



それでは外観から. 二条通と琵琶湖疏水に並行して走る南北道路の交差点の角地に建つ美術館は、独立壁が所々に目立つモダニズム寄りな形態にチョコレートのような色合いの外壁が特徴で、見た目はコンパクトながらも強烈な個性を感じさせます. 最上階の屋根
(写真2枚目)はざっと10mは柱なしで飛んでるのではと思うほど、浮遊感を感じさせる大屋根となっています. 外壁をよく見ると塗り壁
(写真4枚目)で、当時の職人がやったと思われるくし引模様がいい質感を出していました.
この美術館は大阪泉大津を拠点に毛織物で大成した実業家 細見亮市
(細見古香庵とも)氏と、それ以後の子孫三代によって蒐集された東洋古美術のコレクション品を展示する目的で開館した私立美術館です. 蒐集品には京都に縁の深い琳派や伊藤若冲などの江戸絵画や仏画などが多く、とりわけ琳派に関してはその蒐集品の量質の高さから『琳派美術館』という異名がついているそうです
(wiki談).



それでは中に入っていきましょう. 入口は琵琶湖疏水に向く東側に設けられていますが、下手をすると倉庫口と間違えてしまいそうな風貌です. ミュージアムカフェは入口右手の階段を下り、上り階段の案内には『古香庵』と亮市氏の号を冠した茶室があるということで、後にご紹介します. 左手の受付でチケットを買うのですが、こちらのチケットはシールタイプのもので、服に貼り付けて入館するという珍しいタイプのものした.




1番目の展示室を抜けた先は下へと降りる階段、そして横に目を向けると地下2階まで掘り下げられたサンクンガーデンが広がっていました. 展示室は1階から地下2階までに一部屋ずつ配置され、鑑賞者はアトリウム脇につけられた階段を降りて次の展示室に向かうというダイナミックな動線になっています. 外観では小さな美術館に見えましたが、中がこのような空間だったのにはビックリです. 最下層にはジャズやライブが開催されるカフェが併設され、談笑する人で賑わいを見せていました. ただ上に覆われたテント屋根
(写真4枚目)の汚れが気になったりもしました.
設計を手掛けたのは
「南海ビルディング」の改修などを手掛けた大江匡氏率いる『プランテック』で、同氏を代表する美術館建築です. とあるサイトでは『京町屋』をモチーフにしたとアナウンスされています. ただそれは外観的なものではなく、外からは見えない掘り下げられたサンクンで時にはジャズやライブで賑わいをみせるその空間は、町屋の『オク(奥)』ならぬ『ソコ(底)』の空間として組み替えた現代版町屋空間だなと個人的に解釈しています.





サンクンの空間に夢中になっていると、3階茶室の開放時間があと少しということですぐに上の階へ. 途中の2階から先程のサンクンを見下ろしてみると
(写真2枚目)、カフェの賑わいが奥まで見えていていい感じです. 階段手すりに掲げられた案内の通りに上ると、数寄屋建築の名匠 中村外二棟梁の遺作として知られる茶室『古香庵』
(写真4枚目)に到着です. 外観でいうと10m以上張り出した大屋根の真下にこの茶室があります.
屋根を支える柱が道路側に一切ないので、手前はロームシアターやみやこメッセを、奥には緑の美しい東山の蓮峰を一望できる気持ちのいい屋上空間でした. 屋根の裏部分に相当する茶室の屋上も全面木板張り
(写真5枚目)というのも茶室の空間をいっそう気持ちよくさせている気がしました. 外観を見た当初は京都っぽくないな〜と思ってましたが、中に入ると実際面白い要素が多くて飽きませんでした. 興味が湧いた方は是非. ではでは今回はここまで〜
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