2016/11/23






ここで掲載しているのは1931年の大晦日に竣工し、1932年の元旦に開館した本館の外観です. 設計を手掛けた渡辺節(わたなべ せつ)氏は、あの村野藤吾氏のお師匠にあたる関西近代建築界の大御所です. 東京帝国大学卒業後は、鉄道院を経て1916年に独立. 現存作には「商船三井ビルディング」や「旧乾邸」、ファサード保存されたものに「ダイビル本館(旧ダイビル)」があります. この会館も数少ない現存作で、当時のチーフデザイナーに村野氏が当たっています.
1階部には力強い目地を刻む石材を、それより上のフロアは薄茶のスクラッチタイルが縦横交互に配するオフィスビルのような佇まい. 装飾の少ない開口が並ぶ姿は合理主義的な印象ですが、3階まで連続するアーチだったり随所に配されたテラコッタだったりと、飾るところはしっかり飾って、倶楽部会館としての豪華さを演出しています. 北端部の一部に黒く変色しているタイル(写真2枚目)があるのですが、あれは焼夷弾の焼け跡かなにかだったと噂に聞いた気がします.
菱形格子の重厚な扉が3つも並ぶ本館玄関(写真3・4枚目)は、社交クラブの入口として相応しいもので、一般人が入るのを寄せ付けない圧倒的なオーラを放っていました. 三休橋筋に並ぶガス灯(写真3枚目)も、この綿業会館のモダンさを際立たせるのに一役買っています. ビル全体は7階建ですが道路からは4階までしか見えず、備後町通からならばセットバックした様子を伺うことができます(写真5枚目).





こちらは本館のすぐ東隣に隣接する新館です. 水平連続窓が特徴のモダニズムスタイルな外観のため、初見では同一の建物だとは思えずにビックリした記憶があります. 竣工は本館からおよそ30年後の1962年ですが、こちらも渡辺氏の設計事務所が担当しています. 新館を知らなかったときにJIAの近畿事務所にお邪魔する用があり、あの格式高い本館玄関の手前で入れるのかこれと考えあぐねていたところを、警備員の方に教えてもらってようやく新館の存在を知りました.
本館の雰囲気を連続させて茶褐色のスクラッチタイルを張っていますが、窓サッシュの複雑な組み合わせ(写真2枚目)や建物両脇の隙間(写真3枚目)に屋上塔屋のブロックデザイン(写真4枚目)など、どこか村野建築を彷彿とさせるようなデザインが織り込まれています. 村野氏は1929年に独立してるので関与はしてないはずですが、これ村野さんですと言われたら信じてしまいそうです.
一度館内を見学したことがあるのですが、主催者側からブログ掲載は控えてほしいとの要望があったため、写真掲載は控えます. 2層吹き抜けとなった玄関ホールの中央には岡氏の銅像が座し、両脇にはアーチが設えられ、その右奥には豪華な装飾が施されたエレベーター扉と郵便ポストが備わっていました. 皇室専用だった貴賓室にはクイーン・アン、鏡の間にはアンピールスタイルといったように、各部屋ごとに異なるインテリアが施されているのも特徴. 紡績人は多くイギリスを訪れてるということで、イギリス風に沿わせたものになっています. バラエティ豊かな装飾にお腹いっぱいです.
イケフェスでは毎年倍率の高い館内見学ですが、通常でも毎月第4土曜日(12月は第2土曜日)に有料で見学を行っているようです. しかしサイトを見てみると、まだ11月なのに来年6月分の電話予約のお知らせをアナウンスしています. つまりは通常見学だと7ヶ月先まで予約がいっぱいということで、先が待てない人にとってはイケフェスが数少ないチャンスだということがよくわかります. チャンスを得るのが大変ですが、ぜひ館内を見学することをお薦めします. では今回はここまで〜
- 関連記事
-
- 大阪ガスビルディング
- 御堂ビル
- 綿業会館
- 船場ビルディング
- 伏見ビル
コメント