アーク栄東海ビル(旧大栄ビルヂング) - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

アーク栄東海ビル(旧大栄ビルヂング)

           
0163:旧大栄ビルヂング メイン

0163 - アーク栄東海ビル(旧大栄ビルヂング)
竣工:1973年
設計:ポール・ルドルフ+山下司+納賀雄嗣
住所:愛知県名古屋市中区栄2-9-5

皆様どうも. 今回は名古屋市屈指の繁華街である栄から、ちょっとユニークな外観をもつアーク栄東海ビルです. こちらはアメリカ出身の建築家 ポール・ルドルフが日本で手掛けた唯一の作品. 2000年代まで大栄ビルヂングという名で親しまれていたため、多くの建築系サイトではこちらの名称がよく使われています. 名古屋市街に今なおも残り続けるビル建築を探訪してきました.
0163:旧大栄ビルヂング 外観

0163:旧大栄ビルヂング 正面ファサード①

0163:旧大栄ビルヂング 正面ファサード②

0163:旧大栄ビルヂング 屋上

大栄ビルヂングは、市営地下鉄伏見駅の5番出口を出て一つ目の曲がり角を入ってすぐの場所にあります. 両側を高いビルに挟まれているため見つけにくく、栄のビル街から地図なしでこのビルを見つけるのは難しいと思います.

窓枠の外側にには、下部分を斜めカットした無数の金属パイプ(写真3枚目)が取り付けられており、これらは斜線制限によってバックした上階部分にも徹底されています. さらにビルの屋上に目をやると、金属パイプで囲まれた塔屋と空中通路(写真4枚目)が確認できます. 70年代の斜線制限がどうなっていたかはわかりませんが、法規制を上手く利用した豪快なデザインに感じられます. しかしながら、あの空中廊下は実際に立つとかなり怖そうです.

ケンタッキー州生まれのポール・マーヴィン・ルドルフは、第二次世界大戦後のアメリカ建築界を牽引した一人. ハーバード在学中にグロピウスに師事し、「ウォーカー・ゲストハウス」や「イェール大学美術・建築学部棟」などの代表作を手掛けました. 冷たく荒々しいフォルムを特徴とする『ブルータリズム』の建築家としても、その名が上がります. こちらのビルはルドルフ自身がスケッチし、その後は山下司氏と納賀雄嗣氏が設計担当となって1973年に完成しました.
0163:旧大栄ビルヂング エントランス①

0163:旧大栄ビルヂング エントランス②

0163:旧大栄ビルヂング エントランスからパイプファサードを見る

0163:旧大栄ビルヂング 天井のワッフルスラブ

0163:旧大栄ビルヂング ビル入口

0163:旧大栄ビルヂング 白に塗られたプレート

エントランスは地下1階から地上2階までの3フロア吹き抜けの構成. 手前に円形平面のボリューム(写真2枚目)があるため判りにくいですが、かなり奥行きがあります. 一部のガラス開口には正面と同じ金属パイプのファサードが伸び(写真3枚目)、天井はワッフルスラブ(写真4枚目)になっていたりと、細かな意匠が空間を引き立てています.

かつては名古屋の不動産会社だった『大栄ビルヂング』がビルを所有していましたが、2001年の倒産を機に現在のビル名称に変更. 竣工時は外壁全体がRC打ち放しでしたが、近年の改修によって全体的に真っ白に. 竣工当時からあったであろうプレートが白く塗りつぶされている(写真6枚目)のがなんだかな〜という感じです. プレートということで同時期の他作品を調べてみると、年代的には「中銀カプセルタワー(1972年)」とほぼ同い年というのに驚きです.
0163:旧大栄ビルヂング 地下への階段

0163:旧大栄ビルヂング 手摺デザイン

0163:旧大栄ビルヂング 空っぽの地下空間

こちらは掘り下げられている地下フロアの様子. 改修前はこの倍以上のスペースが掘り下げられていましたが、改修によって大部分が地上階の床として埋められてしまいました. 辛うじて原型を残すのは階段(写真1枚目)と一部の手摺(写真2枚目)ぐらいだと思います. 床で埋められた一部のスペースは床下スペースとして残っていますが(写真3枚目)、何も置かれてなかったのが寂しい感じでした.

竣工から40年という歴史的にも長いモダニズム建築ながら、一部の仕様は変わってもほぼ原型を留めたまま今なおも使い続けられていることに驚きました. 個人的ですがよく取り壊さずに残したな〜と思います. 今後は新しいお姿で、この栄にしばらくは残り続けていくことを期待しています. 興味が湧いた方はぜひ一度、ではでは今回はここまで〜


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