





では最初は神戸税関も面している大通りから撮影したものです. 施設の中心的な玄関としても機能するこちらの建物は『神戸市立生糸検査所』として1927年に竣工した旧館部分です. 西洋の塔を想起させる巨大柱
(写真2・3枚目)が中央両サイドに展開し、ファサードには縦長窓や先端の尖ったマリオン
(写真4枚目)が用いられるなど、垂直性が強調されたチューダー・ゴシック様式でまとめられた格式のあるオフィスに仕上がっています. 中央玄関
(写真5枚目)も洞窟のような感じで、真上の彫刻
(写真6枚目)は生糸を吐き出す蚕の頭部をモチーフにしたそうです.
この見事なオヒィスビルを手掛けたのは神戸市営繕課で、一部のサイトでは「神戸市御影公会堂」といった名モダニズム建築を手掛けた清水栄二氏の名前が記載されています. 清水氏は1923年から1926年まで営繕課初代課長として勤めていますが、設計にどれほど関与していたのか明確にはわかりません.







施設の西側に展開する旧館ですが、南側に回り込んでいくと新館部分のファサードが見えてきます
(写真1枚目). 1931年に検査所が国に移管され、施設拡張を目的として建設された『国立神戸生糸検査所』は、「宮崎県庁舎」や「旧茨城県庁舎」の設計者としても知られる神戸の建築家・置塩章氏設計のもとで1932年に竣工しました. 当時は既に設計事務所を立ち上げていますが、それ以前には兵庫県営繕課長を務めていた時期があるので、それらの縁もあったと思われます.
ファサードは旧館と同じゴシック調ですが、垂直性が強調されたシャープさは影を潜め、ドッシリとした権威的な佇まいです. 旧館の明るいタイルに対して、暗褐色のスクラッチタイルというのもいい対比. 写真5枚目の全景を見てもわかる通り、お隣の神戸税関と張り合えるほどの大規模な建物であることがわかります. 角の塔屋に設けられた丸窓が非常に可愛らしいですが、その上部中央に彫られた鷲らしき装飾
(写真7枚目)も見逃せないポイントです.







それでは旧館の中央口から館内へ入っていきます. 旧館エントランス
(写真1〜3枚目)は竣工当時からのデザインが丸ごと保存されている数少ないスポット. 入口脇の台座
(写真2枚目)には元々美術品でも置かれていたのでしょうかね. 案内図
(写真4枚目)を見ると1階にはホールやカフェ・ギャラリーが設けられ、上の階はテナントオフィスとして整備されているようです. 個人的には新館部分のエレベータの表示器
(写真6・7枚目)のレトロ感がたまらなく好きです.
終戦後は農林水産省の直轄施設として運営されていましたが、2008年に神戸市がユネスコのデザイン都市に認定されたことを受け、その拠点施設として検査所を取得. 佐藤総合計画設計のもとで減築や耐震化を含めたリノベーションが実施されました. 旧検査所・オフィスとしての高い階高を活かした大空間のギャラリーは素晴らしく、休憩室やカフェの雰囲気も非常にレトロ. ホールには既存のフローリングが残るということでしたが、当日は閉鎖されて見れませんでした.







さらに上のフロアへ. 上の階にいっても旧館の階段
(写真1枚目)は見事で何度も撮ってしまいます. 2階には「生糸検査所ギャラリー」
(写真2枚目)という検査所時代の歴史を伝えるスペースが. テナント部も扉や仕切り窓は木でシックに仕上げている
(写真3枚目)のがいい感じです. 誰かは言えませんが、テナントの中に私もよく知る建築家のオフィスがあったことにはビックリしました. 神戸湾岸の近代建築の中でお仕事とはある意味羨ましいです.
3階の長い廊下を歩いて新館の東側まで進むと、コーナー部分に配置された階段
(写真5枚目)を見ることができます. 位置的には塔屋があった部分で、旧館とは違いアール・デコのような直線的な装飾
(写真6枚目)が目立ちます. 4階まで行くと、外から見ると可愛らしかった丸窓の影が壁面に映るタイミングばっちりの光景
(写真7枚目)にも出会えました. 旧館と新館それぞれにテイストの違うレトロな装飾が見られるのも、建築スポットとして外せない要素です.
というわけで今回はこの辺で. 神戸税関とともに神戸港の貿易を支えた生糸検査所は、神戸市の中心的なデザイン拠点として人々に愛されていくことでしょう. 見学は自由ですのでフラっと気軽に訪問できます. それでは今回はここまで〜
◆ このスポットに関連する建築マップ
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神戸建築マップ(神戸港編) - 神戸港周辺をメインとした建築マップ
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