2016/11/19





銀行は前回紹介した「高麗橋野村ビルディング」より、堺筋を挟んですぐ向かい側にあります. 主な顔となる堺筋側のファサード(写真2枚目)は、中央に4本のイオニア式のジャイアントオーダーが力強く並ぶザ・古典主義の佇まい. 列柱の上に掲げられたメダリオン(写真3枚目)には、商業のシンボルであるギリシャ神話の杖『ケーリュケイオン』が刻まれています. 高層ビルもそれなりに建つ堺筋ですが、それに負けない力強さを今なおも誇示しているように感じます.
三井財閥の中核でもあった日本初の私立銀行『三井銀行』の大阪支店として1936年に完成したこちらの銀行建築. 設計は曽禰達蔵氏と中條精一郎氏の2人によって開設された『曾禰中條建築事務所』で、この大阪支店はその中でも最晩年の作品です. 「小樽支店(1927年)」や「名古屋支店(1935年)」といった他の三井銀行建築も担当しており、中でも名古屋支店はイオニアオーダーを6本並べるという、この銀行と似た様式のものとなっています.





古典様式的なファサードは堺筋側だけかと思っていましたが、南側となる高麗橋通側にもイオニアオーダーの古典的ファサードが(写真1枚目). 大阪中心部の交通軸であった筋(堺筋)と通(高麗橋通)の両方に人の意識を向けた結果ではないかと思います. ただしこちらの列柱は平面的でのっぺりとした感じに(写真2枚目). つくりは簡素なものの、正面のブロンズ扉(写真4枚目)は目をみはるほど素晴らしいデザインでした.




写真前半の2枚は銀行北側、後半2枚は高層棟の建つ東側の外観です. 堺筋側の見た目からこの規模の断面が奥まで続いていると考えていたのですが、北側は上のフロアが大きくセットバックしていました(写真2枚目). 高層部のファサードは細長のガラスが連続する現代的なデザイン. 窓下が大きく傾いているので、物理的な意味で鋭い見た目ですが、色合いは堺筋側の建物に合わせているようにみえました.
そういうわけで今回はここまでとなります. 撮影したのはイケフェス当日なのですが、特別公開がわずか3時間と短かったため内部見学は叶わず. 来年再チャレンジですかね. 堺筋でおそらく唯一現役の近代銀行建築に、興味が湧いた方はぜひ. ではでは今回はここまで〜
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