



県庁舎はJR・近鉄の各駅が位置する奈良市の繁華街エリアと、「東大寺」や「春日大社」に代表される『奈良公園』を東西に結ぶメインストリート 国道369号線の北側沿道に位置しています. 国道を挟んで向かい側には世界遺産「興福寺」が建っており、歩いて奈良公園に向かう場合はこのあたりから奈良公園の鹿を頻繁に見ることになります. 国道沿いからは、一見すると顔にもみえるシンボリックな屋上塔屋
(メイン写真)を確認できます.
道路を渡ると、白く綺麗な木目が転写されたコンクリートが特徴的なピロティ空間が見えてきます. 内部にはベンチが置かれ、モダニズム県庁舎の傑作である
「香川県庁舎」に似た開放的なものとなっています. ピロティのあるこちらの2階建ては「低層棟」と称され、主棟(本館)前の中庭を「ロ」の字で囲うように配置されています. これは『伽藍配置
(がらんはいち)』とよばれ、「法隆寺」や「薬師寺」などの奈良県内の寺院で多く見られる寺院配置を反映したものです.





ピロティを抜けて中庭へとやってきました. 奥には先ほどの塔屋が屋上に建つ主棟(本館)がみえます. フロアごとに外廊下と手摺を配置して水平力が強調されたデザインは、先述した「香川県庁舎」の旧本館を彷彿とさせる外観です. 最上階部分の庇
(写真2・3枚目)は大きく外に張り出し、梁間に8角形、コーナー部に若葉のような図柄を模した開口が設けられ、主棟外壁に綺麗な陰影をつけていました.
近年では『Casa Brutus』の建築特集でも取りあげられる
(紹介リンク)こちらのモダニズム名建築. 設計を手掛けたのは片山光生
(かたやま てるお)氏です. あまり馴染みのない建築家かもしれませんが、今はなき「旧国立競技場」の設計を手掛けた人としても有名で、1958年の競技場完成後は近畿地方建設局の営繕建築家として県庁舎周辺にある
「奈良県立美術館」や
「奈良県文化会館」の設計にも従事し、奈良中央部の公共建築の設計に多大な貢献をもたらしました.






それでは館内へ. 県庁舎は日建設計が行った建物改修を中心にいくつかリニューアルされており、エントランスは木材がふんだんに使用された温かみのある空間
(写真1枚目)になっていました. すでに館内は休憩目的で訪問したとみられる外国人客がちらほらと見受けられ、県民だけでなく観光客も気軽に訪れられる県庁という雰囲気があっていいな〜と感じました. この時期に建てられたモダニズム庁舎というのはそういう点で非常に魅力的です.
受付の人から「屋上にも上がれますよ」という案内をいただいたので、エレベーターで屋上広場へ行くことに. 芝生による緑化とウッドデッキの回遊路が設えられた屋上からは、周囲を一望できる大パノラマを望むことができます. 奈良県は最も高い建造物でも「ホテル日航奈良」の46mほどと、都市部にあるような高層ビルが一切ないのも特徴で、それによる広大な奈良市街を拝めるのも魅力. 加えて観覧料金は無料なので、訪問の際には一度は見ておいて損はないでしょう.





最後は塔屋の中間部分に設けられた「展望スペース」です. こちらの展望スペースには屋上階からさらに2層分の階段を登る必要があり、エレベーターは設置されていませんのでご注意を. 塔屋に巻きつくように設置された外廊下からは更に広大な展望を望むことができ、この位置からならば庇の張り出しの開口や低層棟
(写真3枚目)を見下ろすこともできます. 東側へとまわると、若草山をバックにしたデッサン画を描いている方が二人ほどいて、ここはそういう意味でも絶好の場所として知られているそうです.
奈良は社寺仏閣の建築のイメージが強い県だと思っていましたが、県庁舎がこのようなモダニズム建築だというのは意外でした. 奈良公園に来た際は、ぜひ一度気軽に訪問してみることをお勧めします. ではでは今回はここまで〜
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