




当日は
「ヨドコウ迎賓館」から芦屋川沿いに南下したため、市民センターも北側から撮影した外観を1枚目に掲載しています. 芦屋川で驚いたのは川底の浅さと広い川幅で、子供が楽しそうに水浴びしているのが印象的でした. そんな川沿いの建物でひときわ目立つ巨大なコンクリートの建物が、市民センターのメインとなる「ルナ・ホール」です.
多角形断面のボリュームに直方体のデザインが外付けされた、『要塞』にも例えられそうな強烈なインパクト. 小さいパーツによる杉板型枠によって造成された打ち放しのコンクリ外壁
(写真4枚目)は、現代のツルツルしたものと比較すると無骨な感じがしますが、パーツを最小化したことによってできたムラのある表面も、人間が手掛けた感があって面白いです. 壁面の一部
(写真5枚目)には蔦が茂っています.
市民センターは公共ホールと会議室などを備えた市民会館の複合施設として1964年に「本館」が建設されたのが始まりです. その後に「ルナ・ホール」が1970年に完成し、芦屋市の中心的な文化拠点として親しまれています. 設計は坂倉建築研究所大阪事務所で、『docomomo japan』では西澤文隆
(にしざわ ふみたか)氏と同市出身の山崎泰孝
(やまさき やすたか)氏のお二方が主な設計者と紹介されています. 2008年には『DOCOMOMO JAPAN選定 日本におけるモダン・ムーブメントの建築』に追加選定されています.




「ルナ・ホール」の南に隣接する「本館」は、縦方向にドンと鎮座するホールとは対照的に、こちらは水平が強調されたデザインが、芦屋川沿い約70mほどグーンと伸びているのが特長. ホール等のようなゴテゴテの雰囲気はなく、周囲の高木に上手い具合に隠れていたり
(写真2・3枚目)、南東側の一部は石垣になっていたり
(写真4枚目)と、これはこれで隠れ要塞感が出ている気がします. 同じく坂倉建築研究所大阪事務所が手掛けた「別棟」が本館に隣接しており、各棟は空中回廊
(写真4・5枚目)で繋がっています.



こちらは東側にある「別棟」
(写真1枚目)です. 本館・ホール等に調和するように外壁の杉板型枠の打ち放しは一緒ですが、北から南に向かって全体的に傾斜をかけているのが特徴. 窓も大小様々なタイプを組み合わせた非常にポップな印象を受けます. 鳩よけの針ガードがジャキンと飛び出しており、別の意味で敵を寄せ付けないなと思ったりもしました.




許可をいただいて館内へ. 「ルナ・ホール」は当日、市民コンサート中だったため、ホワイエのみの見学でした. そこはまさに『ルナ(月)』の名のごとく、黒一色の空間に暖色照明の淡い光が照らす月面世界のような幻想的な空間です. そして月面の凸凹を表現したようなオリジナルの家具
(写真2・3枚目)が見られたりと、とてもワクワクするデザインです.







そしてこちらは「本館」の内部の様子. 隙間のトップライトをみると、コンクリート壁面の僅かなムラによって生じる細かい陰影
(写真2枚目)ができているのが好きです. 本館廊下
(写真3枚目以降)は、床は明るめの青で、壁は軽やかさのある白、そして天井は落ち着きのある深い藍色ブルーと、要塞の佇まいからは想像し得なかった色味豊かな空間があったことに驚きました. 白壁には様々な大きさの展示開口
(写真4・5枚目)が設けられ、各部屋の入口
(写真6枚目)は白壁が折れ曲がって引き込むようになっており、訪れる人を楽しませてくれるようなユニークな仕掛けがいっぱいです. わざわざ天井を折り曲げて、窓を大きくする仕掛け
(写真7枚目)も細かいと思います.



空中回廊を渡って「別棟」を見学. 青と白のカラーが印象的だった本館に対し、こちらは壁・床・天井に至るまでほぼ全てが真っ黄色
(写真1枚目). 照明も相まってとても眩しいです. 途中階にはトップライト付きの吹き抜けスペース
(写真2枚目)もありました. 要塞風の外観に当初は圧倒されましたが、色彩感の豊かな内部とのギャップに心惹かれる建築探訪でした. 市民センターへはJR・阪急の各駅が最寄りとなります、阪神ですと少し遠いのでご注意ください. それでは.
【お詫び 2022.2.24.】
この記事の掲載当初は設計者を「坂倉準三氏」と表記していました. コメントにて設計者の指摘があり、2022年2月に再調査を行いました. 『関西のモダニズム建築 1920年代~60年代、空間にあらわれた合理・抽象(監修:石田潤一郎)』によると、山崎氏のスケッチを坂倉氏と西澤氏がチェックし、ほとんど変更することなく進められたとの記載がありました. 情報収集の結果、設計者を「坂倉建築研究所大阪事務所」と確認・訂正し、坂倉準三氏の作品として紹介していた文章を総合的に見直しました. 長らく誤った情報を記載してしまいましたことを、深くお詫び申し上げます. また、この建築情報について深い学びを得る機会をいただけたことにコメント者様、Twitterにて情報提供いただいた皆様に感謝申し上げます.
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コメント
2022/02/16 12:32 by URL 編集
設計者のご指摘ありがとうございます.
2022/02/17 00:24 by 的野 峻一(MATŌ) URL 編集