




それではまずJR敦賀駅改札口
(写真1枚目)から外に出て、施設の外観を見ていきます. JR敦賀駅は関西圏JRの都市間輸送を担う新快速の最東端停車駅であり、大阪駅から敦賀までを約2時間で結びます. また関西圏からの列車は特急を除いて全てこの駅止まりなので、北陸へ行く場合はこの駅で必ず乗り換えとなります. また北陸新幹線が2022年に敦賀駅まで延伸予定のため、それを見越したオルパークを含む駅の整備が着々と進んでいます.
現敦賀駅舎のすぐ西隣に建てられたオルパークの外観は、中央に複層ガラスが横に大きく展開し、壁面に亜鉛メッキ処理された黒いスチール板がはめ込まれた現代的なもの. ガラスには駅前の風景が反射して映し出されているため、そこまで圧迫感はありません. ガラス奥に見える杉板のボリュームはなにか、この部分は内部に入った際に説明します.
設計を手掛けたのはJR西日本コンサルタンツ、そしてデザイン監修には東京大学大学院教授も務める建築家 千葉学
(ちば まなぶ)氏が関わっています. 千葉氏は安藤忠雄氏が東大教授時代には助手を務め、2009年には「日本盲導犬総合センター」で建築学会賞を受賞. 近年には「大多喜町役場 新館
(※旧館は今井兼次氏)」で、2016年度の建築学会作品選奨にも選出されています.




オルパークの完成からしばらく後にできた駅前広場もぐるっと見学. スチールの材質は同じのため、これにも千葉氏が関わっているものと思われます. バス停の屋根には格子状に組まれたデザインにスギ材を貼り付けており、所々にはトップライトが設けられています
(写真2枚目). また柱ではなく、台形カットされたスチール壁で支えられているのもユニーク. 後で知ったのですが、バス停のフォントデザインは東京五輪エンブレムを手掛けた野老朝雄氏がデザインしていました.





それでは館内へ. 交流施設は地上2階建てで、内部には観光案内所やコンビニなどが入居しています. 特徴的なのは、鉄骨で組まれた空間内にあるスギ板のボリューム
(写真1枚目)で、これは東西に一つずつ存在. 外側はスギ板で覆われていますが、内部はRC壁がむき出し
(写真2・3枚目)になっており、その内部に上部からトップライトの自然光が落ちてきます.
一見すると建物の窓や扉に見えるこのスギ空間ですが、じつはかつて存在したある建物がデザインの基となっています. それは1910年(明治43年)に完成した2代目の敦賀駅舎です. 明治35年にはウラジオストクまでの航路が就航し、その10年後には東京新橋と敦賀を結ぶ『東亜国際連絡列車』が走ったりと、旅客輸送の栄華の真っ只中にあった2代目駅舎. 残念ながら1945年の敦賀空襲で焼失してしまいましたが、この駅舎に対する市民の愛着は今でも強かったそうです.
その市民の愛着を受けて千葉氏らは、両翼に木造2階建ての2代目敦賀駅舎をスギ板ボリュームとしてシルエット化し、その外枠をガラスで包むことを提案します. 写真でしか残っていなかった駅舎の図面をなんとか起こし、そのフレンチウインドウのスケールを開口に適応させることで旧駅舎の面影を継承しています.





そして階段をのぼって2階へ. 休憩室を撮影した写真
(写真2枚目)からは、裏手にある駅ホームと停車する特急車両が確認できます. このフロアになると床は木調になり、どこか図書館のようなフランクさを感じさせます. 実際に多目的室
(写真3枚目)の机椅子では、若い学生の方が勉強している風景もみられました. 中央に位置する吹き抜けのギャラリー
(写真4・5枚目)の手前は巨大なガラス扉になっており、その気になれば巨大な神輿の展示もできそうな感じでした.
今回はここまでです. 歴史のある旧駅舎のシルエットを含んだスギ板のハコを、現在的なガラスのハコで覆うというシンプルだけど大胆な交流施設は、今後の新幹線の延伸によって2代目時代同様の活気が出てくることを期待させるものでした. 興味が湧いた方はぜひ、では今回はここまで〜
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