


県庁舎があるのは岡山城のある『烏城公園』の南、東西にのびる『県庁通り』と旭川の川沿いをはしる『水之手筋』に挟まれるように建っています. 元々はこの場所から北西にある天神町という場所に旧庁舎がありましたが、戦災により焼失. 1953年に実施された指名コンペで前川氏の案が当選し、4年後の1957年に竣工しました. ちなみに旧庁舎の跡地には現在、同じく前川氏が設計した「天神山文化プラザ」が建っています.
県庁敷地の北側に建つ大きい建物が、1957年から現役の「本館」です. 県庁通りに並行するように東西に長い巨大なキューブという印象が強い建物です. 地上9階建てで、中央の入口ゾーン
(写真3枚目)は3階レベルで飛び出した空中デッキ
(写真2枚目)で周囲が囲まれています. よく見ると3階までの低層部は柱を強調するようなファサードになっており、ピロティではないものの、ファサードの違う高層階のボリュームを柱で支え上げている感じがでています.



この本館で注目すべきは、高層階のファサードです. リズミカルに配置された窓サッシを埋めるように取り付けられているのは、亀甲形に象られたスチール板
(写真2枚目)で、色合いも黒・茶・赤と様々. 個人的にはこういうファサードにすごく魅かれます.
訪問当日は気づかなかったのですが、じつはこの本館は1991年に東側を全く同じファサードで増築しているとのことで、一説では窓のないライン
(写真3枚目)から東側がその増築部だと考えられています. もしかしたらスチール板の色のバリエーションもこの頃から出てきたものかもしれません.





それでは本館中央のゲートから、中庭へと進んでいきます. 高層部の真下のスペース
(写真1枚目)はいかにもピロティって感じがします. ピロティの奥にある中庭
(写真2・3枚目)は金色の丸いオブジェと中心とした緑の空間になっていました. 本館以外は3〜4階の建物が多いため、空を大きく見渡せるようになっているのも気持ちがいいです.
他に目立ったデザインを述べれば、先ほども説明した3階フロアのデッキに使用されていた四角い穴あきブロック
(写真4枚目). これ実は、前川氏がこの3年前に完成させた「神奈川県立図書館・音楽堂」にも大量に使用され、当時の前川氏のデザインを象徴するもののひとつです. 写真5枚目の円柱形のコンクリート柱も、当時はつくるのが非常に難しかったことでしょう.



県庁の北西交差点から西通りを南下すると、1971年に建てられた「西庁舎」
(写真1・2枚目)と、1972年に建てられた「南庁舎」
(写真3枚目)が見えてきます. これらを明確に前川氏が手掛けたと述べたサイトは見つけられなかったのですが、西庁舎のファサードを見てるとこれらも前川氏の設計ではないかと思います. コンクリート単独のデザインもいいですね. ちなみに南館は2016年度中に取り壊し予定です.
今回の紹介はここまでです. 訪問当時はなぜこんないい建築なのに、選定歴や表彰歴がないのかと疑問だったので、今年度のDOCOMOMO選定は本当にめでたいです. 加えて興味深いのは、瀬戸内海の向こうには
「香川県庁舎」があることでしょう. 当時のモダニズムを牽引した丹下氏の香川県庁と前川氏の岡山県庁、海の向こう側同士でお互いにすごい県庁舎つくったんだな〜と驚きを隠せません. 岡山のモダニズム県庁舎にぜひ一度. ではでは今回はここまで〜
◆ この記事に関連する建築マップ
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瀬戸内建築マップ - 岡山・香川の瀬戸内海を中心とした建築マップ
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