



実際に歩いたルート順で、まずは琵琶湖疏水の通る西側から撮影した写真を掲載しています. 建物上部には、ほぼ同年に前川氏が手掛けた「東京文化会館」でもみられる大きくめくり上がった庇
(写真3枚目など)が、会館全体をぐるっと廻
(めぐ)るように張り出しています. 焦げ茶調の煉瓦タイルは竣工当時から残るオリジナルのもの. 「U」の字に象られた手すりのあるテラスや小梁
(写真3枚目)は、東京の会館以上に日本的な雰囲気を取り入れた繊細さのある外観です.
外壁の色が他と異なって明るい部分
(写真1枚目 奥)は今回の改修で増備されたフライタワーで、10階建てマンションの高さに相当するなどの理由からメディアに取り上げられました. 恐らくは景観的な問題で物議が生じたものだと思いますが、建物自体がヨコに大きく広いのであまり圧迫感はなく、オリジナルの外装に近い色合いが使われているため、際立って変という感じはしませんでした.





こちらは「京都市美術館」などがある東側からの外観写真です. 会館は二条通りの並木に隠れるほどの低いボリュームで建てられ、その道沿いは『スターバックスコーヒー』のオープンカフェとして家具類が配備され、非常に多くの訪問客で賑わっていました. 建物南側の中央付近は非常に開放的なピロティ空間
(写真4枚目)となっており、このロームシアターの玄関にもなっている象徴的な空間です.
京都会館は戦後復興の真っ只中で、京都の新しい文化拠点を作る目的で結成された『市民会館建設促進懇話会』の結成を皮切りに、厳しい財政状況の中で4万人もの著名と多額の寄付を獲得して建設が決定しました. 1957年の使命コンペでは前川國男氏・村野藤吾氏、そして日建設計工務の尾崎久助氏の3名による指名コンペで前川氏に決定. 1960年3月末に竣工します. 坂倉氏の
「神奈川県立近代美術館」もそうですが、戦後復興による文化施設には名作が多い印象です.






ピロティを抜けた先は中庭です. 東側はガラス張りのファサードがL字に囲む空間
(写真1枚目)に刷新されながらも、西側は既存の外観を残しています. 黒・茶・白の3によるユニークな中庭舗装
(写真2枚目)は、竣工当初の御影石舗装へ復元されたものです. 写真3枚目は2階の入口へ至る階段なのですが、よく見ると手すりがガラスの内部まで連続しています. 実はこれも今回の改修の一要素なのですが、ここでもう少し改修に関してご紹介しようと思います.
そもそも改修の背景には老朽化に加え、使用頻度の激減という問題がありました. 特にホール部分は関係者などから強い要望が出されるほど酷い状況で、建物2階の野外テラスも水勾配が確保されてず腐食と汚染が激しかったようです. そこで改修を担当した香山壽夫
(こうやま ひさお)氏はホール部分を抜本的に変更し、テラス部分に屋根とガラス壁をつけて内部化する
(これが写真3枚目)ことで、仏堂建築の『裳階
(もこし)』を現代的に捉えた共通のロビー空間を新しくつくるなど、オリジナルの雰囲気を壊さない新しい会館『ロームシアター京都』を実現させました.





それでは内部へ入っていきます. 会館はピロティを境目に主に2つに分けられ、ガラス張りとなっている部分はホール機能を備えた「ホールエリア」、オリジナルの外観が残る部分は「パークプラザ」となり、後者には『スターバックス』や『蔦屋書店』が入店していますが撮影は禁止のようでした. 従って内部の紹介は「ホールエリア」が中心となります.
写真の前半
(写真1・2枚目)は、先ほど述べたテラス部分を内部化させたことでできた南側プロムナードです. 南北それぞれにあるホールを建物内でつなぐ役割も担っており、壁面には改修前は外壁だった煉瓦タイルが仕様され、実際に触ったりもできます. 後半
(写真3〜5枚目)は先ほどのエリアから続く北側のプロムナードですが、ここではピロティ・中庭とこの廊下を介することで会館南側をはしる二条通と北側をはしる冷泉通を一直線に結ぶ自由通路へと改良されました.





そしてこちらは2階から上のフロアの内観写真. 2階テラス部分
(写真1・2枚目)は「U」の字断面が特徴的な手摺もそのままに内部化され、木質天井の新しい色合いも加わったロビー空間に生まれ変わっていました. 2階の一部は吹き抜けとなって3階フロアと繋がり、階段を昇ったすぐ横にはこの会館も模型も展示されていました
(写真5枚目).
今回はここまでの紹介です. 刷新されたホール空間なども見たかったですが、当日は大規模なイベントで全ホール貸切ということで見学は叶いませんでした. 近代建築の保存や改修となると色々と難しい問題が出てくると思いますが、個人的には真新しさは影を潜め、元々の雰囲気やキャラクターが強く残る素晴らしいものだったと思います. ではでは今回はここまで〜
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