2017/02/11





前述した通り、新港地区へは三宮駅から神戸港へのびるフラワーロードを南へ進んでいきます. 途中の税関前交差点(写真1枚目)には横断歩道がないため、歩道橋でしか行き来できません. この交差点から本関までの約187mは『日本一短い国道』と呼ばれる国道174号線(写真2枚目は看板)となっており、道路マニアには熱いスポットになってるようです. 200mもない道路が国道とはこれいかにという感じですが、それほどに神戸港に至る道は重要という意味でもあります.
阪神高速の高架道路を抜ければ、いよいよ目的地となる税関本関です. 交差点の角地いっぱいに展開する威風堂々とした佇まい. 時計の付いたシリンダー状の塔屋は、この新港地区のランドマークとしての地位を確固たるものにしています. コーナー部が中心の近代建築というとあまり珍しくないですが、ここまで建物が高く大規模に展開するものというと「銀座和光」や「新宿伊勢丹」等に数が限られてきます. デカさに負けない威厳のあるデザインも素敵です.






こちらでは北東角から東側外壁を撮影したものを掲載. 大型のキャノピーで見えづらいですが、コーナー部の玄関(写真1枚目)は石の三連アーチという剛健なものに. 上を見上げれば右書きの『神戸税關』に、ドリス式に近い4本のジャイアントオーダーが玄関上部に展開しています(写真3枚目). コーナー部以外のファサード(写真4枚目以降)は褐色レトロタイルの上下を白で挟み込んだシックで親しみのある色合いにしているのが、個人的にグッときます. 全体的には装飾控えめのセセッション様式ですが、コーニスやオーダーに古典的な装飾が所々で見受けられます.
兵庫県と中国・四国地方を管轄する税関施設の本関(本部)となる神戸税関本関. その施設の大元となる2代目庁舎は、1927年に大蔵省営繕課設計のもとで竣工し、『帝国の大玄関番たる税関として決して恥ずかしからぬ近代式大庁舎』(wiki談)と称されています. 当時の大蔵省には大熊喜邦氏がいますが、誰が中心的に手掛けていたのかは不明. 他の税関施設で有名なレトロ建築に「横浜税関本関(設計:吉武東里 / 大蔵省)」や「旧門司税関本関(設計:大蔵省)」があります.







写真1・2枚目は建物南東部を撮影した写真です. 税関という立場上か、突堤のある港側とのアクセスがしやすいように玄関がこちらにも設けられています. アーチの入口は1箇所、オーダー柱も両脇のみと造りはコンパクトですが、これでも十分に大きいです. そういえば、両コーナー部の上部にはめ込まれていた装飾をしっかりと撮影していませんでした. 遠目からだと蛸のようにもみえたあの装飾はなんだったのか、今のところ謎のままです.
写真3枚目からは建物南側の様子. 奥に中庭の見える入口は3連アーチ(写真4枚目)で、上側は北東部玄関のデザインをそのまま一直線に伸ばしたようなデザイン(写真5枚目)なっています. 更にこの入口ゾーンから西側の壁面タイル(写真6枚目)はツルツルで新しい. 上部に乗っかっている船のようなデザインの塔屋(写真7枚目)も現代的です. 撮影前の事前調査をロクにしないのですが、この建物の西側が近年の新築だということは一発でわかりました. これはどうなっているのでしょう.
1927年に竣工した2代目庁舎ですが、実際は写真4枚目の中庭入口よりも東側まででした. 1995年の阪神・淡路大震災によって被害を被ったものの、東側に展開する旧本館部分は損傷が少なかったようです. しかし戦後に増築した西側別館は半壊してしまい、震災後はこの別館を解体. 跡地に3代目新庁舎の要となる西側高層棟を1999年に完成させました. 高層棟の低層は2代目と同じデザインに調和させているため、遠目で見ると一つの建物のように見えます. 説明がややこしく感じた方は東は旧館(2代目)、西は新館(3代目)と覚えておけばなんとかなるでしょう.






先程の説明に加えて、写真1枚目に地上階の平面案内図をもってきました. 左側の逆コの字型が旧館(2代目)、右側が新館(3代目)で旧館中央部は中庭として整備されています. 北側外観(写真2・3枚目)に映るのは新館部分のファサードですが、違いといえば若干色が明るい(写真4枚目 両脇を比較)程度の精度の高い調和です. 当日は休館日だったため、中庭の様子は鉄柵越しの撮影(写真5・6枚目)なのが残念. 照明直上に拵(こしら)えられた装飾が実に良かったです.
震災によって元の状態に戻ることはできなかったものの、旧館の雰囲気を尊重して保存し、一方で新しい部分も可能なかぎり調和させる精神は、庁舎に対する深い愛着やリスペクトがなければ到底出来たものではありません. 神戸港の栄華を象徴する税関本関は、これからも新しい装いで神戸の貿易を担い続けます. 新港に来た際は必ず見ておきたいレトロスポットにあなたも是非. では今回はここまで〜
◆ このスポットに関連する建築マップ
・ 神戸建築マップ(神戸港編) - 神戸港周辺をメインとした建築マップ
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