資生堂アートハウス - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

資生堂アートハウス

           
0170:資生堂アートハウス メイン

0170 - 資生堂アートハウス
竣工:1978年
設計:谷口吉生+高宮眞介
住所:静岡県掛川市下俣751-1
賞歴:1979年日本建築学会賞
特記:2017年6月末まで休館

皆様どうも. 今回ご紹介する静岡県の建築は、化粧品メーカーでおなじみ『資生堂』グループが運営する企業美術館 資生堂アートハウスです. こちらは「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」「豊田市美術館」を手掛けたことでも知られる谷口吉生氏が最初に手掛けた美術館建築で、初めて建築学会賞を受賞したことで谷口氏の名が大きく知れ渡る契機ともなった作品です. それではまいりましょう.
0170:資生堂アートハウス 敷地までの道のり

0170:資生堂アートハウス 脇を走る新幹線

0170:資生堂アートハウス 敷地入口

0170:資生堂アートハウス 敷地内の彫刻

0170:資生堂アートハウス 敷地案内図

0170:資生堂アートハウス 企業博物館

アートハウスがあるのは静岡県掛川市. 前回ご紹介した「掛川市庁舎」とは1kmほどしか離れていないため、当日は市庁舎から歩いて向かいました. アートハウスまでの道のり(写真1枚目)は、途中から東海道新幹線の横を歩くことに. 駅とかで見るとワクワクする新幹線ですが、地上レベルで道の真横を250kmオーバーで走行されると、さすがに耳にガンガンきます.

走行する新幹線を横目に歩きながら、アートハウスの敷地に到着. メセナ活動(企業支援)の一環として資生堂が運営するこちらの施設は、現在でも西隣で操業する掛川工場の敷地を活用する形で1978年に開業しました. 現在はアートハウスと「資生堂企業資料館」、そして敷地内に配置された彫刻作品(写真4枚目)を楽しめる芸術交流の場として整備されています. 資料館(写真6枚目)は外壁に銀とタイルを敷いたギラギラの建物ですが、こちらは谷口氏ではなくフジタの設計です.
0170:資生堂アートハウス アートハウスへ

0170:資生堂アートハウス 正面広場①

0170:資生堂アートハウス 正面広場②

0170:資生堂アートハウス 正面広場③

0170:資生堂アートハウス タイルの色合い

敷地内の案内板に沿って、アートハウスの正面広場に到着です. 今まで見てきた谷口氏の作品といえば、建物が見えたらすぐに特徴的な『顔』が見えるものが多かったですが、こちらは建物をぐるっと回り込むアプローチになっていたのが意外でした. しかし処女作とはいえ、シャープでカッコいい外観デザインは見事. 銅の色合いをした鋼板壁と、周囲の景色を取り込んで輝く銀色のタイル壁が組み合わさった外観は、70年代後半の建築とは思えない洗練されたデザインです.

ここで少し考えていたのは、なぜ当時はまだ「福井相互銀行成和支店」ぐらいしか公の作品がなかった谷口氏が、資生堂のミュージアムを手がけることになったのか. 2004年の「ニューヨーク近代美術館」が初の設計競技による作品ということを考えると、これも資生堂からの直接の指名ということになります. そこでスタッフに聞くと、お父さんである谷口吉郎氏が、1962年に「資生堂パーラービル」を手掛けていたそうです. 既にこちらは現存しませんが、谷口氏と資生堂にはそういう繋がりもあったんですね.
0170:資生堂アートハウス 芝生からの眺め

0170:資生堂アートハウス ミラーに映る新幹線

0170:資生堂アートハウス 資生堂フォントの標示

0170:資生堂アートハウス 玄関①

0170:資生堂アートハウス 玄関②

アートハウス手前の芝生には入ることができませんが、少し離れた奥の芝生には入ってOKということで、そこから撮影したものが写真1枚目のものです. カーブするタイル壁の下側にはミラーガラスが張られ、周囲の風景がいい感じに投影されています. ミラーは新幹線の線路に沿うように配されているようで、新幹線が通ると写真2枚目のような光景も. 手前のリング状の作品は伊藤隆道氏の『5月のリング』. 鮮やかな芝の緑や空の色も加わって、自然の中に佇むアートのような建築という雰囲気がとても気に入りました.

そして館内へ. 入口に掲げられた標示(写真3枚目)は『資生堂書体(フォント)』で書かれています. 入場はなんと無料. 館内は残念ながら、エントランスも含めて撮影禁止です. 展示室はSの字に配された回遊動線が特徴. 黒い大理石でできた半円状の階段を登るとすぐ右手には、当館でコレクションされている様々な彫刻作品が飾られた白く明るい展示空間が広がります. 気持ちのいい芝生や新幹線を眺めながら彫刻鑑賞というのも、この美術館ならではな気がします.

内観の説明が少ない気もするのですが、今回はここまでです. 開館からもうすこしで40年が経とうとしている処女作ながらも、谷口建築はいつの時代でもカッコいいです. ただし特異に感じたのが、象徴的に魅せやすい外観のプロポーションよりも、内部の展示空間からの眺めを強く意識して手掛けたような感じがします. 静岡に来たら是非行って欲しい美術館建築ですが、残念ながら2017年の6月末まで休館ですので、再開館まで気長に待ちましょう. ではでは今回はここまで〜


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