


写真1枚目は地下にある奈良駅コンコースの写真です. 1914年の開業当初は大阪上本町までを結ぶ地上駅で、駅を出ればすぐに国道360号線上の併用軌道を走っていました. しかし時代とともに交通量が拡大し、併用軌道が市内交通の渋滞の原因となることを受け、近鉄は『大阪万博』の開催までに奈良駅を地下化することを決定. 万博の前年である1969年に現在の地下駅舎が完成し、奈良市街地の交通問題の解消に多大な貢献をもたらしました.
その翌年の1970年に、国道の南側沿道に建てられたのがこちらの駅ビル. 東西方向に長い非常にシンプルな直方体のボリュームの上に、『近鉄』という看板が取り付けられた小さなハコが宙に浮いているかのように重なっています. 外壁は目地が整えられたパネル張りで、開口の並びによって『0』の数字が連続するように見えるユニークはファサードです. しかし奈良公園に向く東側のファサードだけは近年のリニューアルで今風のガラス張りに変更されてました.



写真1枚目は東入口を撮影したものです. 地上フロアはピロティに、内部の仕切りはガラス張りとなってるので西側の入口まで視線が通り抜けます. 上の直方体を支える柱
(写真2枚目)は、十字に分かれて上を支える力強さを表現したデザインだったのですが、リニューアルによってフロア全体の天井が下に降りてしまったため、今では照明の裏に隠れてしまっているのがなんとも惜しい気持ちです. しかし西側入口にはその形が残っている柱
(写真3枚目)が残っていました.




それでは館内へ入りましょう. 内装にも大幅なリニューアルが行われているため、坂倉氏が手掛けたオリジナルの部分は殆ど消失してしまい、残っているのは当時からのフロア構成のみになります. こちらは近鉄の駅ビルですが
「あべのハルカス」のように『近鉄百貨店』は入居せず
(奈良店があるのはお隣の大和西大寺駅)、 レストランやメガネショップなどの店舗が入居する以外は空きテナントが目立ちます. かつては上の階に「奈良ホテル」の別館が入っていた時期もありました.
建物の構成として興味深いのが2階〜3階の部分で、このフロアだけ階段がフロアの半分だけ昇るスキップフロアとなっています. そのためか写真3枚目では階段の先に3階のサイゼリアがあるのですが、エスカレーターはそのまま4階に昇るため足腰の弱い人は辿り着くのが難しかったり、『中3階』がないためか階段の前後のフロア案内がどちらも3階だったり
(写真4枚目)と不思議な要素が盛りだくさんでした. 今なおも奈良に残る坂倉氏の駅ビル建築、興味がある方は是非一度. ではでは今回はここまで〜
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