2016/10/03






メディアコスモスは、前回紹介した「岐阜市民会館」から交差点を挟んだ北東方向にあります(写真1枚目). かつてこの場所一帯には岐阜大学の医学部施設が存在していましたが、2004年に現在の岐阜大学がある場所付近に移転. 空き地となったこの広大な場所に、中央図書館・新市庁舎・文化ホールといった市の中核施設を建てる『つかさのまち夢プロジェクト』が岐阜市主導のもとで進行中です. こちらはその第1期施設であり、現在駐車場になっている南側のスペース(写真2枚目)には、岐阜市の新庁舎が2021年に建つ予定です.
建物のファサードは木材・銅板・ガラスを組み合わせた現代的なもの. 木材の間隔はガラスのある部分は広く、銅板の部分は狭くなっているようです. ガラスの表面に岐阜の青空が投射されている(写真3枚目など)のも気持ちいい. テラススペースから見える木の大屋根(写真5枚目)を見るだけでもワクワクしてきます. 高い建物は敷地の南側(JR・名鉄岐阜駅側)に集中しているため、メディアコスモスそのものの存在感が大きく感じられるのもいいですね.






建物外周をグルッと散策. 西側にある『金華橋通り』に沿って整備された、メディアコスモス西側の並木道は「せせらぎの並木 テニテオ」と呼ばれています. 道と建物の間に植えられたカツラの並木(写真1・2枚目)がとても気持ちいい. 道の脇にあったデッキ(写真3枚目)は、どこかSANAAっぽいデザインを感じさせます.
建物の北側(写真4枚目)と東側(写真5枚目)は、メディアコスモスの裏側になっているためか人通りは少ない印象. とりわけ現在東側は「旧岐阜県庁舎」のバリケードがあるため狭いです. 第3期工事が終了すれば、このバリケードも外れると思いますが何年後になるかは今のところ未定. ただ、その脇にあった七輪のような形したベンチ(写真6枚目)はとてもユニークなデザインに感じました.





それでは館内へ. 最近はSNSを探すと館内写真がバンバン出てきますが、今回は撮影申請書を書いた上で撮影しています. メディアコスモスの主機能となるのは2階フロアにある「岐阜市中央図書館」ですが、1階にはそれ以外にも交流スタジオや展示ギャラリーなど、市民交流のための様々なスペースが配備されています. エントランスにある案内板?(写真2枚目)は、表面がデコボコしていて触るだけでも楽しいユニークなデザインです.
1階天井は木の修正板を等間隔に並べた現代風のもの. 館内は少しばかり暗くなっているため、日のあたる部分でない限り設備の銀色が目立つことはなく、遠くから見る分には違和感のない天井です. 奥に進むと畳の可動床が備えられたスペースで学生が寝そべっていたり、その隣の「ワイワイサークル」と呼ばれる円形の交流スペース(写真4枚目 奥)では外国語教室が行われていたりと、1つのオープンな空間で様々なアクティビティが共存し合っているのが面白かったです.




1階の中央にあるガラス張りの空間は「本の蔵」(写真1・2枚目)と呼ばれる開架書庫. こちらは関係者でない限り1階からは入れず、2階フロアにある階段を降りる必要がありますが、ガラスの奥に大量の本が並ぶ光景は圧巻です. 集成材のベンチがあるスペースには、屋根につけられた太陽光発電の発電状況がわかるディスプレイが備え付けられていました. エコ対策も入念に行っているようです.
館内を歩いていると目につくのが、部屋案内(写真3枚目)や時計盤(写真4枚目)に記された、柔かいフィントが特徴的なサインデザイン. これらのサイン計画はグラフィックデザイナーである原研哉氏が手掛けたもの. 先ほどのデコボコの案内板に加え、ドキドキテラスを『ドキ』、みんなのホールを『ホー』としたネーミングも秀逸です. サインもユニークだな〜と思いながら撮影していましたが、原デザインだったとは驚きでした.






それでは当館メインの2階フロアへ. エスカレーターの上から見えるトップライト(写真2枚目)を見るだけでもワクワクが止まりません. 波打つ木の大屋根、所々に吊り下げられた光の笠、その笠に誘い込むように渦状に配置された本棚(写真4枚目). 図書館内に充満するヒノキの香りも心地いい. 岐阜市はとんでもない図書館をつくったな〜と第一声、もちろん褒め言葉です.
図書館はおよそ89m×80mという広大なスペースを、大壁で隔てないワンルーム空間として扱っているため、建物の端から端まで屋根や光の笠が見えるようになっているのが気持ちいい. 所々が波打つように畝るシェル屋根(写真6枚目)は、岐阜の県産材『東濃ヒノキ』の薄板を何層にも重ねており、木のしなりを活かしてこの曲面が作られています. 同県内にある「瞑想の森 市営斎場」に代表される伊藤氏のシェル建築ですが、ついに木材でやる時代に突入というわけですね.






受付カウンターやくつろぎスペースの真上に吊り下げられる、光の笠のようなドーム状の屋根は『グローブ』と呼ばれるもの. 天井にあけられたトップライト(写真3枚目)から通された自然光が上部を照らすことで、まるでグローブ全体が光を帯びているかのような幻想的な空間になっています. 夜は人工照明によって明るくなるようになっています. 見た目も美しいこちらの照明デザインは、竣工と同年度の照明デザイン最優秀賞に輝くなど高い評価を受けています.
グローブは全部で11個あり、それぞれに異なった柄がデザインされているのも特徴. 「文書のグローブ」(写真1枚目)には横縞模様、「ゆったりグローブ」(写真2枚目)には波模様、さらに「親子のグローブ」(写真4枚目)には花柄と、グローブの違いを視覚的に認識できるのはいいですね. 原氏がデザインした案内マップ(写真6枚目)にも、グローブの模様が一目でわかるようにデザインされています.



こちらは正面外観を見た時にあった、フロア南側にある野外テラス「ひだまりテラス」です. 日の光が当たるので、積層した木屋根も綺麗な狐色の色合いに. 曲面状に折れ曲がったガラスには、岐阜市内の街並みが何重にも折れ曲がって投影されています. 現在のテラスの手前には駐車場が広がっています(写真3枚目)が、およそ5年後にはこの場所に「岐阜市新庁舎」ができあがるので、それによってこの風景もガラッと変貌することでしょう.




最後は1階でご紹介した「本の蔵」へ、2階の階段から入っていきます. 木の大屋根の温かい空間から一変して、階段はご覧の通り打ち放しコンクリート一色(写真2枚目). 内部は普通の書架といった感じですが、外側はガラス張りとなっていて、個人的にはあまり落ち着ける空間ではありませんでした. 上は図書館、下は開架書庫ということで閉架書庫は?と思いましたが、よくみると中2階にも書庫(写真4枚目 上部分)があり、そこが閉架書庫として扱われているようです.
写真大増量でお送りしてきたメディアコスモスのご紹介もここまでです. 外観・内部含めて素晴らしく、岐阜県に来たら一度は見ておきたい建築スポットとして、私は太鼓判を押したいと思います. 知り合いには夜も素晴らしいから見ておけと言われていたのですが、残念ながら用事があり断念. 今度来るときは夜の風景を撮りたいですね. 岐阜市の新しい近未来図書館へあなたも一度ぜひ. ではでは今回はここまで〜
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