2016/11/29


まずはじめはトップ絵を含めて天神橋・中之島公園から撮影した北側のファサードを掲載しています. 地上6階建ての建物をシックに彩るのは褐色のスクラッチタイル. 6段に並んだ無装飾の開口は、5階だけがアーチ窓という一見アンバランスな並びをしていますが、それを逆手にとって縦に伸びる象徴的な3連アーチをつくり出しています. リバーサイドの木々の緑も相まって、このビルだけ時間の流れがゆっくりと流れているかのような悠然たる佇まいを感じさせます.
土木建築請負業『大林店』として1989年の開業に端を発する大林組は、2010年の東京移転まで長らく関西を拠点としていました. このビルは創業から数えて4代目の本社屋となり、ビルのすぐ南側に建つ「大阪大林ビルディング」(トップ写真 左奥)が1973年に完成するまでの約半世紀にわたって本店として機能していました. その後は1981年より辻学園の校舎として利用され、2006年には大規模改修を実施. 2007年に現在の名称へと名を変えて現在に至ります.






こちらは南の土佐堀通からの眺めを. 北側とは地上階部分を除いてほとんど同じで、川と通(とおり)の双方へ向けた両面性が特徴となっています. 中央の三連アーチの内側には鷲の模様が彫られたテラコッタ彫刻、そのアーチの真上には力強い造形をしたバルコニー(写真4枚目)が取り付けられており、非装飾・左右対称の合理主義的な雰囲気をもたせながら、装飾的な要素を中央に集めるという整合されたメリハリをつけたデザインが見事です. 左右上部にある円形テラコッタ(写真5枚目)には、竣工年である『紀元1926年』がラテン語で表記されています.
旧本店の設計では小田島兵吉氏の平面計画に基づいた社内コンペが実施され、当時米国で流行したスパニッシュ・ミッション様式の意匠をもつ平松英彦氏の案が採用されました. 平松氏の詳しい経歴は判りませんが、京都帝国大学建築学科時代には武田五一氏が教鞭をとっており「京都大学人文科学研究所」に代表されるスパニッシュ様式に影響されていたそうです. 大林組HPサイト(リンク)の写真を見るに、昔は当ビルの周辺に高い建物は一切なかったようで、同地区のランドマークとして親しまれていたようです.

こちらではイケフェスで特別解放された日の様子を少し. 写真には入りきっていませんが、入口上部のアーチに鎮座した左右一対の鷲の彫刻も見応えがあります. さすがにミシュラン1つ星のレストランに入るのは気が引けてしまいますが、3階には『大林組歴史館』が入居しており、平日の営業時間内は無料で入館できます.
歴史館へ向かうエレベーターホールは改修して綺麗なものの、当時のレトロ感を継承した空間に仕上がっています. しかしねじれ支柱が特徴的な階段手摺や踏面など、当時のものを再利用したデザインも見受けられ、どのように改修したのかが詳しく気になるところ. エレベーターもおおよそリニューアルといった感じですが、左右に鳥が並ぶインジゲーター部分のレリーフは見事でした. 2006年より大林組は旧本店ビルを歴史的な建物として保存していく方針を固めています. リバーサイドの近代建築として、今後も残っていってほしいです.
※ お詫び
写真健全化に伴いエレベーターホールの公開を停止します. 大変申し訳ありませんでした.
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