2017/02/16





では博物館正面となる東側をみていきましょう. 都合上トップ写真は冬のものですが、本文では主に夏に撮影したものを使用して紹介します. 旧居留地の中央を南北にはしる京町筋の沿道に建つ博物館は、中央に6本のドリス式ジャイアントオーダーが並ぶ新古典様式の佇まいは、当時の銀行建築のスダンダード. 装飾性の薄いドリス式や、メダリオン等の豪華な装飾が排されているのは、次第に移りつつあった合理主義への微かな影響が感じられます.
貿易金融・外国為替を専門とした特殊銀行『横浜正金銀行』の神戸支店として1935年に完成した当館は、戦後GHQの再編により東京銀行支店として使用された後、所有が神戸市へ. 当初は『神戸市立考古館』として利用されていましたが、1982年に『神戸市立南蛮美術館』との統合を経て現在の博物館になりました. 戦前から戦災・震災を経て残る神戸の銀行建築の一つとして、1998年に国指定登録有形文化財に登録されています.





正面玄関手前まで寄っていきます. 格式の高さを伺わせる旧銀行の見た目だけあって、これが博物館なのかと一瞬戸惑ってしまいます. 入口でぜひ見て欲しいのが、真上に展開するキャノピー(写真3・4枚目). 見た目からして重そうな印象のある厚い青銅の庇が、道路に向かって水平に大きく軽やかに張り出す姿は圧巻ものです. 入口のすぐ隣には(写真2枚目 奥)は、ロダンの『ジャン・ド・フィエンヌ(カレーの市民より)』が展示されています.
設計を手掛けた桜井小太郎(さくらい こたろう)氏は、日本人として初の英国公認建築士としても有名な東京帝大出身の建築家. ロンドン帰国後は海軍技師、三菱地所を経て1923年に独立します. 他作品に「入船山記念館(呉鎮守府長官官舎)」や「北九州銀行門司支店(旧横浜正金銀行門司支店)」などが現存しています. この博物館は桜井氏が建築家引退前に手掛けた最後の作品であり、戦時に突入する時期に完成した『神戸で最後の様式主義建築』といわれています.





こちらでは南側(写真1枚目)と西側(写真2枚目以降)の外観を掲載. 南側外観も奥行き控えめのドリス式オーダーが連続しています. 平面図や外観をみると、旧正金銀行は元々京町筋(東側)と前町通(南側)に接するL字型のボリュームだったとみられ、増築された西館部分は馬目地の石張り(写真2枚目)と外観が明確に分かれています. シンプルなアーチ出口やステンドグラスの丸窓、『南蛮屏風』を原図とした船の青銅レリーフ(写真5枚目 冬に撮影)など見所があります.
内観写真は残念ながらありません. 入口を入るとすぐチケットを購入&確認(もぎり)があり、ホールに特別展の展示品が置かれていたため撮影禁止でしたが、特別展ごとにホールでの撮影の扱いは異なるようです. 内部は博物館への改修工事によって大きく変更されてはいるものの、2階吹き抜けの銀行業務室はエントランスホールとして活用. 格子状の天井は一見シンプルなものの、よく近づいてみると非常に細かな装飾が施されているのが見事でした.
当時の銀行建築を自治体の博物館として活用した好例である博物館は、2018年2月から1年半にわたるリニューアル工事が予定されています. 基本計画(URL)をみると今まで配置がバラバラだった常設展示室が集約化されてわかりやすくなる予定. 1階も将来的に無料スペースになるので、数年すれば内観写真も撮れる可能性がありそうです. 現在の美術館は2018年2月までですので、神戸に来た際はぜひご来訪下さい. それでは今回はここまで〜
◆ このスポットに関連する建築マップ
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