




それでは外観からです. 入母屋や唐破風屋根が組み合わさった美しい伝統的な和風の外観. 目の前の道路を町営バスが走るため、この建物を見たという観光客は大勢いると思いますが、これが町の役場だと一発でわかる人はどれだけいるでしょうか. 頂上部分の屋根を非対称にしたデザインは京都の国宝建築「飛雲閣」がモチーフ. 屋根に使用される青銅は全て三菱
(現材の三菱マテリアル直島精錬所)から寄付されたもので、企業城下町としての直島を象徴するものです.
写真2〜4枚目は正面以外の3方向の外観を撮影したもの. 見てもわかるとおり開口窓がすごいことになっています. 普通の四角窓もあれば八角形タイプのもの、ハートもあれば虫籠窓のデザインも、切妻屋根の出窓がボンと飛び出るところもあれば船の錨
(いかり)のような窓もあったりと、ゴチャゴチャというよりはカオスという表現がしっくりきます. コラージュデザインを建築に応用するとこういう感じになるのですね.





前庭に設えられた日本庭園
(写真1枚目)を横手にみながら館内へと入っていきます. しかしながら前庭の感じを見ても、役場というよりは旅館に入っていくようなアプローチです. 市民窓口のある1階エントランスホールは階高が高く確保された開放的な空間で、天井のトップライトから差し込む緩やかな光がホール全体を照らします.
ツアー日が土曜だったこともあり、市民窓口
(写真4枚目)はお休み. 天井に吊るされる円形の照明は石井氏のデザインでしょうか、近未来チックなデザインがかっこいいです. ホール脇にある丸窓にはめ込まれたステンドグラス
(写真5枚目)からは『直島を大きく美しい島へ』という当時の制作者の熱い思いが感じ取れます. 今もご存命ならば、世界が認めるアートの島である今の直島をどう思ってるのでしょうか.





ここからツアー限定の2階より上のフロアを見ていきます. 写真2枚目に写る日の出(もしくは日の入り)をデザインしたような特徴的な欄間の先は食堂スペース. 各部屋への扉の枠上部の形状
(写真3枚目)が、部屋ごとに全て違うデザインとなっているところもユニークです. 3階へは正面外観の両端にある階段
(写真4・5枚目)をあがっていきました. 十字格子が特徴的だった両脇の階段は、内部から見るとこんな感じにみえるんですね〜





カーペットの敷かれた3階フロアでは靴を脱ぎ、直島町政の中心である「議場」へとやってきました. 天井は書院造でみられる折り上げ格天井とし、開口は町家建築に見られる虫籠窓のデザインにしたりと、日本の伝統意匠を惜しげなく使用しています. 木の家具一式に青のカーペット敷きで、天井中央のドーナツ型照明は黄色に塗られていたりと色の使い方が斬新ですが、全体的には落ち着きのある議場に適した空間になっていました.
議場の後方には階段で数段上ったカーペット敷きのスペース
(写真5枚目)が設けられていますが、実はこれ「傍聴席」です. 議会をみる一般の人が自由な体勢で傍聴できるように考えられた仕掛けで、実際に床に座ると議場全体が見渡せるように目線の高さが考えられていました. 今でも実際に使われていると面白いのですが、実際はどうなのでしょうね.







さてここからはツアー限定公開となる屋上応接間「町政を考える望楼」へと向かいます. こちらの応接間はガイドの人でさえ入ったことが少ないという文字通りのレアな場所. 一旦屋上にでてダクトの上を跨ぎ
(写真1枚目)、さらに通路の狭そうな小さな扉
(写真2・3枚目)に入っていくというすごい場所を通っていきます. これでは役場の職員であっても気軽には行けませんね.
幅のせまい階段をのぼってようやく「町政を考える望楼」へ到着です. 1辺6m四方程度というツアー客の人数では若干狭い応接間ですが、円や台形に象られた窓の外からは直島本村地区の眺望
(写真7枚目)を一望できます. 自分も何度も直島には来ていますが、このアングルから本村地区を見たことは一度もなかったので感動です. ちなみに
「直島ホール」のトップ写真もこの応接室から撮影したものです. 三宅町長もこの本村の眺めを見ながら、島の将来に思いを馳せていたんでしょうかね〜
この展望室もそうですが、普段は見ることのできない直島を観れるというのは、この『直島建築+The Naoshima Plan』建築ツアーの一つのポイントだと思いますし、個人的にもかなり貴重な見学ツアーとなりました. あなたも是非参加してみてください. もちろん通常でも1階は観覧できますのでお気軽に. ではでは今回はここまで〜
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瀬戸内建築マップ - 岡山・香川の瀬戸内海を中心とした建築マップ
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