大阪倶楽部 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

大阪倶楽部

           
0193:大阪倶楽部 メイン

0193 - 大阪倶楽部
竣工:1924年
設計:安井武雄
住所:大阪府大阪市中央区今橋4-4-11

皆様どうも. 今回の生きた建築特集は、御堂筋沿道から少しそれて淀屋橋エリアへと移っていきます. 全国の米相場の基準となる米市の設立し、江戸期の大坂を天下の台所とよばれる商都への発展に貢献した豪商『淀屋』が土佐堀川に橋をかけたことが名の由来となった淀屋橋. 現在は「大阪市庁舎」や「日本銀行大阪支店」などが付近に建つ、大阪屈指のビジネス街です.

今回紹介するのは、地下鉄淀屋橋駅から南西に歩いた場所にある大阪倶楽部です. こちらは「大阪ガスビル」や「高麗橋野村ビルディング」を手掛けた安井武雄氏の処女作であり、当時の野村財閥総裁だった野村徳七氏の目にとまり、安井氏が後に数々の野村財閥系の建物を手がける契機となった作品です.
0193:大阪倶楽部 御堂筋からの眺め

0193:大阪倶楽部 交差点から

0193:大阪倶楽部 南側外観①

0193:大阪倶楽部 南側外観②

0193:大阪倶楽部 南側外観③

建物へは御堂筋から今橋通を東へと曲がって数分ほど. 今橋通の奥には阪神高速が見えています(写真1枚目). 時代によって多少くすんだ褐色素焼きタイルに覆われながらも、アーチやテラコッタ装飾が印象的な堅牢な佇まいを有するこちらの建物. 高層ビルがニョキニョキと建つ中においても、一際独特な存在感を放っています.

当時は東京において社交クラブは隆盛を極めた一方で、旧来の茶屋・料亭しかなかった大阪. 大大阪時代と呼ばれたこの時期に、風格のある社交の場をという目的で1912年に大阪倶楽部は設立されました. 初代の建物は「大阪府立中之島図書館」を手掛けた野口孫市氏や長谷部鋭吉氏が担当しましたが、1922年に開館は焼失. 新鋭だった安井武雄氏を2代目の会館設計者として選定し、会館は1924年に完成. 社交クラブとしては今も現役で、その歴史は100年以上に及びます.
0193:大阪倶楽部 玄関の様子

0193:大阪倶楽部 玄関部のデザイン①

0193:大阪倶楽部 玄関部のデザイン②

0193:大阪倶楽部 玄関部のデザイン③

0193:大阪倶楽部 玄関部のデザイン④

それでは正面玄関となる南側をもう少し近くから. 1階は西洋ロマネスク風の連続アーチが並ぶ一方、アーチの間には4体ほど設けられた魚の妖怪(写真2・3枚目)のような東洋的な彫像があります. 建物は様々な建築様式が混在した、当時の安井建築を象徴する『自由様式』で建てられており、これはその代表例になります. このデザインには大阪の比較的フリーダムな建築的風土が影響したものといわれており、安井氏の作風とマッチした結果といえるでしょう.
0193:大阪倶楽部 西側外観①

0193:大阪倶楽部 西側外観②

0193:大阪倶楽部 西側外観④

0193:大阪倶楽部 西側外観⑤

0193:大阪倶楽部 西側外観③

0193:大阪倶楽部 西側のセットバック部

こちらは建物西側の外観です. 独特な帯状のテラコッタ装飾(写真2枚目)もさることながら、素焼きタイルを組み合わせたアーチや凹凸のデザインも秀逸. 西洋の宮殿にありそうな長窓(写真5枚目)は、このファサードの中では象徴的なデザインとして設えられています. 内部は魔除けの『邪気』が玄関手前の壁面に掲げられ、「綿業会館」のように各部屋によって様式が変わるということですが、残念ながらまだ一度も入れたことがないのでその点に関しては不明な部分が多いです.

外観のみですが、今回はここまでです. 当日はイベントがあったためが、入口付近に黒いラグジュアリーな車が多数停車しているという中での探訪で、私自身の場違い感が凄かったです. 個人的には、こんな格式高い倶楽部会館を毎年特別見学させてくれる倶楽部側の懐の広さに感服の思いです. いつかは中に入ってみたいものですね. ではでは今回はここまで〜


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