




建物の所在地は日本橋ですが『でんでんタウン』が有名な電気街からは少し北に離れたエリア、堺筋のすぐ西側をはしる筋沿いにギャラリーはあります. ギャラリーのすぐ近くには、モダンビルとしても名高い「味園ビル」が見えます. 探訪当日はフェスティバル前日だったため、まだ並んでいる人は少なかったのですが、当日は1時間以上の行列ができたそうです.
外観は両側を4〜5階ほどのビルに挟まれた縦長のファサード. コンクリート壁に挟まれた隙間に、3列×4列の細長いガラス収められており、入り口の扉を閉めれば美しいシンメトリーになっているのが特徴です. しかしながら驚くのが、2.9mしかないこの間口の狭さ. 安藤氏の代表作である「住吉の長屋」の間口3.6mよりも狭いということで、この狭い空間下でどう住んでいたのだろうかというのは、写真をみた当初から気になってはいました. 実際に見ても超狭そうです.





それでは建物内に入っていきます. この期間中は建築模型展をやっていたため、館内写真はこれら模型が写るものを避けて掲載しています. この模型展は11/20まで開催中です. 入ってすぐ右手の階段をみると、階段が連続しながら続いており、かなり奥行きがあります. 両脇をコンクリ壁で挟まれた狭い階段ですが、奥から差し込む自然光のおかげで、古いビルにある光の届かない陰湿な階段の雰囲気はありません.
冒頭で少しだけ話しましたが、ここでもう少しギャラリーの説明を. 日本橋の繁華街の離れに完成したこちらの住宅の竣工は1994年. 同年竣工の建物には「近つ飛鳥博物館」や
「京都府立陶板名画の庭」などがあるように、初期の個人邸宅から次第に大きな公共建築にシフトする転換期に完成した個人住宅で、近年では「芦屋の住宅」がありますが、個人住宅作品としては中〜後期のものになります.
1階に飾られている断面模型
(写真4〜5枚目)からもわかるように奥行きは15mと長く、この細長い敷地に4階建てのボリュームを詰め込んで居住に必要なスペースを確保しています. 道路に面していたガラス部分は3フロア吹き抜けに、3〜4階の一部は「住吉の長屋」に似た中庭が確認できます. 住宅単体としての利用ではなく、1階は美術関連の店舗スペースとして使用されていました.



3階フロアへと階段であがった先にあるのがこの中庭. 両脇には4階フロアに繋がる階段が取り付けられています. さながら「住吉の長屋」中庭の階段バージョンといったところ. そうなると雨の日には傘をさして移動なのかと思いましたが、ガラスの可動屋根が備え付けられているようです. また階段の向きや両側の開口の数を含めて、空間全体がシンメトリーになっており、階段の無い部分の扉がトマソンのような仕掛けになっているのがとてもユニークに感じました.




最後は道路側に面したガラスファサードのある吹き抜けスペースです. 白いガラスを通して入ってきた光は吹き抜け全体を、さらに奥のガラス
(写真3枚目)を通して奥の部屋を明るく照らしています. 床の面積としては非常に狭いですが、見上げた時の空間のスケールは不思議と広く感じるのが面白いところです.
現在はギャラリーとして改修したため床は真っ白ですが、改修前は木のフローリングが敷かれ、階段脇にはオリジナルデザインの木の本棚が備え付けられていたそうです. もしこれを残す形で改修されていれば、夙川にある
「ギャラリー小さい芽」のようなコンクリートと木の安藤ギャラリー建築になったかもしれません.
というわけで今回はここまでです. 1階には安藤氏がオーナーに宛てたはがきが飾られているのですが、その一つには『狭いですが全力でつくりましたので、全力で住んで下さい』と書いていました. 個人的にはおいおいと感じるすごい文ですが、それに応え、取り壊すことなくギャラリーとして活用してくださったオーナーさんの建築を愛する魂に敬意を表したいと思います. ギャラリーとしての第二の人生を歩み始めた日本橋の家にぜひ. ではでは今回はここまで〜
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