2017/01/29





ではまず三条通側から撮影した北側ファサードの様子を見ていきます. 雑居ビルや町屋の中でも一際目立つオレンジの外壁が特徴的な、南北に長細く建つ地上4階建て. 一見すると装飾の少ないシンプルな初期モダニズム、時期を考えると国際様式のような雰囲気がありながらも、屋上部の星形マークや連続アーチ(写真3枚目)、カエデの葉を想起させるバルコニー(写真4枚目)などの近代チックなデザインも見所. 近代からモダニズムへの過渡期を思わせるような外観です.
「中京郵便局」の初めでも解説している通り、三条通は東海道と大阪への交通ルートを結ぶ要所として栄え、銀行のみならず当時の情報産業の中心だった新聞社も多く立ち並んでいました. 当ビルも『大阪毎日新聞』の支局ビルとして残る希少な旧新聞社ビル(建設当初は「京都大毎会館」)で、先ほど見た星形マークは新聞社の社章をモチーフにしたものです. 設計は「関西電力京都支店」や数々の京大建築を手掛けてきた武田五一氏で、作品としては中〜後期のものです.





こちらは御幸町通に面した西側ファサードの様子です. 三条通は陸屋根のようですが、こちらのは傾斜が大きく設けられたドーマー(出窓)付きの青銅色屋根(写真3枚目)が設けられています. 青銅サッシュの大窓が整然と並ぶ様子は、国際様式に近い雰囲気を漂わせます. 丸い鋼管をズボッと差し込んだような丸窓(写真2枚目)もいい感じ. 窓ガラス(写真4枚目)には表面の所々が歪む『昔ガラス』が使用されていて、学校の窓のような雰囲気が感じられるのがよかったです.




最後は、今回入ることができた入口からエントランスまでの様子です. 凹凸をつけて張り出た水平庇(写真1枚目)と、両脇に設けられた照明のデザイン(写真2枚目)がいい感じ. 説明看板を見ると水平庇はF.L.ライト、照明はアール・デコに影響されているそうです. 1998年まで支局として使われた当ビルは、その後「京阪宇治駅舎」等を手掛けた若林広幸氏が新聞社より買い取り、1999年より劇場ホール空間を有する複合ビルとして活用されています.
そんな当ビルのエントランス(写真3枚目)は、すぐギャラリーの入口が設けられるためかなり狭め. 木製扉やオレンジカラーを活かした館内照明の暖かい演出がいいですね. ドーマー屋根の真下にあたる3階フロアには『アートコンプレックス1928』という小劇場があり、三条通を代表する芸術文化拠点としての活用も図られています. カフェも複数店営業しているので、それ目的でフラッと訪れるのにも最適です. 三条通に残る武田五一建築に是非一度. では今回はここまで〜
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コメント
No title
当方「日本全国冒険紀行」で訪れた場所がいくつもありました。
神戸はまだ行っていませんが、いつか行きたい候補の筆頭です。
これからもちょくちょく拝見します
2017/02/10 20:40 by kshun10 URL 編集