2017/01/31






では最初は三条通からの建物の様子を見ていきます. 建物は京阪・地下鉄三条駅より三条大橋を渡り、少し歩いた先にかかる三条小橋西詰に建っています. 中規模の商業建築の集中的に手掛けた80年代(1984年)の作品ですが、7年後に増築されており、作品集では「TIME'S I・II」と表記するものが多いです. フロア床を打ち放しの横帯で、それ以外を馬目地のコンクリートブロックで仕上げるやり方は「B-LOCK北山」でも見られましたが、時期としてはこちらが先です.
こちらには数回足を運んでいますが、何度見ても驚いてしまうのが、三条小橋の真下を通る『高瀬川』の脇に設けられたテラス(写真4・5枚目)です. 川の水位とテラスレベルが非常に近く、建築のけの字も知らなかった若い頃の私でも『川のテラス』として覚えてしまうほどに、見た目のインパクトは絶大です. 高瀬川は開削による水深数十cmの浅い人口運河ですが、大雨の際の増水や浸水のリスクを考えるとなかなか実現に踏み切れそうにないアグレッシヴな空間です.






それでは建物に入っていきます. 何度も来てますが、ちゃんと中に入るのはこれが初. 三条通すぐの壁には案内図とテナント表(写真2枚目)が設置されていますが、テナント10箇所に対して5箇所しか入居していないのは商業として相当厳しそう. さすがに三条通側には店舗は入っていますがね. 三条通からだと低く感じる3階フロア(写真3〜5枚目)は、高瀬川による高低差や植栽・対岸のビルの距離の開きもあって、結構ゆとりのある眺めが形成されているのがナイスです.





さてこちらは三条通と同じレベルとなる2階フロア. 最初は開けた通路ですが途中から路地並みにグッと狭くなり(写真2枚目)、建物中央部には2階をガラス壁で囲まれた中庭(写真3・4枚目)が出現します. 京町屋の『オク』を連想させますが商業的にはマッチせず、周囲のテナントは全て空という寂しいものに. 設計当初は川を自邸の庭まで引いて再度流すという古い京都の邸宅から発想を得て、建物中央に高瀬川の水を引き込もうとしていたようですが、行政に猛反対されたそうな.






写真1枚目は高瀬川のそばを通る通路から撮影したものですが、やはり自然の川との距離が非常に近いのが個人的に好きです. 琵琶湖疏水や水力発電による近代化など、水との関連が深い京都のまちに水を感じれる場というコンセプトから実現したこの親水建築ですが、東大講義本では高瀬川が一級河川である淀川水系に属することで河川法がかかり、行政側と幾度もの衝突を経て完成に至ったと述べられていました. 建築の実現は苦難の連続です.
そして更に奥へと進むと、細い通路の向こうに出口(写真2枚目)を発見. こちらは坂本龍馬の隠れ家が通り沿いにあることから名付けられた『龍馬通』への出入口(写真3〜5枚目)で、写真からもわかる通り入口が非常に細い. 三条通側は写真でもよく見ますが、反対側はあまり見ないので驚きです. 細いし奥が暗いので、ビルの看板があってもかなり不気味. じつはSD編集部の書籍(1993年 第2刷)に掲載された図面にはこの路地は存在しません. なのでこの入口路地だけは第2期後に増結されたものという予測もしていますが、現状では真相は謎のままです.
というわけで、京都の建築特集ラストとなる安藤建築の紹介はここまでとなります. 路地空間の面白さは非常に良かったものの、商業としての厳しい現実を見てしまった感じはあります. 正直このスペースとある程度のプライベート性もあるのであれば小規模オフィスが適しているような感じもしますが、採算合わないんですかね. 三条に来たら毎回見るので、なくなってほしくはないですね. 京都三条の安藤建築にぜひ、では今回はここまで〜
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