アイランドシティ中央公園「ぐりんぐりん」 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

アイランドシティ中央公園「ぐりんぐりん」

           
0015:ぐりんぐりん メイン

0015 - アイランドシティ中央公園中核施設「ぐりんぐりん」
竣工:2005年
設計:伊藤豊雄
住所:福岡県福岡市東区香椎照葉4アイランドシティ中央公園

前回から佐賀・長崎と九州建築を紹介していますが、今回は更にもう一つ、九州地方最大の都市 福岡県福岡市の中心部から少し北へ、博多湾に浮かぶ人工島アイランドシティの中央公園内にあります. これは建物なのか丘なのか、一枚布を捻らせたような形をしているその建物の名はぐりんぐりんと、これまた珍妙なネーミングとインパクト満載の建物です. (初めて建築雑誌で見たときは、目が点になったほど強烈なものでした…)

外観からどのような施設かを検討するのは非常に難しく思われますが、これは福岡市が管理する『花と緑をテーマにした体験学習施設』です. こう述べるとややこしいのですが、要するに植物園と考えてもらって差し支えないです. 館内には熱帯魚や亜熱帯の気候で育つ植物が植えられており、大人100円で館内を自由に見学できます.
0015:ぐりんぐりん 外観①

0015:ぐりんぐりん 外観②

それでは早速その場所へ、電車を利用する場合はJR・西鉄香椎(かしい)駅ですが、そこから徒歩だとかなり歩くので、疲れやすい人は西鉄バスがベターです. この建物の特徴は、鉄筋コンクリート構成された自由局面の大屋根でしょう. これはシェル構造とも呼ばれており、最大スパン約190mの大空間を厚さ40cmのコンクリートの『布』で覆います. 公園側に向けてはは子供が登れそうなほどに緩やかな勾配になっており、本来の公園の地面と施設の丘がシームレス(連続しているよう)に見えます.

設計したのは2013年に建築界のノーベル賞でもあるプリツカー賞を受賞した建築家 伊藤豊雄(いとう とよお)氏です. モダニズム建築期以後の建築界をリードする『野武士』と呼ばれる建築家世代の筆頭として謳われた建築家でもあります. 伊藤氏の建築というのはビルディングタイプなれど、曲線によるユニークなデザインを取り入れた挑戦的な建築を数多く手掛けるのが特徴であり魅力で、一例ですと鉄骨のチューブを垂直方向に挿入した「せんだいメディアテーク[2001年]」や、この施設同様にシェルを内包した「台中メトロポリタンオペラハウス[2014年]」などがあります.
0015:ぐりんぐりん 内観①

0015:ぐりんぐりん 内観②

それではいざ内部へ. 建物内にいたのは私達訪問メンバーだけで、全体的に閑散としてました. アクセスの悪さが原因でしょうか…賑やかさはありません. 空間のスペースとしては北、中央、南と3つの大型スペースを歩行用のデッキでスパイラル状に巡回するという動線計画になっています. 各スペースの天井には採光のできる大型のガラスドームが設けられ、それは自然換気の機能を備えた環境ユニットにもなっているようです.
0015:ぐりんぐりん 屋外の様子

0015:ぐりんぐりん 展示模型

デッキを伝って屋根上へ登ると、屋上緑化されたシェルの屋根を間近に見ることができ、中央公園全体を見渡すことができます. 屋根上からは「シーマークビル」(設計:北山孝二郎)や「アイランドタワースカイクラブ」(設計:竹中工務店+司設計)、「織物のフォリー」(設計:松岡恭子)を見ることができます. 一通り巡回した後のフロアには、模型が展示と図面がされていました. このアングルから見ると曲線のうねり具合や色合いがとても奇麗で美しく見えますね.

これは訪問後に調べたことですが、どうもこの地区の開発は上手くいっていないという実情で、人工島という環境破壊問題や市のPR不足もあり、ぐりんぐりん以外に観光スポットがなく、この伊藤建築が一人歩きしている状況にあるということです. 屋上から周辺を見渡しましたが、この公園以外は殆ど集合住宅やタワーマンションで、利用するのも島民だけではないでしょうか. これでは外部の客はなかなか来ないでしょう…

とはいいつつも、RCシェルを実践的に扱うという意味で挑戦的なものであり、これが後の台中のオペラハウスへの応用に繋がると推測すれば、伊藤氏にとっては避けては通れない建築であるという風に私は思えます.そんな感じで今回はここまで〜

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Author:的野 峻一(MATŌ)
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