




最初は入口となる南側の外観をみていきます. 建物は3階建てで、今日まで見てきた銀行建築の中では比較的コンパクトなもの. しかしながら中央に4本のイオニア式オーダー
(写真2枚目)、入口上部には立派な三角ペディメント
(写真4枚目)を携えたアメリカン・ルネサンス様式の佇まいは、銀行建築としての堂々たる風格をみせています. RC造ですが表面は間隙の大きい馬目地
(写真5枚目)をいれて、煉瓦造りのような重厚感を演出しているのも実にいいです.
角地に建つ当館は米国の金融会社『シティバンク・オブ・ニューヨーク』の神戸支店として1929年に建造されたヴォーリズ建築. 現在は『大丸神戸店南1号館』という商業施設として活用されています. 驚くことに心斎橋店と京都店の本館・神戸店の南館と、ヴォーリズは大丸の京阪神主要店舗に何らかの形で関わっています. ヴォーリズ設計の銀行は滋賀県に多く現存していますが、ここまで新古典様式で固く権威的に仕上げた作品はなかなかありません.





こちらはもう一方の道路に接する東側の外観です. 去年の冬場に撮影したため、ドリス式の列柱や窓の並び
(写真2枚目)がよく見えます. 個人的に興味を引いたのが1階フロアに並ぶ大窓
(写真3枚目)です. 高さ3mはあるインターナショナル・モダンな大窓は、開放的でとても気に入っています. 一粒社が公開している銀行時代の写真
(URL)をみると窓は現在よりも奥にあったようなので、改修後に移動させたと思われます. 北東側入口
(写真4・5枚目)の装飾も見事です.
建築だけでなく38番館は、旧居留地のまちづくりに大きく貢献した建物としても知られます. 80年代までは『老朽化した古ビルのオフィス街』という暗い印象だった旧居留地ですが、大丸が所有していたこの建物を『Live Lab West』として店舗改修し、周囲の近代建築オーナーのまちづくり意識を変えたそうです. 近代建築の活用を積極的に推し進めた大丸は、まさに旧居留地の革命児的存在でした. 阪神・淡路大震災では、それより前に改修されたため被害が軽微で済みました.





ヴォーリズ建築をコンバージョンしながら活用する大丸ですが、街並みとして取り組みはこれだけではありません. それがわかるのが、38番館のすぐ西隣に並んで建つ2棟のクラシックな建築. こちらは『独逸染料合名会社』というドイツ染料メーカーのビル外観を保存した「大丸神戸店南2・3号館」と呼ばれる建物です. 裏から見る
(写真5枚目)と柱1スパン分の保存だとわかりますが、38号館含め3棟の洋風建築を連続させた街並み形成も行っています. ちなみにTOTO出版の建築マップには『1992年竣工・北山考二郎氏設計』と記載されていました.






それでは西側の通路から施設の内部に入ります. できれば1階フロアも見たかったですが、現在入居する『エルメス(HEAMES)』への敷居が高すぎて断念しました. 馬目地外壁
(写真1枚目)や装飾のある段差
(写真3枚目)など凝ったデザインのある西側を進んでいくと、大丸南館と38番館の境目となる中庭
(写真4・5枚目)がみえてきます. 38番館も丸ごと建物が保存されているわけではなく、こちら側は現代の商業空間テイストに大きく改修されているようです.
そんな中でぐるぐる探して見つけたのが、現在の階段とは逆方向に設けられた手摺跡
(写真6枚目)のようなもの. これはシティバンク時代の階段としての遺構を残すものでしょうか. すごく気になったていたためか、帰宅後に写真を見返したら何枚も撮ってました. ファッション店が多く入居していますが、気軽に一服できるお店としてオススメするのが4階の屋上カフェ. ヴォーリズ建築の屋上で優雅にカフェが楽しめます. 神戸のヴォーリズにぜひ一度. では今回はここまで〜
◆ このスポットに関連する建築マップ
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神戸建築マップ(神戸港編) - 神戸港周辺をメインとした建築マップ
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