2016/09/30




市民会館があるのはJR・名鉄岐阜駅から北に1.6キロほど離れた場所にあり、JR岐阜駅を起点として岐阜市街を南北に走る『金華橋通り』と称される官公庁通り沿いに建っています. 駅から徒歩で向かうと大体25〜30分ほどで、各駅からの路線バスを利用すれば5分ほどで到着です. 市民会館のすぐ北は交差点(写真4枚目)となり、市民会館と対角となる角地には、伊東豊雄氏設計の「みんなの森 ぎふメディアコスモス」があります.
道路沿いは水平力が際立った白いボリュームが伸び、その奥側にはモザイック柄が特徴的な円形ホール(写真2枚目)が見えています. 円形ホールはかなり奥に配置されているためか、道路の街路樹にすっぽりと隠れるような感じになっており、特徴的な外観を有する一方で、街路樹や歩道橋の影にひっそりと隠れて建っているような印象を受けました.





では外観を細かく見ていきましょう. まずはホールの外周に展開されたピロティ部分です. 白一色で彩られ、円形ホールの外周を巡るように配置されたこの部分で注目すべきは、やはり外壁と窓のデザインでしょう. 中央が窪んで立体的な造形がなされた外壁が連続する格好良さ、下の角2つが丸くなった可愛い感じの窓のデザインがとてもいい. ピロティの天井もフラットではなく、中央の柱に収束するにつれて斜めになっている(写真4枚目)のもポイントです.
市民会館は2013年の春に耐震補強工事を実施し、ピロティの所々には大型のブレース(写真5枚目)が追加され、外壁はかなり綺麗になったそうです. ブレースは非常にゴツく存在感があり、一部のものは写真のようにギャラリーの入口を塞ぐように取り付けられているものまであります. ここまでブレースがドンと出てくるのも異様な光景ですが、取り壊さずに使おうとすると止む無しか〜と思ったりも.




そしてこちらが市民会館のメインとなる円形ホールの外観. 真っ白な外周のボリュームとは対照的な荒々しさのあるこちらの外壁は、窯の温度のバラツキから乗じる様々な色のタイルを使用した『大仏タイル』と呼ばれる仕上げ. 当時の坂倉氏が好んで使用していたらしく、既に解体されてしまった「シオノギ製薬中央研究所」には青色ベースの大仏タイルが使用されていました. 近くで見るとすごくいい感じのモザイクタイルです.






訪問当日はホール含めた館内は締め切られており、2階フロアにつながる北東角の入口だけが開いていたため、その部分だけの館内の撮影のほどを事務局に伝えたところ「ホールもご覧になりますか?」という嬉しいお返事が. どうやら最近完成した「ぎふメディアコスモス」とセットで遠方からいらっしゃる建築関係の方も多いようで、会館側も見学に関してはかなりオープンな感じのご様子. お言葉に甘えさせていただき、いざ館内へ突入です.
写真前半の3枚は玄関入口から入ってすぐの「ホールロビー」の様子. 円形ホールと外周にあった白いピロティの隙間に位置する部分で、天井には立体トラスの青屋根が掛けられています. ロビー中央にあるRCのカウンター(写真2枚目)が個人的には好きなデザイン. ホール側からピロティ部分を見ると、ここにも外と同様の開口(写真3枚目)が設けられていますが、耐震補強工事の際に壁で塞いでしまったため、現在は見た目が真っ黒になっています.
そして待望の円形ホール「大ホール」とご対面. 今時の劇場建築と比較すると、舞台から座席最後尾までの奥行きが短い、とてもコンパクトな円形ホールという印象を受けます. 客席もそうなら舞台も全体的に狭く、大規模なコンサートには不向きそうです. 設計当時は円形平面は音響的によろしくないといわれていましたが、客席前部分の側壁(写真6枚目)を屏風折状のHP面にすることで拡散反射させたりして、音響対策を行ったようです. 肌色と黒のコントラストが非常にいい感じのホールですが、現代の使い勝手としては不評が多いというのがちょっと悲しいですね.




今度は大ホールの2階フロアへ. 星のように散り散りに配置された天井(写真1枚目)は、やはり見ていてワクワクします. 壁面に配置されている陶板(写真2枚目)は、姉妹都市である米国シンシナティ市から贈呈されたものです. 2階席は全体的に傾斜が急で、1階を見下ろすと結構怖いと感じてしまうほどです. フロア最前の手すり(写真4枚目)も腰ほどの高さしかないのも不安. こればっかりはそのままではなく、手摺を上に追加してもよかったのではと思います.






ホール見学後は、ピロティの上の階にある会議室・展示ギャラリーへ. 2階へと上がる螺旋階段もいい感じ. このフロアは2013年の工事で全体的にやり変えたようで、内部はご覧の通りピッカピカ. 写真3枚目の壁は、ホールロビーから見上げたところにあった、塞がれてしまった開口があった部分. なぜ塞いだのか聞いてみると、基本無料スペースである2階から、チケットを購入しないと入れないロビーを見れるのはどうかという観点から塞いでしまったそうな.
写真5・6枚目は一番広い会議室の様子. 俯瞰写真を見ると、この部屋の上部分だけに傾斜屋根が取り付けられており、部屋の天井はこの屋根に合わせるように、ステージに向かうにつれて低くなっています(写真5枚目). 会議室からは、外側から見れたあのユニークな窓を通して、市民会館の北にある『美江寺観音』(写真6枚目)を見ることができるのが気持ち良かったです.





さらに事務局スタッフのご厚意で、楽屋スペースも見学させていただけることに. ホール外壁に沿うように繋がる通路(写真1・2枚目)を抜けて、側壁を青く塗ることで青い光が入ってくるような仕掛けが施されたトップライト(写真3枚目)などのユニークな仕掛けを撮影しながら楽屋へと到着. 竣工当時から残る扉文字のフォント(写真4枚目)に時代を感じます. 楽屋内は円筒のホール外壁に沿うように鏡が設置されている(写真5枚目)のが空間的にとてもユニークに感じました.
突然のご訪問ながら館内を色々とご案内いただいた事務局スタッフの方々に、感謝申し上げます. ありがとうございました. 岐阜市に残るモダニズム公共ホールを、ぜひ「ぎふメディアコスモス」をセットで御見学してみてはいかがでしょうか. ではでは今回はここまで〜
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