2017/02/15






まず初めは会館の正面となる東側の様子からみていきます. 高層ビルが乱立する中に、時代に取り残されたかのようにポツンと建っているのが印象的. 2階から上のフロアにはベランダが設け、そのラインまで外枠の壁を張り出させることで乳白色タイルのハコが浮く(写真2枚目)ような仕掛けはまさにモダニズム. 1階の壁を黒、それより上を明るいグリーン(写真4枚目)にすることで、上のフロアを軽い印象として演出. 玄関部分の曲線段差(写真6枚目)も何気に凝ってます.
神戸で真珠というとあまり馴染みがない方も多いと思いますが、元々神戸港は日本の真珠取引の8割(戦前期)を担うほどの真珠産業のまちとして栄えました. これは当時真珠が欧米向けの輸出品として売られ、養殖真珠の産地である三重・四国から最も近い国際港が神戸だったためです. 1950年代には世界の9割のシェアを誇る真珠大国になった勢いもあり、真珠取引の中心となる拠点として1952年に完成したのがこの会館です. 現在1階には『神戸パールミュージアム』という真珠博物館が設けられています.





こちらでは主に南側の外観をみています. 交差点からの写真(写真1枚目)みると、2階より上部分のハコが外に張り出している様子がよくわかります. 建物の端から端まで続く水平連続窓(写真2枚目)は、かつて4階に存在した品質検査室に十分な自然光を取り入れるために設けられたもの. 砂時計を模したような独特の窓格子(写真3・4枚目)や、真珠の施設らしい丸型の明り取り(写真5枚目)など、汚れが目立つものの当時からの意匠がそのまま残っているのが実にイイです.
設計を手掛けたのは兵庫県営繕課ですが、その中心的人物として挙げられるのが光安義光(みつやす よしみつ)氏です. 東京工業大学で谷口吉郎氏に師事し、その後は兵庫県営繕課長として『県の建物は県で設計する』というポリシーを胸に戦後の兵庫県公共建築の中心人物として活躍します. 真珠会館は県庁に入って2年後という比較的初期の作品. 50年代の代表的モダニズム建築として評価され2003年にはDOCOMOMO100選、2005年には国指定の有形文化財に登録され、神戸を代表する近代化遺産として残り続けています.





それでは館内へ入っていきます. 2008年に開館した1階のパールミュージアムでは、当館の歴史や真珠の種類・生産過程が無料で展示・公開されています. フロア中央にある『パールツリー』(写真2枚目 中央)と呼ばれる展示には、約1万粒の真珠が使われた大変豪華なものに. 曲げ加工された風除室(写真1枚目 奥)も造形的で素晴らしい. 当時は神戸で2番目となる全自動エレベーターを導入例となるなど先端技術の導入にも積極的で、館内にはそのデザインも数多く残っているようです.





フロア奥には階段・トイレがあります. 木手摺のシンプルな階段(写真1・2枚目)の先も気になりますが、上の階へはビル関係者以外立ち入り禁止でした. 横手のトイレスペースの仕切りガラス(写真3・4枚目)は細かい粒にビッシリと覆われた、まさに真珠のような煌びやかなデザイン. 見るだけでも飽きないガラスですが、扉を一気に開け閉めすると割れてしまうくらいデリケート(写真5枚目)な代物なので、トイレを利用する際は注意してください.
阪神・淡路大震災では軽い損傷だけで済み、当時のモダニズムの雰囲気が綺麗に残る施設としても貴重なこの会館. 訪問時期は去年の夏だったのですが、去年12月に実査された建物公開の新聞記事(記事URL)では建て替え予定とハッキリ書かれており、数年以内に消える可能性が濃厚となっています. うまい活用性が見つからなかったのでしょうか、個人的には非常に残念です. 興味のある方は、取り壊される前にぜひ真珠会館へお越しください. では今回はここまで〜
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