ギャラリー小さい芽 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

ギャラリー小さい芽

           
0151:ギャラリー小さい芽 メイン

0151 - ギャラリー小さい芽
竣工:1996年
設計:安藤忠雄
住所:兵庫県西宮市千歳町6-20

皆様どうも. 今回は阪神間エリアの建築特集3件目、舞台は西宮から夙川へと移っていきます. 芦屋と並ぶ高給住宅街の一つとしても有名である夙川は、西宮市南西を流れる河川が名前の由来とされています. 厳密な地名としての夙川は存在しませんが、阪急やJRが駅名として用いていることから、 エリアとしての認知度も高いようです.

このエリアで今回ご紹介するのがギャラリー小さい芽です. 設計を手掛けたのはコンクリート建築で世界を駆ける安藤忠雄氏. 美術館などの文化施設も数多く手がける安藤氏ですが、今回の建物はそんな安藤建築の中でも珍しい、小規模のギャラリー建築ということで非常に気になっていました. それではまいりましょう.
0151:ギャラリー小さい芽 県道82号線

0151:ギャラリー小さい芽 道路東側から見る

0151:ギャラリー小さい芽 正面外観①

0151:ギャラリー小さい芽 正面外観②

0151:ギャラリー小さい芽 正面外観③

0151:ギャラリー小さい芽 西側外観

ギャラリーは阪急夙川駅とJRさくら夙川駅の各駅から、ちょうど中間のエリアにある住宅街に建っています. 大通りを頼りに歩く場合は、県道82号線(写真1枚目)の寿町交差点を西へ歩いてすぐと覚えておきましょう. ちなみにこの県道82号線を北に向かってしばらく歩くと、コルビュジエの弟子のひとりである吉阪隆正氏の名作「浦邸」がみえてきます.

そしてギャラリーに到着. 大きさが一般的な住宅程度の規模しかないため、周辺の住宅に隠れるようにひっそりと建っています. 隣の住宅が取り壊されて更地となっていたので、全体を広く撮影出来るいいタイミングでの訪問でした. 外観は「住吉の長屋」や「靭公園の住宅」などの明解でスッキリしたものとは対照的に、コンクリート壁が複雑に配されているのが印象的. 2階の入口スペースを覆うように折れ曲がったコンクリート壁と、それが視覚的に空へと通り抜ける額縁のような仕掛け(写真5枚目)が個人的には好きです.

このギャラリーが出来るキッカケとなったのが1995年の阪神・淡路大震災. 当時古い家が多く残るこの地区一帯はガレキの山となってしまったそうです. この震災で家が倒壊してしまった現在のオーナー夫婦が、夙川の芸術文化復興に寄与できるギャラリーをと安藤氏に依頼したことで完成したのがこちらのギャラリー. 『小さい芽』というネーミングは、安藤氏が『このギャラリーが大きく育つように』と命名したものだそうです.
0151:ギャラリー小さい芽 1階入口

0151:ギャラリー小さい芽 アプローチ横の植栽

0151:ギャラリー小さい芽 1階ギャラリー①

0151:ギャラリー小さい芽 1階ギャラリー②

0151:ギャラリー小さい芽 1階ギャラリーの木製床・テーブル

0151:ギャラリー小さい芽 空調設備にも木製ルーバー

それではギャラリー1階の内部へ. 展覧会はおよそ2日〜1週間程度の小規模のものが月に数回程度実施されるスタンスで、冬や夏には長期休館もあるので、建築訪問の際はギャラリーHPURLの展覧会スケジュールをしっかり確認しましょう. また展覧会によっては、1階ギャラリーだけという部分開館のケースが一般的のようで、必ず全ギャラリースペースが空いているというわけではないということも注意です.

ギャラリーを管理しているオーナーさん?に、人は写さないという条件で撮影許可をもらって撮影したものを数枚ほど. ギャラリーは壁・天井の3方向がコンクリートという安藤氏らしい空間ですが、床や家具(写真5・6枚目)には表面処理された木材が使われており、家のような温かみが感じられるのがいいところ. ハンガーを引っ掛けるパーツ(写真4枚目)は、コンクリートの施工で生じるセパ穴のボルトを活用したものとなっているのもユニークでした.
0151:ギャラリー小さい芽 2階入口

0151:ギャラリー小さい芽 2階ギャラリー①

0151:ギャラリー小さい芽 2階ギャラリー②

0151:ギャラリー小さい芽 3階ギャラリー①

0151:ギャラリー小さい芽 3階ギャラリー②

当日は1階のみ開館だったのですが、建築好きという話を伝えると特別に上の階のギャラリーを開けてもらえることに.
こちらは2階と3階が一体となった2フロア構成のギャラリーのため、天井高の高い広々さを感じさせる空間. ギャラリーの上部分には、西側に大きく開けられた連続窓(写真5枚目)がありますが、残念ながらブラインドが下ろされた状態に. 展覧会のある日にはどういう空間になるのか、個人的には非常に気になるギャラリー空間でした.

住宅規模の安藤作品をあまり見学することがない私なのですが、ヒューマンスケールの仕掛けを散りばめたような濃密なギャラリー空間に驚かされっぱなしで、とても面白い探訪となりました. 気さくで人柄の良いオーナーさんには、この場で改めて感謝を述させていただきたいと思います. 本当にありがとうございます. 夙川の隠れたギャラリー建築へ、興味のある方は是非一度. ではでは今回はここまで〜


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