◆ 前半エリア:直島文教地区
町営バス「幼児学園前」バス停から始まる見学ツアー前半のエリアは『直島文教地区』です. 直島町長を36年も勤め上げた三宅親連
(みやけ しんれん)氏が提案した『文教地区構想』に則って、島の中心であるこの地域に幼稚園・保育園から中学校までの教育施設が集中的に建てられました.
これらの建物全体の設計に携わったのが石井和紘氏で、石井氏の手がけたこれらの施設は『直島建築』という名で全国的に有名となります. 各校庭を自由に行き来できる幼少中一体の広域計画がなされ、各施設はこの地域一帯の景観をテーマにした外観や空間がつくられていたりと、直島の子供たちが豊かな学校生活を送り、島外の人に誇れるような学校づくりを目指しました.
・直島幼児学園 <保育園・幼稚園>(石井和紘+難波和彦) まず初めに訪問したのがこちらの施設. 幼稚園と保育園が一体として運営する幼保一元化を全国に先駆けて導入させたもので、地区構想当時から直島町が新しい育児サービスに積極的だったことがわかります. 幼稚園と保育園の間には中庭が配置されており、園舎と裏山、そして手前の道路に囲まれた中庭は、南北を山に挟まれた『峡谷』のような周辺景観をモチーフとさせているようです.
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「直島幼児学園」】

保育園の正門

園舎や裏山に囲まれた中庭

幼稚園の外観
・直島小学校(石井和紘)つぎに見学したのは町立の小学校. こちらは文教地区構想で初めて完成した建築であり、石井和紘氏にとっても処女作となった作品です. 真っ白な宇宙船という表現がしっくりくるインパクトのある外観で、『山の斜面』に沿うように建物全体が緩やかな斜面を形成しているのもポイント. ツアーでは、文教地区で唯一内観見学ができる建物です. こういう場所で学べる子供達がすごく羨ましく思うほど素晴らしい空間でした.
【*個別記事はこちら→
「直島小学校」】

小学校の外観

構内にある中庭

最上階の図書室のトップライト

自然光に照らされた廊下
・直島中学校(石井和紘)文教地区最後の見学スポットは地区西端に立つ中学校. 建物は「本校舎」と「体育館・武道館」にわかれており、町民スポーツ施設としての利用も兼ねる観点から体育館が先に完成した珍しいケースの中学校です. 周辺地形の『等高線』に沿うように折れ曲がったギザギザのラインや、メタボリズム建築を彷彿とさせるカプセル状の外壁など、注視すると面白い発見が外観だけでもいっぱいあるユニークなものでした.
【*個別記事はこちら→
「直島中学校」】

中学校本校舎の外観

切り抜かれた本校舎の柱

武道館入口の青銅屋根

体育館・武道館のピロティ(ポルティコ)
◆ 後半エリア:本村地区
文教地区から徒歩で移動して、ツアー後半の舞台となる本村地区にやってきました. 昔この一帯を統治した旗本である高原氏が築城した『直島城』を中心とする城下町が築かれたこともあり、白漆喰と焼板の美しい街並みが多く残ります. 現在では
「家プロジェクト」や
「ANDO MUSEUM」があるエリアとしても人気です. このツアーでは見学できる3つの建物全てで内観見学ができます.
・直島町役場(石井和紘)竜宮城にも喩えられる独特な和風の外観をした直島町の役場は、石井氏が手がけた直島建築の中でも代表的な作品です. 屋根は「飛雲閣」をモチーフとしたアシンメトリーな屋根、ハート型や虫籠窓型などの開口がコラージュデザインのように配置された独特の外観から『ポストモダン建築の旗手』とも称されています. このツアーでは3階の「議場」、そして最上展望室となる「町政を考える望楼」が特別に見学できます.
【*個別記事はこちら→
「直島町役場」】

正面外観

1階の窓口ホール

3階の「議場」

屋上展望室となる「町政を考える望楼」
・直島ホール(三分一博志)2015年に完成した直島町の町民会館です. 設計は「犬島精錬所美術館」を手がけた三分一博志氏です. 風が南北に抜ける大きな風穴が特徴的なヒノキの大屋根、内部も白漆喰で美しく仕上げられたドーム天井が魅力的です. 全体的にヒノキの香りが充満していて、内部にいるだけでも癒されます. ツアーでは芸術祭でも立ち入れない舞台の裏側部分にあたる畳敷きの小ホールと舞台内部も観覧できました.
【*個別記事はこちら→
「直島ホール」】

ホール外観

桟敷きが設けられた苔庭のある池

ホール内観

特別見学できた南ホール

特別見学できた舞台内部
・またべえ(三分一博志)最後に案内されたのは三分一氏が手がけた「またべえ」と称された個人住宅. 庭一面の苔は縁側にまでつづき、保水性の高い苔によってクールダウンされた冷たい空気が建物内を通り抜けるというエコロジーな仕掛けが施されています. 実際建物内はヒンヤリとしていて風邪かスーッと抜けていくのを感じました. 障子貼りの天井も美しい. ツアーではお茶と茶菓子が召しあがれる贅沢なものでした.
【*個人住宅のため個別記事はありません】

外観と苔庭

苔庭を室内から

室内では茶道を嗜むことも

苔庭とは反対側の縁側

ツアーで提供された茶菓子
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というわけで、2時間という時間があっという間に感じられた建築ツアーもこれにて終了となります. 安藤氏の建築が目移りしやすい直島建築ですが、その直島を安藤氏以前の時代から支えた石井建築、そして直島の新しい風となるであろう三分一建築という新旧の直島建築を直に見学することができて大満足でした. 見学費も良心的で、お茶会含めてこの料金設定は大丈夫なのかと心配してしまいました.
こちらのツアーは先述した通り、夏会期にも開催されます. 日程は芸術祭期間中の毎週土曜日
(ただし7/18・8/20を除く) . 定員は各回10名で、先着順での応募となります. 春会期は13時スタートでしたが、夏会期は9時15分に変更されていますので注意してください. 更に詳しい内容は
『直島建築+The Naoshima Plan』公式ページでご確認ください.
安藤建築とは一味違った直島建築の魅力を、あなた自身の目で確かめられる数少ないチャンスです. それでは今回はここまで〜
※ ツアー内で撮影された写真は、ガイドと担当しました直島町役場職員様からの許可を得て掲載しています. 直島町・福武財団の皆様のご厚意に深く感謝申し上げます.
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