



文化会館は「香川県庁舎」の東側を走る県道173号線を北に歩いてすぐ東側に見えてくる、深みのあるグリーンの屋根が目印です. 急勾配でストンと下りる青銅葺きの屋根
(写真2・3枚目)、城郭の石垣のように丹念に美しく並べられた石張りのファサード
(写真2枚目)など特徴的な外観をしているにも関わらす、その佇まいは凄くヒッソリとした雰囲気があります.
県庁舎の7年後に完成したこちらの文化会館は、建築家 大江宏
(おおえ ひろし)氏によって手掛けられました. 父は「日光東照宮」の修復を手がけた技師 大江新太郎氏で、県庁舎を設計した丹下氏とは東京帝大時代の同級生です. この文化会館と、芸術院賞を受賞した「丸亀高等学校武道館」を筆頭に、県内多数の高等学校の基本設計に携わっており、同県に多数の作品を残しています.





現在この会館は「香川県立ミュージアム」の分館として、県民向けのギャラリーやホール設備を備えた文化施設として使用されています. 写真2枚目の案内板をみると、当館は青銅屋根の低層部分とビルタイプの高層棟が隣接した構成になっており、上のフロアは『香川県漆芸研究所』の研究スペースとして利用されています. ちなみに私が実際に訪れた時は高層棟の存在を知らなかったため、低層棟だけをみて想像以上にちっちゃいな〜などと呟いてました.
入口玄関部分
(写真1枚目)は本物の木材で構成されており、風除スペースに入れば自動ドアの両端は木の十字格子
(写真3・5枚目)、天井は木の格天井に和風の照明
(写真4枚目)と、本物の和の木材がふんだんに使われています. しかし横の壁
(写真3枚目)は縦ルーバー状になったコンクリート壁になっているので、コンクリートと木の空間が混在したような空間になっています. 高松でこういうタイプの空間をみるのは珍しいです.





玄関に入ってすぐ目の前にあるのが「陶芸ホール」とよばれる、赤いカーペットが敷かれた吹き抜けのホール空間. コンクリートの柱や合わせ梁が強調され、木のルーバーがびっしりと張り巡らされた天井
(写真4枚目)があることから、形は違えど県庁舎の空間と似た雰囲気を感じますが、2階へ登る階段が木造でできていたり
(写真2枚目)と、ここでもコンクリートと木の空間が混在するような空間構成です.
これは大江氏の作風の根幹にある『混在併存』が反映されているといわれています. 混在併存とは『様々なものを切り棄てるのではなく、並立しなければものごとは成立しない
(一部簡略化)』というもので、コンクリートと木という互いに異質な素材が、時に対立しながらも共存する建築を目指したと大江氏は語っています. この文化会館は、そんな大江氏の理念を明確に示した作品というわけです.



陶芸ホールから少し横へ逸れた事務受付手前のスペース
(写真1枚目)は、高層棟に位置する部分となるため、コンクリート単独の空間にガラッと変わりますが、天井に並んだ小梁のコンクリート表面には綺麗な木目がしっかりとついており
(写真2枚目)、こういう部分に関しては当時のモダニズムを踏襲したデザインになっているのはイイなという感じがします. 研究所の表札ともいい感じでマッチしてますね
(写真3枚目).
早朝ということで解放してるのは1階しかなかったのは残念ですが、丹下氏の作風とは一味違った併存のデザインということで、県庁舎とはまた違った香川の公共建築の魅力を堪能できました. 大江氏に関しては五十嵐太郎氏が執筆したコラム
(URLリンク ※途中まで観覧無料)も見応えがありますので是非. というわけで今回はここまで〜
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瀬戸内建築マップ - 岡山・香川の瀬戸内海を中心とした建築マップ
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