




文化会館は県庁舎の北西側に位置し、会館の東隣には同じく片山氏が手掛けた
「奈良県立美術館」があります. 県の文化振興や市民生活の拠点として1968年に竣工したこちらの会館は、1999年に「なら100年会館
(設計:磯崎新)」が完成するまでは県下最大規模のホールを有していました. この会館では片山氏の担当は基本計画にとどまり、その後は日建設計が担当して完成させ、1995年には同じく日建設計がリニューアル工事を手掛けています.
奈良公園の景観を考慮したのか、会館は高くせずに2階建てで収まるように設計され、横の水平力を強調した外観になっています. 上部に大きく張り出したコンクリートの庇に開けられた八角形の開口
(写真2枚目)は「奈良県庁舎」の屋上庇と同じ仕様のもの. しかしながら庇の梁の下部分にもう一つ斗栱
(ときょう)に似た短い小梁をつけていたり
(写真2・3枚目)と、梁の意匠に特段凝ったデザインに感じます.




こちらは県立美術館がある東側の外観です. 文化会館の敷地は北に進むごとに下り坂となるため、途中から地下フロアが出現し、その部分はピロティ空間になっていました
(写真2枚目). こちら側を見てもやはり梁の意匠を強く意識させる設え
(写真3枚目)になっています. 県庁舎が伽藍配置などの大きいスケールで『奈良らしさ』を表現したのであれば、こちらは日本様式的な細かい意匠でアプローチをかけたというのが私個人の感想です.





では内観です. 正面玄関に入ってすぐのエントランスホール
(写真1・2枚目)は2層吹き抜けの広々とした空間で、奥に設置された木のベンチでは外国人観光客が足を休めていました. ホールの更に奥は中庭
(写真3枚目)となっており、エントランスに気持ちの良い緑の光が差し込みます. 以前訪れた時はレストランがあったのですが、どうやら数年前に閉店し、今は弁当販売なども行う交流サロン
(写真4枚目)として使われていました. メインとなる「国際ホール」は残念ながら公演中だったようで、内部には入れませんでした.
東側の入口から入った場合は、中央寄せの堂々とした階段
(写真5枚目)がドアを入ってすぐの場所に配置されています. 今の時代ならばこういう階段は端に寄せることが多いように思えるので、この堂々感はある意味新鮮に感じます. 高層化や建て替えをすることなく元の状態を保持している文化会館ですが、近年ここをはじめとした周辺整備計画の策定を日建設計が担当する
(ニュースリンク)ということで、近々大幅な改修が実施される可能性もありそうです. 奈良にあるモダニズム感満載のホール建築、ぜひ一度. では今回はここまで〜
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