写真5枚目). 調べた限りではさっぱりだったので、誰かご教示お願いします.




玄関付近の外観に焦点をあてて撮影しています. 元々駅舎ということもあって手前スペースは十分に広く、列柱部分にも古代文様の職人技がひかります. 庇と壁面が繋がる写真3枚目では、互いの装飾が見事に一体化したように造られており、装飾技術の高さを伺わせます. 玄関部分の照明(写真4枚目)も四角と線が印象的な和風のものがデザインされていました.





それでは館内へ、撮影はOKということでさらっと掲載しています. 中央の空間は天井高の高い広々としたもので、半ドーム状の格天井が非常に美しいです. 壁面は新しく白塗りされ、中央の天井はライトが仕込まれた新しいものとなっていまるものの、当時の雰囲気を極力壊さないように配慮されてるようで感心させられました. 中央の朱色の柱は平城宮跡にある「第1次大極殿正殿」の柱1間分を丸ごと復元したもので、現在はこの下に案内カウンターが設置されていました.
最後に余談として柴田氏と増田氏による建築作品は後にも先にもこの駅舎のみで、その後は互いに別の道を歩むことに. とりわけ増田氏は関門トンネルの設計や戦後東京の都市計画に深く携わったそうです. 当時無名の建築技師たちが手がけた駅舎は、80年経った現在でも奈良市民に愛され続けています. 奈良観光に来た際はぜひ一度訪れてみてください. ではでは今回はここまで〜
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