




祈念館は平和記念公園内、「平和記念資料館」でも解説した資料館、平和の灯、原爆ドームを結ぶ一直線の軸から少し東にずれた場所にあります. 写真1枚目はメインの入口から祈念館を撮影したもので、アプローチを受ける壁には、爆心地の方角に開けられた大きな開口があります. その開口の先には水が滴り落ちるガラス製のモニュメント. 下部分が窪んで示されているのは『8時15分』、原子爆弾の投下時刻です. その周辺には、工事の際に発見された被爆砕石が敷かれています.
この円形の壁に沿うように設置された階段
(写真3枚目)を降りて、祈念館の入口へと向かいます. 円形の壁を反時計回りに進むというのは『時代を過去にすすむ』という意味合いを含んでいます. 死没者追悼と平和祈念の空間として整備されたこの施設は、建物のほぼ全てが地中化されており、入口空間はサンクンガーデンとなっています. 設計は「平和記念資料館」も手がけた丹下健三氏で、資料館の設計からおよそ半世紀が経とうとする88歳
(祈念館開館時)の時に手掛けました.






それでは地下フロアのエントランス
(写真1枚目)から入館します. 入館料は無料. 撮影は「情報展示コーナー」のスペース以外は基本的にOKということでした. エントランスから1フロア下がった祈念空間へ、緩やかに下るスロープを降りていきます. ここでも反時計回りという『時間の逆行』が意図されています.
そして祈念空間の中心
(写真3枚目)へ到着しました. 空間の周囲を囲む壁面レリーフに描かれるのは、爆心地付近から撮影された被災直後の風景を360°パノラマで表現したもの. レリーフには、1945年までの推定死者数である約14万人と同数の陶板が使用されています. 中央には『8時15分』が象られた水盤
(写真4枚目)が配置され、天井からは地上にあったガラスのモニュメントを通して落ちた光
(写真5枚目)が空間中央に差し込みます.
50年もの歳月を経て、都市スケールでの祈りの空間となった平和記念公園に新しくできる祈念館ということで、丹下氏らが空間の鍵としたのが『1945年8月6日 午前8時15分』でした. 原爆が落ちたその瞬間を心に刻み、死没者への追悼と平和への祈念をする. 360°パノラマのレリーフもあって、被爆直後の広島の中で願うような感覚でした.
撮影禁止である「情報展示コーナー」では、パネルを見ながらすすり泣く高齢の女性の方がいて、70年経ってもこの悲しみは癒えない人がいる現実があることに、心の奥底がズキズキするような感じになりました. 「平和記念資料館」が資料を通して伝える空間ならば、この祈念館は当時のヒロシマを感覚的に訴えるような空間です. 平和公園に来た際は、この祈念館で各々が感じてみることをお薦めします. では今回はここまでです.
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