2016/11/22




では初めは淡路町通から撮影した外観の写真から. 5〜6階ほどのビルが並ぶ中に見えてくる、白と褐色というシックな組み合わせの外壁が特徴的なテナントビル. 装飾があまりないゼセッション(分離派)風の外観ですが、屋上のパラペット部分にくっついている三角形状の張り出し(写真2枚目 上部)はとてもユニーク. 褐色タイルの部分を列柱に見立てると、その柱頭にも見える洒落たデザインです.
建物の入口は、淡路町通に面した中央部分の1カ所(写真3枚目)のみ. 現在は綺麗な四角形ですが、竣工当時はアーチ状の入口になっていました. 開放的とよべるほど大きな入口ではなく、外観のドッシリとした雰囲気も相まって、若干閉鎖的な印象を与えていますが、この閉鎖的なイメージが内部空間との面白いギャップを生み出しています.




それでは館内へと入っていきます. 少し緩やかなスロープとなったエントランスの先には、植物が飾られた奥行きの深い中庭(写真1・2枚目)が広がっています. 上を見上げれば美しい青空が広がり、先程の外観のイメージからは想像もつかなかったほど開放的な共用空間になっています. 写真はありませんが、床には木煉瓦が敷かれており、パーツの一つ一つに木の年輪が刻まれているのがナイスでした.
こちらのビルは、御堂筋と堺筋のちょうど中間にある『三休橋筋』の道路拡張に伴って1925年に完成し、現在は化粧品メーカーのグループ会社がビルの管理を行っています. このユニークなビルを設計した村上徹一氏という建築家についての詳しい情報はわかりませんが、竣工当時は地下と1階にメゾネット住宅、2・3階にオフィス、そして4階にダンスホールという当時珍しい複合用途で計画されたため、当時の革新的なビルとして注目されたそうです.





こちらはさらに上のフロアから撮影した写真を掲載. 1階のパティオを確保するために、集合集宅でいうところのツインコリドール(2列廊下)と似た構成になっています. 高層の団地などではよく見かける形式ですが、中層のビルで用いられるのは非常に稀で、その規模故に中庭(写真2枚目)との距離感がとても絶妙で、窮屈な雰囲気を感じさせない素晴らしい空間になっているのに驚かされました.
写真3枚目からはかつてダンスホールだった4階の様子. さすがにオフィスの上でダンスをされるのは厳しかったのか、現在はテナントスペースとして雑貨屋やオフィスが入居しています. 廊下部のガラス屋根は後から付けられたのでしょうか. この階だけ手摺が金属製になっており(写真4枚目)、アール・デコに近いデザインになっているのがポイントです. 屋上には庭園と稲荷神社(お稲荷さん)があり、イケフェスでは特別開放されます.
ちょっと閉鎖感のある外観と、ど真ん中に中庭が設けられた開放的な内部空間. 大阪に数ある近代建築を探しても、このユニークさに勝る建物はなかなかないと思います. 雑貨店も入居していますので、気軽に入れるのも嬉しい. ガウディをイメージしたインテリアになっている店舗もあり、積極的に活用されているのが良かったです. 船場に来たらぜひ寄ってほしい近代モダンビルです.
【追記 2017.10.12】
2017年度写真健全化作業により一時公開を停止させていただきましたが、写真掲載等のお許しを頂戴しましたため、文章改善の上で公開を再開しました. ご許可賜りました桃井商事株式会社様に、この場を借りて御礼申し上げます.
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