




それでは外観からいきましょう. 道路からも見えるコンクリート造の建物は、1988年に建てられた「無量寿堂」と呼ばれる納骨堂です. まるで大きな壁を何層も重ねて出来上がったような、垂直力が強調された独特な形態
(写真2枚目). 道路側のファサード
(写真3枚目)はギザギザのラインを描きながら途中から金網になっている
(写真4枚目)のが特徴です. 他のサイトでは『商業施設のようだ』と書いていましたが、まさにそう見えても仕方のない見た目です.
設計を手掛けたのは芝浦工業大学の名誉教授でもある建築家 相田武文
(あいだ たけふみ)氏です. 「積木の家」という一連の住宅建築シリーズを手掛けたことでも有名ですが、個人的に相田氏を知るきっかけが「東京都戦没者霊園」や「念誓寺本堂」などの寺院・慰霊施設だったので、そのイメージが強いです. 先ほどのギザギザのファサードは、竣工当時に納骨堂の奥にあった本堂の屋根の形をシルエット化したものらしいですが、その本堂は建て替えられてしまいました.






偶然お寺の関係者の方が納骨堂から降りてきたので、撮影許可を頼んだら快くOKしてくれました. 納骨堂横側の外観
(写真1枚目)をみると、壁を重ねたような垂直力際立つファサードがよくわかります. 寺院ということもあってか、一部のラインには木の格子戸をはめ込んでいます. 1階は完全なピロティ空間
(写真2枚目)になっていて、納骨堂が綺麗に浮いていると感じられるのもいいです.
納骨堂は3階建てで、上階にある納骨室へは中央の階段と昇ります. 階段部分の床は鋼材を格子状に組んだグレーチング仕上げ
(写真4枚目)、天井は切妻のガラス屋根
(写真5枚目)になっています. コンクリートは全体的に綺麗な仕上げなのですが、垂直力に伸びる壁だけはビシャン仕上げによる粗めの表面
(写真6枚目 扉両側に突き出た壁)に仕上げられており、ここでも垂直力がガッツリ強調されるものになっているのが印象的です.




そしてこちらは納骨堂の奥にある現在の本堂です. 段々状に積み重なった瓦、その中央に開けられたガラスの入口. 奥に行くほど上がる段々瓦に呼応するように、ガラス扉の奥に仏像が鎮座する光景
(写真2枚目)も神秘的です. 裏手に回ると裏側全面がガラス張り
(写真4枚目)になっています. 初めて写真で見たときは、これが本堂かと驚きました. こちらは納骨堂竣工の13年後となる2000年に建て替えられたもので、屋根の瓦も建替え前の本堂にあった瓦を再利用しています.




外観にも驚きながら中に入ると、そこには全面ガラスの手前中央に鎮座する御本尊
(写真1枚目)のお姿が. 寺院の本尊の後側は大体壁の印象が強かったので、ガラスからの光が後光のようになったように菩薩様を拝むというのは初めての体験でした. 写真の最中に関係者のお婆ちゃんが入ってきたのですが、どうやらあと数日早く来ていればガラス奥の桜をバックに御本尊を拝めたということで、それは残念だったと若干悔やんだりも.
もう一つお婆ちゃんが教えてくださったのは、段々状になった天井中央に並んだ花の絵
(写真4枚目). これも元々は建替え前の本堂の天井絵だったものをそのまま飾っており、現代的な寺院ながらも旧本堂の意匠を混ぜ込んだ神秘的な本堂空間にワクワクしっぱなしでした. 教えてくださった寺院の皆様には感謝です. 坂出に来た際は人工土地を併せて見てみてほしい建築です. ではでは今回はここまで〜
◆ この記事に関連する建築マップ
・
瀬戸内建築マップ - 岡山・香川の瀬戸内海を中心とした建築マップ
- 関連記事
-
コメント