



写真ではアストラムラインの城北駅から、アパートへと近づいていく際に撮影した写真を載せています. 1枚目は近隣のバスセンターから遠めに撮影したものですが、これでもアパート全体の半分程しか写っていないため、その規模のデカさがわかります. 初めて訪問した際は、あまりの広大さとアパートの多さ故に、どこまでが高層アパートなのかを必死で探っていました.
この集合住宅は、戦後この地区一帯で発生した『原爆スラム』(詳しい内容は
「ひろしま美術館」にて)を解消する目的で計画されたスラム・クリアランス事業として建設された大規模再開発アパートです. 設計を手掛けたのは「千葉県立中央図書館」や
「坂出人工土地」を手掛けた大高正人氏で、着工から最終的な竣工まで9年の歳月をかけた一大プロジェクトでした.
このアパートの特徴の一つとして挙げられるのは『くの字』の平面が連続する、屏風状に展開された住棟配置です. これは写真3枚目に写された、防災配置図の黒色部分をみるとよくわかります. これはどの住居棟も、南側から照らされる太陽が均等に差し込むように工夫されたもので、ある一定の間隔をあけて直線状の住棟がザッと並ぶ、当時の団地計画からすれば非常に革新的なものでした.




こちらではアパートの住棟を地上フロアから撮影したものを掲載しています. 高い部分の住棟ならば20階以上もある巨大なアパートですが、1階フロアはピロティ空間となっており、奥の風景や公園の緑
(写真2枚目)が通ることで圧迫感が低減されています. 何気にむき出しの配管
(写真3枚目)がカッコよかったです. 写真4枚目はエレベーターと周辺に配置された階段で構成されたコア部分で、外からの見た目がなんとなくカッコいい造形と感じさせるものでした.






それではエレベーターを囲むようにグルッと配置された狭い階段
(写真1枚目)をのぼって上の居住フロアへ. アパートは外からのセキュリティがないので誰でも入れますが、当然ながら現役のアパートですのでモラルを守った上で見学しましょう.
アパートは偶数階に共用廊下を配置し、その上の奇数階を住戸だけのフロアとした2層一体型の住戸ユニットで構成されており、上の奇数階へは壁に隠れた専用の階段
(写真6枚目 下部分の壁の奥)を利用します. 奇数階には廊下が存在しないため住戸を広く設定でき、2層吹抜けとなったエレベーターホールは天井高の高い開放的な空間
(写真2枚目)になっています. ちなみに屋上には庭園もあるのですが、こちらはイベントでない限りは基本施錠されているようでした.




アパートからでて、敷地中央にある『基町ショッピングセンター』
(写真1枚目)と称された商店街へやってきました. ここはアーケードの屋根が整備された一般的な商店街ではなく、屋上部に緑が植えられた人工地盤
(写真2枚目)の真下にあるのがポイント. 地盤の真下に商店街を整備するというのは、大高氏がこのアパートの数年前に手掛けた「坂出人工土地」でもみられた手法です. しかしながら現在はシャッター街化しておりかなり寂しい感じになっていました
(写真4枚目) .
戦後の高度成長後期に建てられたため、多少時代感を感じさせる高層住宅ですが、その仕掛けや空間は今でも十分斬新と思えてしまうほど魅力あるものでした. 大高氏はこの設計以降、本格的に都市計画にシフトしたということで、大高氏が自ら目指した住まいの都市像の完成形がこれだったのではないかと個人的には考えたりもしています. ただし居住者の高齢化も進行し、とりわけ奇数階への階段アクセスが問題化しているということで、今後の対策が課題となりそうです. 興味のある方はぜひ、ではでは今回はここまで〜
※ こちらは現役の住宅です. 見学の際は住民のプライバシーを考え、十分な配慮を心がけてください.※Googlemapでは敷地中心にある「基町ショッピングセンター」を表示しています
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