

犬島の港の近くにあるチケット売り場で券を購入し、海岸線を左に望みながら南へと進むと、煉瓦造の塔がニョキニョキと建つのが見えてきます. よく見ると一部の塔は半壊しています. この塔こそ、かつて精錬所として使用された煙突で、美術館のランドマークともなっています. そして赤錆色の赴きある看板が掛けられた入口へと辿り着きます.
この美術館の設計を任されたのは
「六甲枝垂れ」でも紹介した三分一博志氏です. 三分一氏といえば、前回熱く語らせていただいた『エナジースケープ』の設計思想を扱う建築家です. この美術館でもそれに近い考えで設計に応用しています. 後々ご説明いたしましょう.



迷路をのように積み上げられた黒光りする煉瓦、これは精錬所で銅を精錬する際に残る『カラミ』と呼ばれる物質を煉瓦にしたものです. 本来は産業廃棄物扱いされるカラミですが、当時の人々の知恵でスペースを造るための煉瓦材として有効活用されていました. 昔の遺構の雰囲気に入り浸りながら進むと、石垣の傾斜面にカラミ煉瓦で仕切られた2つの入口があります. 看板をみると『館内入口』と…これは看板見ないと気づきにくいですね.
内観なのですが、館内スペースの殆どが展示スペース、エントランスもあの入口程度の狭さなので掲載可能な写真といえば展示作品以外の模型程度と数枚しかありませんので、ここからは口頭紹介です、展示作品を画像で見たい方は他サイトをご参照ください.
ごめんなさい!!入口に入るとすぐに長い廊下がお出迎え. 廊下といってもただの廊下ではなく…これを言うと面白くないのでご自身で確かめてみることをお奨めします. その廊下を過ぎると芸術家 柳幸典氏制作の『ヒーロー乾電池』と呼ばれる作品エリアに到着します. 訪れたのは10月頃だったのですが、この空間は洞窟のような冷たいイメージにしては、不思議と温かい空間になっていました. その後三島由紀夫氏に関連する展示室を2室ほど通り抜けて出口に辿り着きます.
未だに三島由紀夫と犬島の関連ってどこにあるのかと思ったりもします
ここで三分一氏の『エナジースケープ』の鍵を握るのが、『ヒーロー乾電池』の空間の奥にある旧精錬所の煙突とガラス空間
(メイン写真左側)です. 簡単に述べると、煙突は高低差と太陽熱を利用した空気循環の役割を担い、木枠のガラス空間に敷き詰められた熱容量の大きいスラグや石材が蓄熱することで夏は涼しく、冬は温かくという自然のヒーティング・クーリングシステムが構築されているということです. 鉄やガラスなどの近代素材だけでなく、犬島にあるカラミ煉瓦や石材も複合的に応用する三分一氏の試みが所々に盛り込まれています.


今回私が注目すべきは 『トイレ』です. 男子トイレでしか話せませんが、まず大便器のブースは完全に仕切られておらず、奥にわずかな隙間があります. 普通にすれば見られることはないですが、見ようと思えば見られるという微妙な隙間です. プライバシー気にしない人は関係ないことですが…色々と覚悟が必要ですね.
もう一つは便器手前に描かれた図です. これは三分一氏がこの美術館で考えた、エナジースケープなどを総合的に表したスケッチです. 三分一本人のスケッチがトイレで見れるなんて考えもしなかったので驚きでした. 気になる人はトイレに一度入ってみてください.


模型などが展示される木組みの小屋を抜ければ美術館出口となります. 精錬所の見学はこれで終わりではなく、更に南へ行くと精錬所の遺構が色濃く残るスポットがあるのですが、フェリーの時間があったため断念. 廃墟マニアの間では超コアスポットとして有名らしいとか. 産業遺産・エナジースケープ・現代アートの融合したこの美術館に一度足を運んでみてはいかがでしょうか. それでは今回はここまで〜
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