

この展望台は「山の上に立つ一本の大きな樹」を設計コンセプトとして三分一博志
(さんぶいち ひろし)氏によって設計されました. 広島を中心に活動する建築家で「犬島製錬所美術館」や「宮島弥山展望台」などの著名な建築を手掛けています. 三分一氏を語る上で欠かせないのが『エナジースケープ』という概念です. 簡単に述べると、その場所にある地形や気候を細かく分析し、太陽熱や風力、水などの自然エネルギーを循環させる建築・仕組みを作り出すという設計のあり方のことです. ここから先では六甲山の自然を最大限に活かした、三分一氏の設計コンセプトも説明しながら紹介しましょう.
訪問した時は日の入~夜中の時間帯で、夜間は期間限定でイルミネーションが展開されています. それに照らされて幻想的に映る球体上のドームは、太いのがスチール、細いのがヒノキの棒材を組み合わせてつくられてます. このドームにも三分一氏の狙いがあり、気候次第で六甲山の気候が生む『樹氷』という現象を体験できます. これは空気中の水が固体に変化する現象のことで、ヒノキ棒はそれを着氷させるためのものです. そして冬の時期のある一定のタイミングで、このドームは氷の結晶を覆った雪のフレームになり、六甲山の気候が生む美しい自然現象を体験できるというわけです!
見れるか否かは別として…

内部を説明する前にもう一つ、瀬戸内産の花崗岩でできた石垣が段々状に積まれたこのスペースにも、三分一氏の『エナジースケープ』に関する重要な役割があります. 写真ではこのスペースにはミーツアートの作品が展示されていますが、本来この場所は製氷池で水が張られています. 六甲山の厳しい寒さによって製氷された氷の池は、持ち運び可能なサイズに切り出され、展望台の中に運ばれます. 何故展望台に運ばれるのかは、内部にて説明しましょう.
展望台ということで、あまり展望について触れていませんでしたが、展望台からは大阪・神戸のハーバーラインを中心に夜景を楽しむことができ、天候が良ければ関西空港なども見え、着陸する航空機を見ることができるそうです.
生憎写真は曇り空でした…


というわけで展望台の内部へ. 内部へはスロープを下っていきます. 天井側面に取り付けられた間接照明が、仕上げとなる吉野ヒノキの無垢材を温かく照らしていて気持ちのいいアプローチになっています. 内部空間には中央へと向かうスパイラルスロープ、サークル状に配置された椅子、そして先程の山型煙突の裏部分にはギザギザ状の表面をした天井が広がっていました. その煙突の出口部分をよーく見ると、ランプ形状のものが吊り下げられてますがあれは何でしょう?
雑誌にはなかったので気になってます椅子に腰掛けて耳を澄ますと「ピチョーン…ピチョーン」と水の落ちる音が聞こえてきます. 実はこの空間のすぐ隣には、先程の製氷池でつくられた氷をストックできる『氷室』があります. 三分一氏の『エナジースケープ』の体現はまさにこれで、冬に切り出した氷をその部屋に保管、夏の熱い時期にこの氷で冷やされた空気が内部を冷やすと同時に、温かい空気を上昇させ、煙突から排出させるという『自然冷却システム』を作り上げています. しかも氷も池での自然冷凍なので、全て自然の力で循環させているわけですね. 私の想像ですが、先程の音は『氷室』で溶けた水が落ちる音だと思います.
今回はかなり専門的な解説となりましたが、山頂からの眺めも良し、夏は氷で涼しくなり、冬は『樹氷』を見ることもできる
必ず見られるとは限りませんが…、そんな六甲山の自然の力を体感できる展望台に一度来てみてはいかがでしょうか. それでは今回はここまで〜
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