2016/11/29




ビルが建つ付近の目印となるのは、中之島東部で土佐堀川にかかる『筑前橋』. 写真1枚目の左側を見ると分かるとおり、この橋はシーザー・ペリ設計の「国立国際美術館」のすぐ近くに掛かっています. 土佐堀川のリバーサイドに沿って長く伸びたビルの外観は、各フロアごとに水平に連続するサッシ窓がなによりの特徴. しかしながら奥に建つ中之島の高層ビル群のスケールがデカすぎて、ビルの存在感が埋没してポツンと取り残されてる感も否めません(写真4枚目).






夕方頃の訪問だったために、東側のタイル外壁(写真1・2枚目)は夕日の色合いに染まっています. そして結構テカっています. 道路側の外観(写真4枚目)をみると、こちらにも水平連続窓が各階に連続して、横帯の層のようなファサードを創り出しています. 水平連続窓が強調されたモダニズムの雰囲気漂うオフィスビルですが、実はこれが岸田日出刀氏の最晩年の作品であり、2016年に国指定登録有形文化財になったばかりの文化財建築だったりするわけです.
岸田氏は初出となるので紹介しますと、岸田日出刀(きしだ ひでと)氏は『造形意匠の権威』と称された昭和初期〜中期に活躍した建築学者. 1947年には建築学会の会長も務め、高度成長期までの日本建築界の重鎮として君臨しました. わずか30歳という年齢で東大教授に着任以降、岸田研究室には丹下健三氏や前川國男氏といった戦後モダニズムを牽引する歴史的建築家が在籍. このビルは岸田氏が1966年に心筋梗塞で亡くなる1年前に完成した作品です.






では早速特別公開されたビル内部の様子を. 内部はビル中央に共用空間(写真3枚目)が設けられ、その東西両側にテナントスペースが入るという構成. 最も注目すべきは、わざわざビルの中央に通されたこのRCの駆体(写真4枚目)です. 岸田氏は高速道路の橋脚の構造にヒントを得て、駆体を中央に寄せることで端から端までの水平連続窓ファサードを実現させました. 要は建物外壁がカーテンウォール状態にあるということですが、高度成長真っ只中の当時においては、まだまだ先進的な試みだったことでしょう.
文化財の登録においてもこの構造が評価され『インターナショナル・スタイル(国際様式)建築の美を追求した作品(原文ママ 文化庁報道資料より)』ということが、文化財登録の大きなポイントとなっています. ビル自体はこの地区一帯の社交の場として親しまれた経緯があり、公開されていたスペースではセミナー等を通じた交流の場として利用されているそうです.




最後は館内見学を終えて、東側からの眺めを撮影したものを掲載しています. ビルの方に教えてもらったのが、東側と西側に貼られたグリーンのタイル外壁. 実は両側で材質が異なっており、写真2枚目に写る東側には有田焼タイルが使用され、テカテカしていた西側はそれを再現しようと似せて作ったものだそうです. 残念ながら、東側の焼きの質感を再現するのは至難の業だったようです.
もう一つは、ビルの屋上に設けられた塔屋(写真4枚目)の外壁に施された横帯の材料について. 遠くからでは何が使われてるのか全く判りませんが、使用されているのはなんとガードレール. 建築部材にガードレールを使用するとは斬新すぎますね〜. 中之島の高層ビルラッシュで建物が高く煌びやかになる一方で、こういう観点から歴史的価値のある建造物として評価されるオフィスビルが中之島に残っていることに素直に驚きました. 今年からの登録ということで、建築としての知名度もぐんぐん上がっていくことを個人的に期待します. ではでは今回はここまで〜
- 関連記事
-
- 大阪府立中之島図書館
- 日本銀行大阪支店
- リバーサイドビルディング
- ダイビル本館(旧ダイビル)
- 旧大林組本店ビル(ルポンドシエルビル)
コメント