


南口から入場すると、その右側にはフレンチルネサンス様式のレトロな旧館『明治古都館』があります. この古都館を設計した片山東熊
(かたやま とうくま)氏は「赤坂迎賓館」や「奈良国立博物館」などの建築を手掛けた宮廷建築家として知られています. 現在は改修工事のため入館できませんが、入口にはガラス扉が設置されていました.
明らかに後付けですね…旧館を横目に先へと進むと、2013年に竣工した新館『平成知新館』に到着します. ドイツ産ライムストーンによって肌白色に彩られたキューブ
(直方体)には巨大な庇と列柱が取り付けられ、庇の下には水平に長いガラスウォールが取り付けられています. 庇の高さを旧館のコーニスに合わせてスケール調和を図ったとのことで、巨大なハコ型にしては景観の圧迫感はあまりないように思えます. 新館南側には広々とした水盤が貼られており、美しい水の空間となっていました.
このように見るだけでも美しい新館を設計したのは建築家 谷口吉生
(たにぐち よしお)氏です. 「土門挙記念館
[1983年]」や「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
[1991年]」、「東京国立博物館 法隆寺宝物館
[1999年]」等の著名な作品を手掛けています. また、メディアに殆ど出演しないことから「
作品主義の建築家」とも呼ばれていて、私も雑誌以外のメディアでお目にかかったことがありません. 今後もご紹介するかもしれませんが、父親は谷口吉郎
(たにぐち よしろう)氏で、この方も昭和期に活躍した建築家です.
私個人としての谷口氏の建築的な魅力は、超巨大なキューブ
(直方体)というモダニズムな様式に、極めて繊細な素材感・ディティールを組み込み一体的に設計することで、シャープで連続性のある公共空間を構築する点です. そして、そのプロセスで完成した作品は非常にかっこいい. そういうわけで、谷口氏の作品は非常に気に入っています.



それでは館内を見てみましょう. この新館の特徴ともなっていたカーテンウォール部分はフリースペースとなっており、2層吹抜けの大空間を構成していました. 床に並ぶジンバブエブラックの花崗岩はゼロ目地で奇麗に並べられ、写真では一枚の板にしか見えない程美しいものに仕上がっています. 450mm間隔で並んだガラスは高透過性の複層ガラスで柔らかい光を館内に入れ込んでいますが、実際にその光に当たると結構暑かったのがネックでした.
展示室は3階からスタートし2階、1階展示室と降りながら巡回する動線で、各階には2層吹抜けの展示スペースがありました. つまり2階からは1階・3階を巡回する人の動きが見えます. 私的ににイイなと感じたのは、直径3mmで十字に重ね合わせてつくられたステンレスメッシュです. 水平に細い部材で間隔の狭いルーバーとなるそれは、まるで簾
(すだれ)のようで、キューブな空間に和の要素が垣間見えたような気がしました. 一度見てみることをお奨めします.


そして観覧後、夕暮れ時の新館は非常に幻想的な光のキューブとなって現れました. 昼間は気づかなかったのですが、新館までのアプローチの中央には照明が組み込まれており、入り口まで光の列が出来上がっていました. そして極めつけは京都タワー
(設計:山田守)とのこのツーショット. 京都タワー、列柱、水盤に映る色合いなど、映るもの全てが幻想的に見える一枚だと思います.
京都といえばやはり古き町並みですが、このような現代モダニズムな建築が見れるのは数少なく思います. 皆様も一度訪れてみてはいかがでしょうか? それでは今回はここまで〜
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