2016/06/22





美術館は岡崎公園の敷地内、平安神宮へと至る南北道路『神宮道』の東側沿道に建っています. ちなみに神宮道を挟んで向かい側には「京都国立近代美術館」と「京都府立図書館」が立地しています. 外観は明るいブラウンで彩られた煉瓦タイルが一面に張られ、幾何模様が混じる装飾(写真4枚目 中央)がかっこいいです. 中央には反りの美しい瓦屋根(写真4枚目 上)を正面が妻入りになるように乗っかり、これが『帝冠様式』であることを強く印象付けています.
美術館は1928年に昭和天皇の即位の礼(御大礼)が京都で行われたことを記念して計画され、1933年に完成しました. 当初はこの経緯から『大礼記念京都美術館』と呼ばれ、公立美術館としては「東京都美術館(設計:岡田信一郎)」に次いで2番目、創建当時から残るものとしては日本最古のものです. 敗戦後は米軍の駐留施設として接収され、1952年の解除時に今の名前に改称しました. どうやら地下には米軍が実際に使用していた名残を示すペイントが残っているようです.






外観をぐるっとまわってみます. 装飾も良いのですが、随所に長方形の開口ができていたり、コーナー部分が微妙に跳ね上がったコーニス(写真1枚目)もかっこいい. 北側へ回り込むと車止めスペース付きの玄関(写真2・3枚目)を発見. こちらは皇室などの来賓用でしょうか、金色に彩られた玄関装飾(写真4枚目)が綺麗です. さらに奥へ進めば正面玄関の裏側となる東玄関(写真5・6枚目)です. とても立派な煙突が設けられていますが何に使っているのでしょうか、気になるところです.
美術館の設計を担当したのは大正期から昭和初期を中心に活躍した建築家 前田健二郎(まえだ けんじろう)氏です. 初期は逓信省に所属し、戦前に数多くのコンペに入選したことで有名となりますが、大幅修正された「大阪市立美術館」や「震災記念堂」など実現に至らなかったコンペ1等案も数多くあります. 1等案として大幅な修正もなく完成したこちらは、前田氏の代表作であると同時に当時の主流だった『帝冠様式』の代表例としても名高い作品です.






美術館の敷地東側には池のある見事な日本庭園(写真1枚目)が整備されています. 見る場所によっては水面に映る美術館と庭園の風景をセットで眺めることもできます(記事トップ写真). さらに奥には同じタイル張りの小さな建物があります. こちらは「事務所棟」と呼ばれているようですが、これも前田氏の設計でしょうか. こちらは玄関の柱の装飾(写真4枚目)や裏口の階段(写真5・6枚目)のデザインが興味深かったです.






それでは館内へ入っていきます. 正面アーケード部の金色装飾や黒色の鉄板(写真2枚目)は他の部分と比べて真新しい印象を受けますが、刷新したんでしょうかね. 訪問当日は公募展のみの開催だったようで、特別展がない限りは基本自由に入館できます. 展示室はマップ(写真3枚目)の通り、各階の両翼部ある「ロ」の字型に連結した展示室をグルッと回遊する動線になっています.
館内は主要部分殆どに石材が使われた豪華絢爛な空間. エントランスは2階へ繋がる大階段が中央に配置されており、吹き抜けが階段部分にしかない分、入口から見たときの階段の存在感がすごいです. 階段両脇の照明が京都の灯篭っぽいデザインなのがユニークです. 幅が広いためか、階段中央にも手すり(写真5枚目)があるのですが、構成している鉄があまりにも細いため今にもポッキリ折れそうなギリギリ感があります. 床タイル(写真6枚目)も濃い茶色のドットが規則正しく並ぶように張られているところに個人的にはグッときます.





こちらは階段を昇った2階のエントランスフロアです. 1階は階段が特徴的な空間でしたが、2階のポイントは白の格天井の間に花柄に近いステンドグラスが嵌められた天井(写真1・2枚目)が見どころ. 吊り下げられた照明も非常に凝っています. 吹き抜け部分の手すりには丸が重なった幾何的なデザイン(写真3枚目). 西側には『応接室』と上に書かれた締め切りの扉(写真4・5枚目)があり、ぶどう柄の彫刻意匠が見事なものでした.
当日は2階の無料公募展しか入りませんでしたが、2階展示室は壁・天井が白一色の明るい空間. 天井が非常に高く、壁面上部に付けられた開口(ハイサイドライト)から光を取り込み、夕方にもかかわらず展示室を明るく照らす気持ちの良い展示空間でした.
そんな美術館ですが、開館から80年以上経つということで用途面の再整備計画が進行中です. 2015年8月には京都市が再整備のプロポーザルとして『青木淳・西澤徹夫設計共同体』を選定し、その計画指針(リンク)も公開されています. 内容を見るといささか大胆なものもありますが、今後の美術館がどうなるのかは今後のお楽しみになりそうです. オリジナルが拝めるのもあと数年でしょう. 気になる方は是非一度、ではでは今回はここまで〜
コメント
2016/06/22 21:21 by 坂木 URL 編集
Re: タイトルなし
コメントありがとうございます.『大礼記念』ということもあって、京都市も相当に気合を入れた格調高さだと思います.
2016/06/23 22:49 by MATŌ URL 編集