



名画の庭へは地下鉄烏丸線北山駅の3番出口すぐ東に隣接しています
(写真1枚目 手前が地下鉄出入口). 『庭』と聞くと緑の生い茂るガーデンのような印象をもつ方もいますが、こちらは見ての通り、全体がコンクリートやガラスによって構成されたグレーの箱庭という印象. 奥にはわずかに府立大学や植物園の緑が見えており、このわずかな緑との対比によって、よりコンクリートのグレー感が引き立っています.
設計を手掛けたのは世界が認めるコンクリートの魔術師 安藤忠雄氏です. 安藤氏のコンクリート建築といえば「住吉の長屋」に「光の教会」など多数ありますが、京都のこちらはあまり話題にあがらない印象. 庭園は南に進むにつれて地下を1フロアずつ段々状に掘り下げており、鑑賞動線はその掘削空間内に配置された名画を様々な角度から鑑賞できます. 安藤氏の建築で注目したいのは太陽による陰影なのですが、曇の多い天候だったのが妙に悔やまれます.




それでは庭内へ. 写真は自由に撮ってOKということで内部写真も掲載しています. 入場口からすぐの池の底にはクロード・モネの「睡蓮・朝」、廊下を歩いて右側に見えてくるのは高山寺にある国宝「鳥獣人物戯画」、さらに奥へ進んで左手を見れば高さ8.8m, 横幅4.3mに及ぶミケランジェロの大作「最後の審判」がほぼ原寸大で展示されており、これら世界名画をの一般鑑賞料はたったの100円という驚きの安さ. 陶板とはいえ経営状況を心配してしまいます.
入館してしばらくは一方通行の廊下を進むことになります. 途中には打ち放しの大壁に斜めから突き刺さる大梁
(写真2枚目)や、南端の大滝に向かって鋭い鋭角でピンと突き出したスペース
(写真3枚目)など、まるで庭園も作品であるといわんばかりのインパクトの大きい空間です. 『建築も鑑賞作品だ』というフレーズは
「地中美術館」や
「李禹煥美術館」に通ずるものがありますが、これはその初源的なものではないかと個人的には思います.





スロープの途中で水が滝のように落ちる様子を至近距離でみれる場所がありました
(写真1枚目). 近づいてみると滝によって水がミスト状に散布されており、夏場でもある程度涼しく鑑賞できそうです. しかし少し気になったのは、御影石2タイル分だけわずかに落ち込んだ廊下の縁部分
(写真2枚目)です. これによってガラス手摺ギリギリまで近寄って鑑賞しようとすると、足が窪みに引っかかって前のめりになり、池に落ちそうな感じになるので少しヒヤッとします.
スロープを降りれば地下1階フロアです. ここからは一方通行の動線ではなくなり、出口に進む廊下と地下2階へ降りる階段との分かれ道に分岐します. 地下一階フロアの西側には、水の上に掲げられたレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」
(トップ写真)を鑑賞でき、先ほどの「最後の審判」を中段の位置から鑑賞できます. 個人的にはミケランジェロの大壁画と、奥に見える森林と水の滝を見られる写真4枚目の撮影スポットはお気に入りです.






階段
(写真1・2枚目)を降りて地下2階へと到着です. ちなみに地下2階へは階段しかなさそうなので、車椅子での行き来は非常に厳しいです. このフロアまでくればようやく「最後の審判」を上から下まで鑑賞できるのですが、あまりに巨大なためカメラに収まりきっていません
(写真3枚目). 地下1階から分岐する出口通路でも、ルノアールやゴッホの陶板画を鑑賞することができます. 中でもルノアールの「テラスにて」
(写真6枚目)にあるように、鉄骨の額縁の外側にコンクリートの開口枠があるような仕掛けというのは、通常の絵画鑑賞では表現できない立体感があって面白い工夫でした.
通常の美術館のように部屋を壁伝いに廻るのではなく、野外を総合的に鑑賞空間化させて劇的にみせるというのは非常に大胆かつユニークなものだと個人的には思います. 北山にお越しの際はぜひ、ではでは今回はここまで〜
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